第4話 フェアリー同盟

前書き(戦力と著作権に関する補足も添えて)

 4~6章は、各種族の性質や人柄を分かり易く掘り下げる御話ですが、大型種の国が二カ国も関わるので、万人が子供に優しい作者補正の中ではかなり戦記に寄った内容となっております。


 プレシア兵は世界的な戦記風に言うとメンタル美人版ノチたんの仲間ですが、隙の無い捕縛魔法の精度が非常に良い無双性能の高そうなやつです。

(あれとの違いはレンジからのダメージとサポートを単体で兼ね備えている事です)


 ラフィちゃん辺りは、総合的に萌えるくりーちゃーの等身大バージョンです。

 木の地形効果を推している時点で誰のどのクラス好きかは一目瞭然ですよね。

 更新ペースが遅かったら、オデッセイイベの2sl攻略の様に鑓海縛りの精霊使いで実はSP回復を装備しての裏面ガチ勢をしていると思って良いでしょう。

 ハーモニックテイルの2の方とは似て非なる揺り籠を冠した迷宮物も、裏面1&2の周回により魔物図鑑の完成に至っている訳ですし。



 後、誤解を避けるために明記すると、本作は整合性を意識した異世界ハイファンタジーを目指した結果、武装が重量化する条件が揃っている中で(厚さ依存の鎧に魔法防御が付いていてアーマー貫通の銃が無く、重装でも動ける移動系の魔法具を持った大型種が居る上に、身代わり石の有る集団戦により撤退時の危険性が少ない)魔法具の性能も属性値*先端の体積なので、特段意識をしなくても魔道戦士をイメージしたあの辺りに他人の空似しています。


 つまり、本作の様なテンプレ構成の別視点を守るためにモチーフが同じ分には問題無しとされる著作権的には、彼女等は刀を持ったネコマタの様な物です。

 精霊界のA√は特に王道ですし、似たジャンル同士で整合性を取り合うとある程度やる事も似て来ますよね。



 中型種の武装に関しては、同サイズでの相対値で表した際に片手剣の威力が20、握力50kg当たり腕力係数を100%(両手持ちは軸になる腕と振る腕とに分かれるので係数1.5倍)の所で、プレシア兵の防御力は盾考慮で15の上にSRPGのゲーム性的には割とあるあるな本人の防御係数が150%程有ると考えれば、点で当たる事によるアーマー貫通が30%位乗り射程2でも威力が落ちにくい両手持ちになる訳です。


 見掛け上持ち手が70cm 刃渡りが1.3mで4kg程のセイレーンの両手武器の方がプレシアの片手剣よりも強そうに見えますが、身の丈に合わない純粋物理攻撃は刃に近い部分を軸にしても振りが遅いのに対して、近接重視のあの国には流速で打撃を加速させる速過ぎる魔法剣と持ち手から近いフロート突撃が有りますからね。

 その道では、水系の大型種や水龍が強いのも道理ですし。



(システムからカクヨム一本にしましたが、なろうには以下の画像も有りました)

オリハルコンランス  両端1m(全長2m)の中央両手持ちなツインホーンメイス 5.5kg

 スノードロップのフェンリルは別名場所指定ブリザードまたはアイスレールガン


プレシアの打撃型ミドルドラゴンアーム

 メイスを均等重量にして引き延ばした様な、短リーチクレイモア風な片手用の黒剣

 一言で例えると、防御部分がエクス風な黒剣版のキングorオウガ何とか



第4話 フェアリー同盟


サニア「それじゃあ、次の吉日は3日後だし、朝食の前にあの子を呼びに行きましょうか」


聡「ロリポップちゃんを呼びに行くって、湖の周辺同士で話し合えるのは吉日だけ……ああ、居場所が湖面で相手が姫君なら、少ない魔力でも足りるんだね」


魔法具による音声が、魔力の強い湖面の方が陸上よりも伝わり易いと考えれば、筋も通るよね。


サニア「そう言う事。 通信用の魔法具は、ロリポップさんと相性が良いのよ」


聡「僕等の世界には、善は急げという言葉が有るけれど、風の魔法アクセサリーだと湖からは割と遠く感じたよ。

 置手紙をしても、朝食までシャンナさんを待たせる事にならないかな?」


サニア「この際、そんな低速飛行はしないわ。

 水の魔法ペンダントで、丘を駆け降りるわよ」


聡「プリバドの高級品だね。

 それにしても、これだとまるでウォーターフロートだね」


サニア「私もそれは思っていた事なのよ! 本当に、似た者同士なのね♪」


すっかり意気投合した僕等は、御城の側面に有る丘を水龍の如く駆け降りた。


聡「ジェットコースターって言ったら大袈裟だけれど、凄く速かったね!」


サニア「高性能って最高でしょう!」


聡「正に、高性能って最高だね!

