アイテムに経験値入ってる！？ ～レベル上がらないけど最強装備～

第1話 あれ？レベル上がってない……

　最近、気づいたことがある。　

ラファ「俺のレベル、低すぎ……？」

リリ「え、どうしたの？」

ラファ「お前、レベルいくつだっけ？」

リリ「私？　いくつだっけな」

　リリはメニューボードを取り出し、自分のステータスを確認する。

リリ「えーっとね、13！」

　はい、おかしい。

　リリとは俺がこっちの世界に来てからの付き合いだが、戦闘経験――経験値はほぼ一緒のはずだ。

　なのに俺は――

ラファ「俺、1のまんまなんだけど」

リリ「えーっ、それって初期レベルじゃない？」

ラファ「やっぱおかしいよな！？　俺とお前じゃ経験値大して変わらないはずなんだよ！　なのにこの差はなんだよ！」

リリ「うーん、センスの差？」

ラファ「じゃあなんで俺はお前の戦闘についていけてるんだよ！？」

　こっちに来てもう2週間だ。

　段々とこの生活にも慣れてきて、最近はもっと報酬のいい高難易度のクエストにも手を出し始めている。

　当然、敵モンスターのレベルも高くなるのだが、俺は特に苦戦していない。

　どちらかというと、リリの方がしんどそうだ。

リリ「確かに。じゃあ、レベル表記が壊れてるとか？」

ラファ「その可能性はある。こっちの世界のシステムはよくわからない所が多いしな」

リリ「また言ってる。ほんとに異世界から来たの？」

ラファ「ホントだって何度も言ってるだろ！　現にこの服装を見ろよ、こんなのこっちにはないだろ？」

リリ「まぁそれはそうだけどさー、なんか信じらんないよね、他の世界から来ましたーって言われても」

ラファ「まあ、信じてくれなくてもいい。――それより、俺のレベルの話だが、メニューボードが故障した前例とか知らないか？」

リリ「んー、聞いたことないかな」

ラファ「そうか……」

　なんとなく、アイテム欄を覗いてみる。

　そこには俺が所持・装備しているアイテムが一覧形式で表示されている。

　俺が装備している武器は”鉄の槍”、”鉄の盾”だ。

　鉄の槍は斬撃20、打撃20、刺突20の――って、あれ？

ラファ「武器の性能が上がってる……」

リリ「ん？　どういうこと？」

　リリがメニューボードをのぞき込んでくる。

ラファ「俺が買ったときの”鉄の槍”は斬撃10、打撃10、刺突10だったんだ。確かに覚えてる。それが20――倍の数値になってる……」

　鉄の槍をタッチしてみる。

　すると、画面にLV3/3という表示が出た。

ラファ「LV3/3？　武器にレベルなんてあるのか？」

　こっちの世界に来たばかりなので、俺が知らないだけかもしれないと思い、リリに聞いてみる。

リリ「ううん、聞いたことない。ほら、私のメニューボードにはそんな表記出ないし」

　リリは自分のメニューボードを取り出し、アイテム欄を見せてくる。

　そして、リリの武器”アクアマリンの杖”をタッチしてみせる――が、何も起こらない。

ラファ「どうやら、俺のだけみたいだな」

リリ「うーん、なんでだろ？……ねぇ、そのレベル。3/3ってことは、レベルマックスってことかな？」

ラファ「おそらくそうだろうな」

　鉄の槍の横に表示されたLV3/3をタッチしてみる。

　すると、画面に”鋼（はがね）の槍”、”ロンズパーランス”、”ソープパイク”という名前が表示された。

リリ「鋼（はがね）の槍って、鉄の槍よりも値段の高い武器だよね？」

ラファ「ああ、武器屋で見たことがある。それに、魔法使いのリリは知らないかもしれないが、ロンズパーランスとソープパイクってのも槍の一種だ」

　どれも5000Gを超える槍。

　今の俺には高級品だ。

リリ「ねぇ、これってさ……」

　リリがつばを飲み込む。　

ラファ「あぁ、もしかしたらもしかするぞ」

　とりあえず”鋼の槍”を選択すると――

ラファ「うおっ、なんだ！？」

　机に立てかけていた鉄の槍が光り、蠢（うごめ）きだす。

　二人で固唾を飲んで様子を窺う。

　数秒後。

ラファ「おおぉお！　これ、”鋼の槍”じゃん！？」

リリ「やっぱり！？　すごいすごい、アイテムがグレードアップするんだ！」

　急いで”鋼の槍”の数値を確認する。

ラファ「斬撃40、打撃20、刺突20――数値もちゃんと上がってる……」

　こうして、鋼の槍を手に入れた。