第25話 ちょっとかわいそうに思えてきました

 お昼をとりながら、スマホで近所で何も起こっていないか調べました。もしかしたら、彼のことを誰か調べていないかななんて思ったのです。ブラウザで検索して出てくるようになるのは、きっとまだでしょう。ですので、とりあえずSNSで調べていきます。「拡散希望」と「行方不明」のキーワードで検索し、近くの警察署だったり、近所の住所だったりが載っていないかを見ていきます。

 うん。大丈夫そうですね。でもちょっとかわいそうな気もしてきました。今のところ、彼を探す人はいないみたいです。



 夕食までは足の処理をしましょう。


 今までと同じように皮をはいで、肉をそぎ取っていきます。

 いい加減疲れてきたので椅子に座りながらやることにしました。椅子に座るとちょっと高い調理台に肘をつきながら、足の肉を包丁で取ります。

 切るとか、削ぐとかよりも、こそぎ取るといった方がいいような感じです。手もそうでしたが、切れるほど肉はありませんからね。


 ゴリゴリとこそぎ取って、ラップの上に落ちていった肉がある程度たまったら、流しに置いておいた袋に入れていきます。

 若干血も出るのですが、だいたいのものは乾いてしまっています。脚を切った際に大半は出ましたし、残っていたものもここまででほとんど流れ出たのでしょう。


 足の骨も手と同じような感じでした。こっちも結構ばらばらです。よくこんな形の骨で身体を支えられますね。不思議なものです。


 足の爪は手の爪と一緒にしておいたのですが、これはどう処理するべきなんでしょう。半分に切って、ハンバーグに突き刺しちゃいましょうか。


 もうだいぶ慣れてきたので、効率の良い順番も手の抜き方も分かってきて、両足の処理が終わったのは夕飯には早い時間でした。



 残った時間はとりあえず爪を処理することにします。処理といっても、半分に切ってからハンバーグの中に差し込んでおくだけです。


 キッチンバサミで一個ずつ切るわけです。合計で二十個。簡単で単純な作業ですから、だんだんといろいろな考えが巡ってきてしまうのです。

 一番に来るのはなんでこんな面倒な作業をやっているのだろうという疑問でした。スーパーでお肉を買ってくれば、トレーを洗うくらいしか後始末はないんです。どうせ食べないだろうと思って捨ててしまう分もありますが、数キロしかないお肉のために数日どころか数か月時間が必要になるのです。まあこれを逃せばもう二度と私がこうできることはないでしょうから、やらないなんて選択肢はありませんでした。そうですね。この気持ちには畜産に携わる人たちに感謝しましょうということで蓋をしてしまいましょうか。


 差し込みが終わってもまだまだ時間があります。他の内臓の処理の準備を進めましょうか。とりあえずいくつか目についたものの下ごしらえをしてしまいましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る