第10声完結 君の声が聞きたい!

 ひとつは、過去のことを考えた…


 私、そもそもいつから私は、自分という存在を認識したのだ?私が世界の全てであり、世界は私という存在だったはず。


 私がひとつであるならば、もうひとつの他者となる存在がなければ、私という存在は私という存在を認識する必要はなく、私が私と定義することもなかったはずだ。


 私に自我か芽生えたのは…

 やはり、あれが存在してからか…


 世界は存在した


 世界はひとつであり、そこに時間も空間も意思も必要がなく、観測者もいなければ、観測できる物すらない。

 本当の意味でのひとつの世界があった。


 そして、それは必然だったのか、偶然だったのか、ひとつの世界からそれはこぼれ落ちた。

 こぼれ落ちたのは、ひとつの欠片かけらである。


 これにはなんの意味もない。


 しかし、欠片が存在したことにより、ひとつは欠片を他者として認識し、2つの存在があることで他者を意識することで、情報ルーンのやり取りが生まれ、必然として今までなかった思考しこうが生まれた。


 思考は、意思を生み出し、ひとつは、欠片を探し始めた。


 まずは、欠片を探すために手が生えた。


 しかし、届く範囲に欠片がなかった。


 次に移動するための足が生えた。


 また、見つからないと頭を生やし、目を作った。


 そして、ひとつは欠片を見つけた。


 欠片は、自分と同じ形をしていた。 

 欠片は、こちらを見つめ、触れようと手を伸ばし、ひとつと欠片は、触れあい…


 満たされた。


 当初は、それで十分だった。

 ひとつは、また、いずれ元のひとつに戻れると思考していた。


 しかし、ひとつと欠片はひとつにもどれなかった。


 お互いの体は同じだが、別々に思考してしまった結果、全く違う他者であると、お互いが認識してしまったのだ。


 同じでないものは、ひとつになれない。


 ひとつは、欠片を観察した。口があり、動いている。

 そして、ひとつも口を作った。

 同じように動かしてみる。


 また、満たされた。


 ひとつは、欠片を観察した。よく見ると耳があった。そして、ひとつも耳を作った。


 聞こえる。


 ひとつは、欠片が何を考えているのかが分かった。


 また、満たされた。


 しかし、ひとつは欠片とひとつになれなかった。


 ひとつは、欠片を観察し続けた。


 しかし、それ以上の変化が観察し続けても、し続けても、し続けてもなかった。


 そして、ひとつは、結論を出し、口を開いた。


「私とお前は違う」


 ひとつは、欠片を潰していた。


 ひとつは、他者を認識することで自分を認識し、一人称である「わたし」を使った。


 そして、ひとつは元の「ひとつ」に戻った。


 だけど、ひとつ違うことがあった。


 ひとつは、思考することを知り、自分の存在と他者の存在を認識してしまったのだ。


 ひとつしかなければ、何も行われないただの点でしかない。しかし、ふたつになれば、それを結ぶことができ、さらに数が増えれば、世界は無限に広がる。


 一人であるひとつに、世界が広すぎた。


 そして、ひとつに初めて願いが生まれた。


「また、欠片に会いたい。欠片に触れたい。…欠片の声が聞きたい!」


 ひとつは、自分の体からたくさん欠片を作った。

 しかし、一番始まりの欠片と同じものは作れなかった。そして、最後にひとつは自分の体を欠片たちに全て「わたし」た。


 ひとつは、世界を欠片で満たし思考だけが残った。


 思考は、始まりの欠片を求めた。


 そして、ついにひとつは別の世界で始まりの欠片かけらを見つけた。


 「私はやっと、君と会えた」


 だが、ひとつは体がないために、欠片に触れられず、見られらず、聞かれない。


 ひとつには、無限の時間があった。


 …


 欠片かけらは、ひとつに殺されたことで、死ぬことを知り、ひとつに望まれたことで輪廻(生き返ること)を知った。


 欠片は、ひとつの世界から外れ、何万回何億回と生まれは死に死には生まれを繰り返した。


 ひとつは、欠片が死ぬ度に自分が潰してしまったことを思い出した。


 思考を持ったひとつに無限の時間は長すぎた。


(そうだった。私は、ただ昔に戻りたかっただけだったんだ…もう、遅い…遅すぎる…)


 「君と会いたい。君と触れあいたい。また、かけらの声が聞きたい…」


 ひとつの意識はなくなり、また、完全なひとつだけの世界に戻った。




「龍馬ぁ!」


 彩子は駆け寄った。


 「あ、や…こ」


 彩子は倒れている龍馬に真上から抱きついた。龍馬の学ランは完全に燃え尽き、龍馬の体を焦げ跡として黒く残っている。


 「龍馬ぁ!聞いて!好き!すきぃいい!もう、気持ちがすらすら口に出るよ?りょッ」


 「い…き…て」


 彩子は、また涙を流した。


 「うん!うん!でも、りょうまも生きてくれなきゃ意味ないよ…私と結婚するんでしょ!子供もいるんだよ?!…りょッりょうまがいきてよ…」


 彩子と龍馬は、裸である。


 彩子は生乳を一段と強く「横島よこしま龍馬」に押し立て抱き締めた。


 彩子の太ももに硬い感触が当たる。

 彩子はなま太ももでその硬い感触を確かめた。


 龍馬が震える。


 ビクッ!!


 「ヨウくん?起きてる?」

 「う、うん…」


 彩子はもう一度、太ももで感触をしばらく確かめて、強く生乳を押し当て 反動をつけてから胸を離した。


 「あ、彩子?」

 「ヨウくんのエッチ!」


 ぺチン!


 彩子は龍馬の大事なところを指で弾いた。


 「ッ…!!!」

 「ヨウくん!…もう…大人だから龍馬って呼ぶからね…だから…もう一回、告白して…」


 「彩子、すッ」


 ガバッ!!!!!!


 ブチュッ!

 彩子が龍馬の唇と自分の唇が合わせる。息が止まる…


 「ぷはッ!」

 「龍馬!好きだ!愛してる!結婚を申し込みたい!」


 「う、うん…」


 君のこくはくが聞きたい 完

 ☆おしまい☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君の声が聞きたい 拳パンチ! @kobushipanchi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