第10話 クラスメイトたち

 1年生は24人、今年13歳になる全国の領主の子どもたちが全部で24人いるということだ。


 同じクラスには2人の幼馴染のきよ真太郎しんたろうも在籍している。


 長門ながとも同じクラスなので歴史的に長門ながとと仲の悪い岩代いわしろ磐城いわきの子弟が同じ学年でなくてよかった。(※1)

しかし、同じクラスに甲斐と信濃と駿河が在籍しているので緊張感がある。(※2、※3)


※1 戊辰戦争で敵同士だった。

※2 甲斐の守護を務めた武田信玄が隣国・信濃に侵攻し、信濃をほぼ領国化したりお互いに何かとある。

※3 甲斐と駿河も富士山を巡っていろいろある。



 入学早々、一般教養の授業は普通に進められているが地元の学校でしっかりと勉強してきたので遅れをとる生徒はいない。



「お昼だよ! 一緒に食べよう」

 幼馴染のきよ真太郎しんたろうが当たり前のように桜子とヒロを誘う。


── 2人と幼馴染で良かったわ。ヒロと私を誘ってくれて。


── きよ真太郎しんたろうは良いやつだよ。


 似たようなことを考えている桜子とヒロだった。



「2人とも今日は弁当持ってきていねえよな?」

「ええ、学園の食堂を楽しみにしていたの」

「俺は今後も弁当じゃなくて食堂を使いたい。作りたてで暖かいものを食べられるからな」

 真太郎しんたろうの問いかけに桜子とヒロが答える。


「たまにはお弁当もいいと思うけど、私も作りたてを食べたいかな」

きよも食堂派のようだ。


 大和(奈良県に相当する)にある大和学園の食堂は関西風で、柿の葉寿司や茶粥などが固定メニューになっていて、牛丼には贅沢にも大和牛が使われている。


「私はメインを茶粥にするわ、サイドに大和牛の陶板焼き。デザートは“きみごろも”」

「私は柿の葉寿司と“わらび餅”」


 桜子は茶粥できよは柿の葉寿司、真太郎しんたろうは牛丼でヒロは釜飯。4人とも大和の食文化に大喜びだ。上品だが大食いの桜子は小鉢の酢の物を追加するような感覚で大和牛の陶板焼きを追加した。


 真太郎しんたろうとヒロは週末にスタミナラーメンを食べに行く約束をしているがニンニク入りなので桜子と清を誘うのを控えたようだ。

 桜子ときよは“きみごろも”をシェアして盛り上がっている。ふんわりしているのに衣はさっくりで美味しいと大喜びだ。


 コバたんは桜子が持参したお弁当箱からマシュマロを食べている。コバたんは自分と同じ白い色が好きで、食べ物もヨーグルトや豆腐など白いものしか食べない。

 テックンは機械なので油が好物で、今日のお弁当はレーズンバターだ。


「ねえ、みんな専門科目はどうするの? 私は次女だから領地を継ぐこともないから自由なんだけど、逆に何を選べばいいんだか…」


 大和学園の生徒は一般教養のほか、領地経営に関する専門科目を履修するが、専門科目は自由に選ぶことができる。


きよは俺と一緒の科目を検討してほしい。俺たちの将来のこともあるし」

「うん。でも全部同じでいいのかな?」

「お互いに得意な方がメインで担当するって考え方もあるな…」


 きよ真太郎しんたろうは子供の頃から良い感じで当然のように周囲も本人たちも将来を見据えており、完全に2人の世界だ。


 取り残された桜子とヒロがお互いをチラチラみる。


「桜子はどうするんだ?」

アイスブレイクしたのはヒロだった。


「私は領地のインフラに繋がる科目が多めになるかな、治水とか都市計画とか。ヒロは?」

「俺は技術系ばっかりだな、うちの領地は狭いし技術だけが売りだから領主が知識なしではいられないからな」


「学年が上がると一般教養でも情報系の科目が増えるでしょう?」

「そうらしいな」

「私は、あんまり得意じゃなくて…」


テックンがヒロを揺さぶる。


「そそそそそそそういえば、そうだったな。……… ももももも、もし良ければ俺が教えてやるし」

「えええええええ、い、いいの?」

「あああああ、い、家だって隣だし…」



── グッジョブだ自分! 学校では隣の席だし!家も隣だし!


── やったわ! これで休みの日も勉強を教えてもらうのを口実にお互いの家を行き来できるわ!


 テックンが満足そうに肯いている横で、とても嬉しそうに桃色の空気を飛ばす桜子とヒロ。


 コバたんは不満だったが、桜子の授業の手助けは出来ないし、こればっかりは邪魔できない。不満顔で桜子に抱っこされていた。

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