7歳の瞳

サトウ アリサ

7歳の瞳

これは私が見た夢の話である。

私は6歳だ。両親と兄と姉の5人家族で幸せに暮らしている。毎日家の大きな庭で走りまわって遊び、家政婦が作った絶品のおやつを食べて、夜には兄と姉とはしゃぎ1日が終わる。

ある日、大好きな幼なじみのホームパーティーに行った。たくさんの人が来ていて幼い私はなにが何だかわからなかった。幼なじみとたくさん遊び、知り合いのお兄ちゃんともたくさん遊び私は大満足だった。

突然、部屋の電気が消えた。私はとても怯えたのを覚えている。数秒後、聞こえてきたのはバースデーソングだった。そうだ、今日は私の7歳の誕生日なのだ。大きなクマのケーキが私の前に置かれ、精一杯の力を込めてロウソクを消した。みんながたくさんのプレゼントをくれた。この時はなにも考えていなかった。もう少しでこの幸せな日々が壊れるなんて想像できるはずがない。

誕生日の数ヶ月後、父の経営する会社が倒産した。大きな家も立派な車も全て手放すことになった。父は会社の対応に追われ会うことすら出来なくなった。兄と姉は社会人として働いておりそれぞれ生活していくことになった。残った母と私は2人で何とか生きていくことになった。まずは幼なじみの家に居候させてもらうこととなった。何不自由なく今まで通りの日々を過ごしていた。

そんな日々を過ごす中で私は未来が見えなかった。幼なじみにばかり頼っていてはいけないと思い、母と自立していくことを相談した。しかし、返ってきた答えは私が望んでいたものとは正反対だった。

母はこの幸せな暮らしを手放したくない。この暮らしを辞めたいのなら1人で行けと言った。母はすでに酒に溺れていた。

私は7歳で母に捨てられた。母は私の言葉に聞く耳など持たなかった。いくら自立するといっても7歳という子どもは無力だった。

父と最後にあった日に何かあったら使いなさいと渡されていたスマートフォンで叔父に連絡をした。叔父は1人で自由に暮らしていたのですぐに迎えに来てくれた。

この日から叔父と2人の生活が始まった。

叔父は発明好きで物知りでとてもユニークな人だ。

家の中でも私が楽しめるように部屋のあちこちに仕掛けを施してくれた。毎日たくさんの話をして、たくさんのことを学び充実した日々を過ごしていた。

そんな風に叔父と暮らし始めて2年が経ったある日、スマートフォンが震えた。父からの電話だった。

会社の対応に少しずつ余裕がうまれ私と生活ができるようになるとのことだった。

どのようにするかとても悩んだ。叔父との生活は昔の生活の豊かさはないものの得たものが多くとても幸せなものだった。また母に捨てられた私の心を一生懸命癒してくれた恩人だった。

最後に1週間思う存分楽しんで肉親と生活することを選んだ。

このことを報告すると叔父は寂しそうなけれどとても幸せそうな表情をした。

いつかこんな日が来てしまうのではないかと思っていたけれど、やっぱり来てしまった。けれどキミと過ごした日々は毎日が思い出で毎日が楽しかった。

また、いつでも遊びに来なさい。

さて、最後の1週間は何をしようか。ちなみにもうプランはあるぞ。

私はなに!なにをするの?と叔父に言った。

やっぱり人生は楽しむことが1番なんだ。だから、最後に大きな思い出として1週間2人旅をしよう。

さすがだね!と私は言った。いつだって叔父は私を楽しませてくれる。

叔父のジープにたくさんの荷物を積んで出発した。

プライベートビーチのついたホテルに泊まることになった。ベッドはフカフカ、窓の外は絶景、すべての料理が美味しいレストラン。そして最高の叔父。

一週間毎日違うことをして楽しんだ。ある日はビーチに行ってたくさん泳いだ。そしてまたある日は、ホテルから叔父の運転するジープに乗ってショッピング街に行った。お互いの服を選びあったり再会する父へのプレゼントを買った。ある日は1日グルメなときもあった。大きな骨付き肉にかじりついたり、レインボーのソフトクリームを食べたり。その日はお腹いっぱいで大満足ですぐに眠ってしまった。楽しい時間はあっという間に過ぎ、最終日だった。私たちはまたビーチにいた。ビーチといっても初日とは違うビーチだ。道中なにしにいくの?と聞いても叔父はとてもハッピーなことだと言ってまともに答えてくれなかった。

そのビーチはホテルのビーチとはまた違った美しさがあった。2人でクルーザーに乗り込んでのんびりと海の上を楽しんだ。海水は透き通ってたくさんの魚が見えた。

お、そろそろハッピーなことが起こるぞっと叔父は言った。すると、たくさんのイルカが目の前を飛んでいるのだ。太陽に照らされた水はキラキラと光りイルカを輝かせていた。

こうして私たちの最後の1週間は終わりを迎えた。

最後に叔父は空港まで送ってくれた。

空港に着くと2年ぶりに見る父の姿があった。

痩せ細り別人のようだった。

父は叔父にたくさんのお礼を言った。

こうして私と父は飛び立った。

昔住んでいた地に戻ってきた。住む家は変わってもやはり落ち着いた。

父は長い間迷惑をかけてごめんな寂しい思いもさせて涙を流しながら謝った。

私は謝罪などいらなかった。環境が変わった2年間でたくさんのことを学び、たくさん成長することができたからだ。倒産してしまったことは良くないが、プラスに考えれば色々なものを失ったからこそ得られたものがとても多かった。

母さんも呼んで3人で暮らそうかと父は言った。

私は父に心配をかけたくなくて母は体調を崩したから幼なじみの家に残り、私は叔父に引き取られたと伝えていたのだ。父も事実を確認できるほどの余裕はなく今日まで過ごしてきた。ついに私は真実を伝えた。父はもちろん憤慨した。いつの間にか兄や姉にまで話は伝わり、母を非難した。

この日から父と2人の生活がスタートした。

私はもう少しで10歳の誕生日を迎える。

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