 感想まで同じなんて、本当の兄妹以上だよね」


サニア「本当よね♪

 それじゃあ、この魔法具でロリポップさんに連絡を取ってみるわね」


聡「御願いするよ」



 それにしても、シュクレの姫君って、凄い名前だね。

 この分だと、絶対なのロリだよ。


サニア「ロリポップさん、聞こえる? こちらは、プレシアのサニアよ」


ロリポップ「あっ、サニアちゃん! おはようなの♪」


 ……やっぱり、なのロリだった。

 冷製菓子の種族だろうから、きっと水色か銀色だね。


サニア「ロリポップさん、お早う。

 唐突だけれど、異世界の男の人の話は聞いたかしら?

 丁度今、彼はここに来ているのだけれど」


ロリポップ「えっ、異世界の男の人!? 気に成るの♪

 丁度今スノードロップに居るから、エイトパース位したらまた湖に来て欲しいの」


通信越しでも、ロリポップちゃんがどんな表情をしているのかがありありと分かる。



サニア「エイトパースね。 聡さん、二時間近く後ですって」


聡「8パースで一日の1/12程……こちらの世界での時間は、本来%日なんだね」


サニア「割り易いから、計算も簡単よね。

 それにしても、かなりの好印象じゃない。

 普段もそうだけれど、好奇心旺盛な小型種も、可愛くて良いわよね♪」


聡「そうだね。

 小さい子って素直に支えてあげたくなるし、小型種特有の魅力って有るよね」


 一旦御城に帰って朝食を摂った僕等は、風の魔法アクセサリーで湖に戻った。

 ここで水魔法を練習していれば、いつあの子が到着しても迎えられるからね。


聡「水属性・第三補助魔法! ……やっぱり、有効な分習得も難しいみたいだね」


サニア「私でも使えない魔法なのよ。

 副属性を高ペースで習得できている事の方が驚きよ」



ロリポップ「お兄ちゃんは、水の補助魔法を使えるの!?」


サニア「そうよ。 それで今は、私が教えてあげているのだけれど」


 魔法具越しに割り込んでの登場とは新しいな。

 それにしても、連絡繋いでいたんだね。


 僕等が湖の方に向き直ると、そこには水色とピンクの氷の板が浮かんでいた。

 何だろう?

 小さい外壁と船室こそ有るけれど、本当に幼女らしい色をした氷の塊でしかない。

 これが……この世界の唯一の船の、ミックスフロート?


 僕は唖然とする事しかできなかった。

 シュクレの姫君は氷塊ごと砂浜に乗り上げると、その良く分からない純色の板から降りて来た。



ロリポップ「お兄ちゃん、初めましてなの!

 ロリポップ=プチパルフェなの♪ 宜しくなの!」


聡「ああ、うん。 ロリポップちゃん、宜しくね」


 どこを引き抜いても洋ロリな、凄過ぎる名前だ。

 ……それに、この子って頭身も低いんだね。


 見た目こそ150cm強の銀髪幼女だけれど、頭の大きさは本当に僕と同じ位有る。

 170cmの時に7.5頭身程になる23cm位だと思うけれど、幼生成熟を考慮してもかなり大きめだね。 その割に格好は10歳向けな白ワンピというアンバランス!

 でも、それがまた可愛い。


サニア「小型種の印象はどう?

 聡お兄ちゃん好みな、とっても可愛い女の子でしょう?」


聡「そうだね。 本当に可愛くて、僕好みだよ」


ロリポップ「お兄ちゃん、ありがとうなの!

