第7変 現 実

 「フッフー!驚いた?アスカだよ!」


 アスカがベットの下から現れた!


 「…また、ドキドキしました…」


 アスカは、ベットから少し離れたところで少しついた土や埃を払い始めた。

 マキナの心の中に魂のみで存在しているカズミがマキナに言う。


 「(マキナ、落ち着いて…次からは、僕の言葉をしっかり聞いてくれ)」

 「(カズミ気づいてたんだ…ごめんなさい…)」


 アスカは、まだ埃を払っている。

 カズミは、心の中でマキナに言う。


 「(まあ、マキナがアスカのことを好きになってくれることは嬉しい…せっかく、アスカが来てくれたんだから 今を楽しんで…)」


 「(………ありがとう……でも…)」


 「全然、埃取れなかった!さむさむ〜」


 アスカは、そう言うと布団の中に滑り込んでくる。

 なぜか、アスカが来ていた寝間着が作業台の上に置いてある…


 「ひぃゆん!…」


 マキナは、変な声を上げ体を硬直させた。アスカが下着のまま抱きついてきたのだ。


 「また、今日もお話ししましょ!マキナちゃん!」


 「…………はい……」


 マキナは、アスカに包まれて幸せを感じると同時に、カズミのことを考えた。いや、カズミと会ってから いつもカズミのことだけを考えていた。


 「(カズミ…私…幸せ…)」

 「(どうした…マキナ…)」

 

 「(私、カズミのおかげで色々知れた…世界の幸せな部分…)」

 「(……そうか……)」


 「(カズミは…私が知ってるカズミ…私の憧れのカズミは…絶対逃げないの…負けないし、挫けないし、しかも絶対タイミング良く現れてくれるの…)」


 カズミがマキナの体でつぶやいた。マキナの目には涙が浮かんでいた。


 「……そうか……」


 「(だから…心で泣かないで…怖くても言わなきゃダメ…私には…アスカさんの前では…正直に生きてほしい…)」

 

 「そうだな…ありがとう…(誠を尽くすしょうじきにいきる…か…)」


 アスカは、小さく呟くマキナを黙ったまま眺めてくれていた。そして、マキナの雰囲気が変わったことにも気づいていた。


 「ここまでに…何があったのか、アスカお姉さんに教えてくれる?」


 「うん…今、僕はカズミです…」


 と聞いて、アスカは目に涙を溜め 今にも泣きそうなっていた。そのアスカの気弱な、泣きそうな顔を見ながらカズミは続ける。


 「僕は、この村で育った……カズミです…今は、魂だけになってマキナの身体に一緒にさせてもらっているんです…」


 「…………」


 アスカの体に少しだけ力が入ったが、そのあとマキナの目を見たまま黙っていた。そして、カズミは続けた。


 「僕…この村で育ったカズミは…一度…死にました…」


 「…………そう…」


 アスカは呟くと、マキナの小さな胸に顔をうずめ、体を小刻みに震わせた…

 小さな泣き声が納屋に響く…


 「アスカ…」


 「今はカズミ…なんだね………ぐす…」


 「そうなんだ…マキナのおかげでアスカに会えた…」


 「マキナちゃんは、聞いてるの?」


 「…聞こえてるよ」


 「マキナちゃん…ありがとう……ずっと…ずっとカズミに会いたかった…」


 「(うん……カズミ!アスカを抱きしめてあげて!早く!)」


 カズミは、慌ててアスカをマキナの体で抱きしめた。カズミは、この二人には身につけた処世術や技術を使えない。いや、使いたくなかった。だから、全て自分に正直に行動し正直に話した。


 「僕は、マキナの体を借りてアスカに…アスカたちが平和に生きているか確認しにこの村に来たんだ…」


 「……また、いなくなっちゃうの?」


 抱きしめられたまま、マキナの胸に顔を埋めてアスカが聞いた。


 「わからない…だけど、アスカだけには会いに来たかった…」


 「うん……私…ぐす………」 


 「大丈夫…大丈夫だから…」


 カズミは、アスカを抱きしめる力を少し強める。そしてしばらくの間、納屋の中にはアスカのすすり泣く声だけが聞こえていた。


 「…アスカ…落ち着いた?」


 「…うん…」


 アスカは、顔を埋めたまま頷いた。


 「アスカのこと…アスカの母さんのこと…カシムのこと…そして…この僕がいなかった10年間のことを教えてくれないか?」


 アスカは、抱きしめていたカズミから離れ、カズミの横に顔の高さを合わせて布団から顔を出した。そして、アスカはカズミと指を絡め、手を握り過去のことについて話し始めた。


 アスカは、初めは楽しかったこと、村の中で誰の家に子供が生まれたとか、新しく橋ができたことなどを自分の感じたことを混ぜて語ってくれたが……

 途中から涙を流し、淡々とアスカの母さんのこと、カシムのことを話してくれた。

 アスカの母さんは魔族に連れていかれ、幸運なことに村はアスカの母さんを連れて行かれる以外には被害はなかったと語ってくれた…

 カシムは、カズミの本当のことを知って軍に入ったらしく、3年間は連絡が来ていたがその後は連絡が来なくなったと語ってくれた…


 アスカの話を聞き終わると、カズミはアスカの手を強く握った。


 「アスカ…頑張ったんだね…」


 「…………ううぅ…」


 アスカはカズミの胸にまた、顔をうずめ 声を上げて泣いた。


 カズミもマキナも何も言わなかった。ただ、アスカの頭を撫でていた。


※※※※次回予告※※※※

自分に起こることは苦しいことではない。

自分だけで行うことは忙しいことではない。

他人のことを自分のことと考えた時に

人は苦しいと感じ、心が亡くなりそうになる。


カズミは、《《ひと》》と、他人のために努力する…


 次回第8変 至誠しせい

 catch you later!また見てね!

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