第33話 常陸領の若旦那 (真太郎side)

 真太郎しんたろう常陸ひたち領の跡取り息子で、常陸ひたちといえばヤンキーだ。


 常陸ひたち領の跡取り息子である真太郎しんたろうは地元のヤンキーに愛される坊ちゃんだった。

 もちろん16歳になったら免許を取ってバイクに乗るつもりだ。常陸ひたち領のバイク文化に憧れている気持ちもあるが、常陸ひたち領の屋敷は駅から遠くて不便なのだ。

次期領主の真太郎しんたろうも普段はバスを利用している。18歳になったら車の免許を取るつもりだ。



 もちろん地元のファッションを愛する真太郎しんたろうは休日は家でジャージを着ている。

 都市型ヤンキーに対抗心のある領民も真太郎しんたろうもファッションの流行には乗らない。髪型をロン毛にしないしチャラいパーマにも興味がない。


 常陸ひたち領の自慢の1つは海だ。

実は真太郎しんたろうは釣りが好きなサーファーでもある。もちろんチャラチャラと湘南へ出かけていったりはしない。地元の海で魚を釣り、地元の海で波に乗っている。


 領民に愛される真太郎しんたろうは子供だが大柄ながっしり体系で見るからに喧嘩が強そうなイメージだった。実際には喧嘩などしないがイメージは大切だ。領民からは、将来立派なヤンキーになると期待されている。



 ヤンキーの特徴といえば「地元をこよなく愛する」だ。常陸領のヤンキーたちも地元が大好きで、地元の祭は年に一度のハレの日で、ヤンキーと地元の祭の相性はバツグンだ。

 かつては親に迷惑をかけた不良グループも、地元の祭りでは面倒見の良い兄貴や姉さんになる。



 そしてヤンキーはラブコメなヤンキー漫画も大好きだ。ヤンキー漫画には必ずヒロインが登場するのだ。


 なので常陸ひたち領の領民は真太郎しんたろうきよの可愛らしいカップルが大好きだ。地元ローカルの情報番組やタウン誌やインターネットメディアで2人の写真や映像が出る度に話題になる。


 そんな真太郎しんたろうきよが手を繋いで祭の人混みを歩けばただでは済まない。


「坊ちゃん!うちの屋台に寄ってってよ」

「うちのカキ氷をどうぞ!」

きよお嬢さん、今年もようこそ!」

 金髪のお姉さんや金ネックレスのお兄さん達に声を掛けられて真っ直ぐ進めないほどだ。


「ありがとう、このカキ氷は盛りが凄いね」

真太郎しんたろうが受け取ったカキ氷は氷もシロップも山盛りだ。

「年に一度の祭だからな!」

自慢げな屋台のおっさん。


きよの好きなやつだ」

 マンゴーシロップのカキ氷をすくってきよに差し出す真太郎しんたろうも、差し出されたカキ氷を食べさせてもらうきよも自然だった。


「甘くて美味しい!」

「良かったな」

大勢の領民に囲まれているのに2人の世界だ。


きよお嬢さんが嫁に来てくれるのが楽しみだな!」

 誰かがそんなことを言い出せば、そうだそうだと盛り上がる。


「ありがとう。でも真太郎しんたろうが18歳にならないと結婚出来ないし、まだまだ先の話よね」

「学園を卒業してからになるだろうな」

 2人が当然のことと受け止めているのも微笑ましい。


 桜子やヒロよりも1日早く常陸ひたち領にやってきたきよ常陸ひたちの海で真太郎しんたろうにサーフィンを教えてもらったのだが、豹柄のタオルをきよの肩に掛ける真太郎しんたろうの写真や、ペアの金ネックレス姿の写真が地元のSNSで好意的に拡散されていた。

大柄で日に焼けた真太郎しんたろうと色白で華奢なきよの写真は常陸ひたち領のヤンキー達に大好評だった。


 うちの坊ちゃんも坊ちゃんの嫁(仮)も可愛いと領民は大喜びだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る