 お兄ちゃんも、女の子みたいに小さいのね♪」


 勿論僕はこの子よりも1割以上大きいけれど、中型種の女性位という意味だよね。


聡「向こう育ちだからね。

 ところで、ちょっと込み入った御話をしたいんだけど、良いかな?」


ロリポップ「なあに? お兄ちゃん、何か困っている事でも有るの?」



聡「僕は、少し後の吉日にサニアちゃんの国と模擬戦をするんだけれど、上側の三国と僕の力でプレシアに勝つのは本当に難しいんだ。

 そこで、君のミックスフロートを分けて貰えると、僕はとっても助かるんだよ」


ロリポップ「どうしてサニアちゃんと戦うの?

 もしかして、プレシアが疑われているから?」


サニア「御察しの通りよ。

 私達も気は抜かないけれど、国の威信を掛けた模擬戦で押されてでもみないと、他の国には私達が大量の魔法具なんて作れない事は分からないでしょう?」


ロリポップ「それなら、プレシアの皆も少しは手加減してあげれば良いのに」


 幼女だと思っていたけれど、幼生成熟だからか聡明だね。

 他の国を見ている事が理由かな?


ロリポップ「でも、そう言う事なら分かったの。

 ミックスフロートは湖の魔力に合わせて勝手に成長するから少し削っても元に戻るし、お兄ちゃんはサニアちゃんが好きそうだから」



サニア「相変わらず、人を見る目は確かなのね」


ロリポップ「サニアちゃんの頭が良過ぎるの! まだまだ小さい女の子なのに」


 いやそれ、貴女が言うかな?

 思わず心の中で突っ込んだのは、きっと彼女も同じだろう。


ロリポップ「それじゃあ、これがコアの欠片なの。

 とても強力な結晶だから、気を付けてね」


聡「ありがとう。 本当に助かるよ」


ロリポップ「どういたしましてなの! お兄ちゃん、良かったね♪」


 この子の満面の笑みを見ていると、やっぱりちっちゃい女の子は可愛いな!

 って思うけれど……これは純粋な魔力片な訳だし、素手では到底持てそうにない。



聡「……これ、どうやって持てば良いのかな?」


サニア「そのまま持てば良いじゃない。 魔力自体は、安全なのよ」


聡「そうなんだ。 そう言えば、ロリポップちゃんも素手で持っていたよね」


ロリポップ「そう言う事なの♪」


 属性一致で冷気を感じていない可能性を考えたんだけれどな。

 それでも、素直なこの子が可愛くなった僕は、その若干水色掛かったショートの銀髪を優しく髪を撫でてあげた。


 御城に戻ると、シャンナさんは遅れて戻って来た僕等を以前と同じ包容力で迎えてくれたけれど、この世界の女性って本当に優しいんだね。

 それからの僕は今まで通りに魔法の練習に明け暮れて、吉日の8日前に当たる今日を迎えた。



サニア「二属性の第四魔法をこうも簡単に覚えられるなんて、凄い素質よね」


聡「サニアちゃんの御蔭だよ」


サニア「お兄ちゃんらしいわね。

 もっと練習をしたら、どこまで行くのかも気に成るけれど、フェアリーやアスピスとの御話の時間も必要でしょうから、もう出発時よね」


 そう言いながらも気丈な笑みを絶やさないのは、もう御互い様だよね。

 そんな風に思っていると、この子は気を取り戻して壁の装飾品の方に向かった。


 これは……一見すると、魔法剣だね。

 ガード部分と刃先はレイピアでありながら、持手は菱形ひしがたのオリハルコンが付いたロッドを短くして180°ひっくり返した物だね。

 青い鱗型のガード部分が閉じているのは刺突対策の筈だけれど、両手持ちにも対応した形状なんだね。



サニア「これを持って行くと良いわ。

 水の攻撃魔法と物理防御魔法を使える魔法剣で、ロピスって呼ばれているわ。

 本来は姫君の練習用なんだけれど、護身用には十分な性能よ」


聡「確かに僕には扱えそうな装備が無いけれど、そんなに貴重な物を良いの?」


サニア「他でもない、聡お兄ちゃんのためだからね。

 それに、二振り目なら倉庫にも有るし」


 公正なこの子の事だし、きっと倉庫に眠っているもう片方の事も考えての判断なんだろうな。


聡「ありがとう、大切に使わせて貰うよ。

 略さないで言うと、ロッド・オブ・ピアースかな?」


サニア「……良く分かったじゃない。

 確かに、武器に関係してピとスの付く言葉は少ないけれど、その分なら直ぐに使い熟せるでしょうね。 これって殆ど儀式用の魔法具だし」


 ああ、ドラゴンアームが相手だと折れる細さだから、この国では実戦用の認識では無いんだね。

 つまり、中距離に魔法を使う前提ならロングスピアも使わない御国柄の筈だね。

 あれはこの世界には居ない騎兵に強い代わりに大盾の重戦士は苦手そうだからね。



聡「儀式用の魔法剣だなんて、何だか鉾鈴ほこすず……剣の付いた神楽鈴みたいだね」


サニア「理解が早いと思ったら、向こうにも有ったのね。

 それなら、その感覚で使えば良いわね」


聡「持ち方とか絶対に違うと思うけれど、不敬に当たらないかな?」


サニア「男性に姫君の作法なんて強要しないわよ。 

 それに、魔法具はイメージが大切なのよ」


 この子は安堵した様な笑みを浮かべると、ロピスをさやに納めて僕に差し出す。

 僕は、こちら側の作法を表現する様に、剣を横に向けたまま膝だけを曲げて屈んで敬意を示すと、背筋を伸ばしたまま剣を胸の前に引き寄せて下がり、それをゆっくりと腰の左側に添えた。

 最も、僕には剣の知識は無いから、これは今までに見聞きした範囲での真似事なのだけれど。



サニア「随分と女性的な所作をするのね。

 魔法使いらしいと言えば、魔法使いらしいけれど」


聡「僕等の世界の儀式を参考にしたからね」


サニア「気位や雰囲気から良家の育ちに見えるから、尚更似合っていたわよ」


聡「そう言うサニアちゃんだって、御姫様らしくて可愛いよ」


サニア「お兄ちゃん……」


 この子は、瞳を潤ませて憧れを抱いた様な御顔をすると、安心した様子で微笑みながらゆっくりと僕に近付いて抱き付くと、背伸びをして見せた。


 この子の心境を察して、サニアちゃんのキスを受け入れた僕は、一瞬で恋に落ちる純粋さも御姫様らしくて可愛いと素直に思えた。


 この子も、一人になるのが寂しかったんだね。

 上側や東洋怪異の国にはシェリナさんが適任だけれど、模擬戦が終わったら一緒に各地を周れないかソフィアさんに持ち掛けてみよう。


 ……サニアちゃんは、まだ頬を赤らめたまま俯いて微笑んでいる。



サニア「湖に映ったのが聡お兄ちゃんで、本当に良かった」


聡「僕も、こっちに来れて本当に良かったよ。 下側に行く時は、一緒に回ろうね」


サニア「嬉しい……それじゃあ、補助魔法の効果についてはこれを見れば良いわね。

 覚えておくときっと役に立つかなって、メモを書いたのだけれど」


聡「それじゃあ、有難く参考にさせて貰うね。

 知っておけば、きっと集団戦に役立つからね」


 ロピスと魔法のメモを貰った僕は、シャンナさんやソフィアさんに別れを告げるとセイレーンの国からフェアリーの国に入る事にした。

 強国のプレシア側から入ると、フェアリー達に怖がられるからね。


 丁度セイレーンの国に立ち寄った訳だから、シェリナさんにも挨拶をしようと別荘に居たメイドさんに転送を依頼すると、彼女の御部屋までこころよく案内して貰えた。



シェリナ「聡様、模擬戦は間近ですのに、帰って来て下さったのですね」


聡「そうなんだ。

 僕はこのロピスと、周辺国の装備で同盟側に味方する事を決めたんだ」


シェリナ「ロピスって、プレシアの国宝じゃない!?

 サニアさんも、良く預けましたね」


彼女が驚くという事は、これはやっぱり相当な一品なんだね。


聡「御互いの、合意の上での判断なんだ。

 詳しい事は、他言無用にして欲しいのだけれど」


シェリナ「分かりました。

 ロピスについて知っているのは周辺国の中でも彼女等の儀式を見た事が有る方だけですから、きっと隠し通せると思います」


聡「それを正確に教えて欲しいな。

 できれば、皆にはサニアちゃんとの面識を隠したいんだ」


シェリナ「うろ覚えの人は異世界の武器と勘違いする筈なので、対岸を除くと、私の親族とこの国の一部の近衛兵だけですね。

 アスピスは、他国とは一定の距離感を保っているので」


聡「予想はしていたけれど、プレシアの外交って国力が近い左下側が中心なんだね」


シェリナ「幸いな事に、そうなのです。

 ですから、なるべく早く出発した方が良いのですが……サニアさんとの関係を隠すのでしたらこの国のローブを着て行くと良いですね」


聡「ありがとう。 これできっと、フェアリーの国でも警戒されずに済むよ」



シェリナ「どう致しまして。

 それと、案内役には、衛兵よりもメイドの方が適任ですよね」


聡「そうだね。

 衛兵には監視が行き届いているし、ロピスにも興味を示す筈だからね」


シェリナ「そこでです。

 普段私が身の回りの御世話をして頂いているメイドのアクアさんに案内をして頂こうと思うのです。 まずは私が聡様を裏口まで案内致しますね」


 彼女のメイド、アクアさんって言うんだ。

 セイレーンだし、頷けるけれど。


聡「御願いするよ。

 それにしても、その話し方だと、シェリナさんもメイドさんみたいだね」


シェリナ「クスクス……御主人様のためでしたら、献身的なメイドになって差し上げますよ♪」


 僕は、柔和に微笑むシェリナさんに照れながらも私服の上にセイレーンローブを重ね着して、アクア=ティカ=ホーリーレイクと名乗った彼女のメイドさんと共に御城の裏口から出発した。


 水属性持ちの僕等にとっては進み易い所らしいけれど、強力な魔法具の有る安心感はやっぱり相当なものだよね。


 彼女の話によると、古くから良い関係を築いて来たセイレーンとフェアリーの両国には国境が有って無い様な物で、森に守られている後者には衛兵すら居ないらしい。


 抑止力すら持たないのは小型種を考慮してもやり過ぎだけれど、得意な地形に隠れて共存関係を組んだ点は賢いよね。



 それから1時間以上した頃、スギの様な低木や表面がパイナップルの様なソテツ風の木が自生する温帯に近い森林の入口に、僕等はやっと到着した。

 ……ここがきっと国境だよね。


 移動時間としては、プレシアの右側の国境に近い御城からセイレーンの中程に有る別荘までが3時間強で、そこから転送して貰った御城からフェアリーの国境までが1時間強だったから、弧状の横120km程の縦50km位が、湖の全体幅の1/10と平地の縦半分位の小国なんだね。


 半径200km位の湖の周りに半径+100km程の円形の陸地が有ると考えれば筋は通るよね。 27-12で15万㎢程の陸地に何人居るかは流石に予想が付かないけれど、東京は1000人/㎢以上と聞いた事が有るから、この大地の人口密度が何倍も小さいと考えれば……概算はできそうだよね。



 それにしてもこの木の家、寒冷地の様な丸太の壁に尖った屋根ではなく、材木を縦に切って明るいツヤを持たせた壁にピンク色の屋根だから、まるで少女の工作だね。


 魔法具作りが一番得意な国が小型種の連立国な訳だから、小型種としての共通項を考えるとフェアリーも侮れない筈だけれど。

 きっとなのロリだし、僕は彼女にこの国について詳しく聞いてみる事にした。


聡「ここがフェアリーの国なんだね。

 シュクレもそうだけれど、雰囲気が有るよね」


アクア「あら、聡様はシュクレを御存知なのですね」


聡「ここに来る前に、ミックスフロートに乗ったシュクレの姫君に会ったんだ」


アクア「ロリポップ様ですね。

 確かに、ラフィール様にも似た様な雰囲気が有りますね」


聡「やっぱり皆、なのロリ……語尾がなのになる、小さい女の子なの?」


アクア「クスクス……そうですが、語尾がなので可愛いのは貴男様もじゃないですか♪ ですが、プリバドやシュクレに似た生産系の小型種ですから、フェアリーも侮れませんよ」


 やっぱり、下側の連立国の方が凄いんだね。

 魔法具の性能を考えれば、一目瞭然だし。



 僕が続く質問を考えていると、道の向こうからワンピース姿の一人の女の子が飛んできた。 幼女らしい色合いだけれど、小型種の女の子と言われる割には長身だね。


 ピンク掛かったすみれ色の羽を持つ150cm程の女の子は、話通り僕等の倍速で飛んでいるけれど、腰に括り付けられている魔法具はシェリナさんの物よりも高級に見える。


聡「もしかしてあの子、姫君の関係者? あの魔法具、きっと特別な物だよね」


アクア「彼女がラフィール様です。 シェリナ様が、連絡をされたのでしょうね」


聡「え? 魔法具での連絡って、湖の周辺でしかできないんじゃないの?」


 驚く僕に彼女が説明するよりも早く、細身な彼女が軽快に飛び付いて来る。


ラフィール「お兄ちゃーん! ねえねえ、ラフィと一緒に、御話しをしましょう♪」


聡「そうだね。 僕等は、君と御話がしたくてここに来た訳だし」


 予想以上にあどけない姫君に驚きながらも何とか言葉を返すと、この子はぴょんと跳ねて喜んで見せる。



ラフィール「わあい、お兄ちゃんは、やっぱり優しいの♪」


 腰の辺りが窄すぼんだミニスカートのワンピースは、その愛らしい動きに完璧に似合っているけれど、こんなに可愛い金髪緑目の女の子が姫君と聞いたら、僕も色々と心配をしてあげたくなる。


聡「連絡方法は魔法具でも、君みたいに可愛い女の子には姫君って荷が重くない?」


ラフィール「大丈夫なの!

 皆とっても良い子だし、ラフィに味方をしてくれるの♪」


聡「それを聞けて安心したよ。

 ところで、僕等がここに来た理由は、聞いていたりするの?」


ラフィール「シェリナちゃんから聞いているの!

 丁度セフィリカお姉ちゃんも来ているし、お姉ちゃんもラフィと一緒に御話をしましょう♪」


聡「僕等は、アスピスの国の姫君が来ているなんて聞いていないんだけれど、大丈夫なの?」


アクア「アスピスは、模擬戦の際も別行動ですから、これが普段通りなのです」


成程。 サニアちゃんからしたら同盟側に見える訳だけれど、一定の距離感ってそれ程なんだね。



聡「そっか。 ところでラフィちゃんは、どうやって連絡をしたの?

 湖は遠い訳だし」


ラフィール「それはね、これをチューリップちゃんから貰ったの!」


 これは……魔法アクセサリーと同様に銀色の円盤型をしているけれど、ピンク色の水晶部分はかなりの高級品だね。

 あの子の魔法ペンダントの幼女デザイン版が土属性をしている位の性能だろうね。


聡「地面の魔力との親和性が高いんだね。

 シュクレには船が有る訳だし、疑問が解決したよ」


アクア「聡明なのですね。

 (小声)フェアリーには怖がりな子が多いので、仲介が必要かなと思っていたのですが、聡様は小さい女の子にも慣れているのですね♪」


聡「(小声)慣れている訳ではないけれど、支えてあげたいんだ。

 僕、妹分とか好きだし」


アクア「(小声)年下が好きなんて、女の子目線なのですね♪」


聡「(小声)女の子目線ね……サニアちゃんみたいとは言われたけれど」


 この世界では、小型種好きは等しく母性扱いなんだね。



ラフィール「お兄ちゃん、お姉ちゃんも、どうしたの?」


聡「ラフィちゃんが予想以上に可愛かったから、思わず話し合っちゃったんだ」


ラフィール「お兄ちゃん、ありがとうなの♪ それじゃあ、案内してあげるね!」


 この子は、何の疑いもしないで来た道を嬉しそうに戻って行く。

 速度の違いで距離が開く分、少し進むと止まってもくれる。


アクア「咄嗟とっさにプレシアのサニア様の名前を伏せた所を見ても、優しいのですね」


聡「どちらかと言うと、可愛い女の子への加護欲かな。

 それじゃあ、僕等も行こうか」


僕は、クスクスと微笑むアクアさんと共に、ラフィちゃんの家まで付いて行った。


ラフィール「ここが、ラフィの御家なの。 二人共、入ってね♪」


聡「何なの? このいかにも御家おうちって感じな家は」


 その佇まいは、姫君は荘厳そうごんな御城に住んでいるという僕等の世界の常識を覆すには余り有った。

 木々の外壁は可愛いリースで飾られていて、内装はガーリー《少女的》な安定の白ピンク。



アクア「話には聞いておりましたが、凄い佇まいですね♪」


 苦笑しながらも柔和に微笑む安定のアクアさん。

 そして、圧倒的に場違いながらもその場に溶け込んでいる天使然とした御姉さん。

 きっと彼女が、セフィリカお姉ちゃんだね。


セフィリカ「あら、初めまして。

 私は、アスピスの姫君のセフィリカ=ガーネットです」


聡「初めまして。 僕は志方聡って言います」


アクア「セイレーンの国でメイドをしております。 アクアと申します」


 一定の距離感という単語から厳しい人を想像していたけれど、とても優しそうな女性だね。

 シェリナさんと比べると、はっきりしていて元気と言った印象だけれど。


セフィリカ「異世界の男性とは、貴方の事ですね。 どうです? 貴方も軍議に加わりますか?」


 彼女は憂いを帯びた瞳で少し考えた後に、とても包容力の有る声色で提案した。

 皮の様な色合いで儀式向けな柄の入った白いローブや、僕以上は有る長身に似合う透き通った青い瞳も相まって、凄く大人びて見える。

 ……中型種だから、魔道戦士か弓使いだろうね。



聡「良いんですか!?

 勿論嬉しいですが、僕は碁盤の上でしか戦った事は有りませんし」


 僕が伝わる例えを探して応えると、彼女は衣装通りな微笑みを浮かべて続ける。


セフィリカ「その装備を見れば、御強い事は明白です。

 御互いに、参考になると思いますよ」


聡「それでは、加わらせて頂きます。

 あの子達も、柔和な女性同士、仲良くすれば良いのに」


ラフィール「あっ、それはラフィも思ってた事なの!」


アクア「恐縮ですが、私達もアスピスがこの様な御人柄とは存じ上げなかった物ですから」


セフィリカ「そうですね。

 距離を置き過ぎる事にも、弊害は付き物ですよね」


聡「それでも、セフィリカさんには余程の事情が有りそうだし、今は会議に集中しようか」


 先程の彼女の気負いを払拭する様に、僕は模擬戦の話を切り出した。

 ラフィちゃんは、勿論シェリナさんと連絡を取り合っての議論なんだね。

 この子の相手は、懐かれている彼女の役割らしいけれど、これだと姫君と言うよりも小型種らしい妹分だね。


 戦略に関してフェアリーのラフィちゃんと芸術の方が得意なセイレーンのシェリナさんが素人なのは予想通りとしても、天使然としたアスピスのセフィリカさんが戦闘に明るい事は、森が城同然なフェアリーの使い方を聞いた時点で明らかだった。


 これに関しては、プレシアが木の自生し始める風属性も含まれる地形まで前進してくれる御蔭とも取れるのだけれど、各国の御国柄を考えるとプレシアが国境付近まで進軍したという想定で模擬戦が行われるのは至極当然とも言えそうだね。



 模擬戦のルールには王家は一人までだからシェリナさんは出撃不可という物や、身代わり石を消耗した相手には追撃しないという物も含まれるらしく、ああ見えて慎重なサニアちゃんにフェアリー達をおとりとしてぶつける戦法も取り易いみたいだ。


 大将があれの大剣版を装備したソフィアさんでないのならと、陽動の一環でサニアちゃんの懐に精鋭で奇襲する戦法も提案してみたけれど、水魔法の効かないあの子には魔力装備のオリハルコンランスを装備しての第五攻撃魔法という奥の手が有るらしいから、僕はその危険過ぎる名前を聞いた時点で考え直した。

 ……もしかしたら、彼女等はいつも手加減しているのかも知れないね。


 森から魔法で叩く戦法は、実戦でそれをしたらセイレーンの国に全軍が向かい壊滅するからと禁止されていて、アスピスの光の弓を全ての理力で打ち込んでも強大なプレシア兵の殲滅には至らないと予想できる事からも分かる様に、セイレーンに滅法強いあの人達は完全なる強者だね。


 全員の第四魔法が数回なのは救いだけれど、こちらのミックスフロートのコアも1個限りだから、これに過信して前列のフェアリーを入れ替えながら引き撃ちしても、きっと勝ち目は無い。



 そこで僕は、総MP量という観点から、ある提案をしてみる。


聡「普段から光の弓を使い切れるだけの時間を稼げているのなら、セイレーンから魔力を分け与えて貰う必要も有るかも知れないね。

 問題は、プレシアの突破力に耐えきれるかだけれど」


ラフィール「前衛なら、逃げ足の速いラフィ達に任せてなの!」


  この子達の引き撃ちなら、前列が下がり続けていても大丈夫なんだね。


セフィリカ「確かにそれも、魔力の抽出能力を使えば、彼女等の協力次第では可能ですが……」


 ラフィちゃんとは対照的に、セフィリカさんは自責の念に駆られた様な顔をする。

 この子の相手がシェリナさんの担当なのは、この子と同期になると予想される時間の長さも有るけれど、彼女とセレーネさんとの相性の問題が大きいのではないか?


 勿論現在の姫君もセイレーンらしいとても良い人だけれど、彼女にはどこか大人の陰りが有ると言うか……それも彼女の魅力だと思うけれど柔和な笑みの中にメロウ感が有ったし。 音響で言うと、正にm7の居る曲の様な雰囲気だね。



シェリナ「以前から思っていたのですが、そんなに距離を置かなくても良いではないですか。

 この子達への援護を優先する姿勢を見れば、貴女方の御人柄は良く分かりますし」


アクア「シェリナ様の仰る通りです。

 距離が有っては、御互いに分からない事も多いですよ」


セフィリカ「そうですね。

 私も、自国の民を説得して、これを機に歩み寄りましょう」


 彼女は、そう言い終わると、ようやく微笑んでくれた。


 それからは、水属性が減衰して風属性が強化される草原からフェアリーが引き撃ちをする事を念頭に、水抵抗の第二魔法と回復魔法の効果を広げる第三魔法を使いながら、アスピスにセイレーンが分け与えた魔力で光魔法の矢を撃たせる戦略を立てた。



 それでも、あの子は僕等側にミックスフロートのコアが有る事を知っているから、ここでの僕は中列からフェアリー達を先導するラフィちゃんと一緒に動いてコア投げの可能性による圧力をプレシアの前衛に掛けつつ、コア自体は弓使いのセフィリカさんに持って貰う事にした。


 こうすれば、強気なサニアちゃんも密集して攻勢に出る戦法は取りにくいからね。


セフィリカ「聡さんの御蔭で、今回は勝てそうですね」


シェリナ「やはり、御主人様は聡明なのですね」


聡「これも、考察勢としてのゲーム知識の御蔭かな」


ラフィール「ラフィ、良く分かんなかったけれど、木の所から引き撃ちすれば良いんだよね」


聡「そう言う事。

 木が点在している所は特に風属性が有利だし、僕も一緒に動くからね。

 それに、ラフィちゃんはやればできる子だから頑張ってね」


ラフィール「ラフィ、頑張るの!

 それじゃあ、シェリナちゃん、セフィリカお姉ちゃんも、これからは……同盟で良いよね」


 いきなり同盟か。

 それでも、その位素直な方が、この場合は御互いのためになるんだろうね。

 こう言う時は、小型種の勢いが有難い。 そう思ったのは彼女も同じだろう。


セフィリカ「そうですね。

 貴女方との同盟でしたら、皆さんにも賛同して頂ける筈です。

 私達も、この地に移り住んだ時から、本当はその様な関係を望んでいた訳ですし」



 移り住んだ?

 やっぱり、アスピスには種族名を隠すだけの経緯いきさつが有ったんだね。

 一般的に種族名は名詞だけれど、アスピルって吸収するって言う意味の動詞だし。


シェリナ「和睦を貴ぶ御母様も、その御言葉をきっと待ち望んでいた筈ですよ。

 改めて、良い国交にしましょうね」


セフィリカ「こちらこそ。 改めて、宜しく御願い致します」


 考え込む僕の傍らで、柔らかく話を進める女性陣。

 僕も、小さい女の子には優しくしようと心掛けてはいるけれど、やっぱり女性の魅力ってこういう所に表れるんだよね。


聡「同盟の名前は、どんなのが良いかな? 切っ掛けは、ラフィちゃんだけれど」


 勿論僕は部外者だけれど、これに関してはフェアリーの国を優遇してあげた方が良いと思う。


セフィリカ「そうですね。

 この場合は、ラフィールさんの目線で決めるべきですね」


ラフィール「それじゃあ、フェアリー同盟、結成なの!」

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