第5話 おともだち

 俺は自分たちの境遇のことを話し終えた。


 するとセレスは。

「転移者ですか……」

 と、一言。


「あんまり驚いてないね」

「驚いてはいますよ。でも、この世界にも転移者、転生者が何回か来たという歴史がありますから。

 流石に自分の目で見るのは初めてですから驚きますけど」


 なるほど、何人かいるのか。


「それで、さっきの話なんですが」

「ん?」


 さっきの話?

 ってなんだっけ。

 俺達、なんか話してたっけ?


「お金のこととか、泊まる場所のこととかのことじゃないのかな」

 俺が戸惑う様子を見て、レイが補足してくれる。


 あぁ、そのことか。

 そういえばそんなこと話してたっけ。


「……忘れてたね?」

 レイが鋭いことを言ってくる。


「……いや……そんなことはないぞ……」


 あれ、ていうか、補足してくれた時点で確信してたんじゃ……?


「ほんと、シンはばかだな〜」

「うるせ!」


「あの……」

 セレスが、話しかけたいけど話しかけられないといった様子だった。


 あ、やばい。

 セレスのこと困らせちゃった。


「ごめん、続きは?」

「はい、シンさん達が何も決まっていないのでしたら私が王城に招待しましょうか? 第3王女を救ったということでそれくらいは普通に許されるので。というか、多分父から褒美が来ますよ?」


 父っていうと王様か……。

 お姫様を助けて王族と親密になる……。

 めちゃんこテンプレやないか。


 でもまぁ、それで衣食住が確保されるならどテンプレでも結果オーライだしいいよな。

「じゃあ、お言葉に甘えちゃってもいいですか?」

 俺の代わりにレイが甘えた。


「はい、それと私に対してはタメ口でいいですよ。流石に公共の場では敬語じゃないと文句を言う人もいますからあれですが……」


「そうですか?」


「はい、私もタメ口で話してくれる同年代の人がいたらいいなといつも思ってましたので」

「じゃあそうさせてもらうんだけど……シンは最初からタメ口だったよね?」


 ……。


「痛いとこついてくるな」

「そりゃそうだよ! 処罰されないか私ずっと心配だったんだからね!?」

 レイがグイグイと抗議してくる。


「ごめんって。なんかタメ口のほうがしっくり来てさ」


「へぇ〜、何? 運命感じたから?」

「違ぇって!」


 レイが煽るように言い、俺は恥ずかしさと、それは事実じゃないという気持ちで少し必死になりながら、否定する。


「あのぉ〜……」

 あ、またセレスのこと困らせちゃった。

「あ、ごめん」


「いえ、その、少しお願いがあるのですが……」

 お願い?

「うん? 何?」

「えっと、と……友達になってくれませんか!?」


 意を決したようにセレスが言う。


 正直予想通りだったな。

 予想通りだったから返事はすぐにする。


「うん、いいよ」


「え?」

 即答に驚いたのか、少し間の抜けた声が出る。


「いいんですか?」

「うん、いいよ」


「やったやった! 初めての友達!」

 余程嬉しかったのか、セレスはピョンピョン跳ねながら嬉しさを露わにする。


 何この子、可愛い。


「……ねぇ」

 レイが静かに話しかけてきた。

 なんか怖い。

 え、俺なんかした?



 とりあえず謝っておく。

 ごめんなさい。


「ごめんな……」

「セレス可愛すぎる! ほんと天使!」

 俺の言葉を遮ってセレスに抱きつきながら言った。


 ……はい?

 え、そんなこと?

 じゃあさっきの謎の圧はなんだったんだよ……。


「はぁ……とりあえず移動しよ?」


 そんなことだったと分かり、妙に脱力してしまったが、いつまでもここにいるわけにもいかないので、移動しようと提案した。


「あ、そうですね。では、私についてきてください。これから王都に向かいますんで」


「そういえば、王都ってどこにあるんだ?」

「大体ここから3キロほどで着きますよ」

 意外と近くにあるな。

 あ、ロリがそうしてくれたのか。


 あ、いや、遠いか? ま。いっか。よく分かんなくなっちゃった。


 ていうか、この服装って大丈夫なのかな?


「ねぇ、この服って目立たない?」

「大丈夫ですよ。ここにも学校はありますし。それ、制服ですよね?」


 この世界にも学校はあるんだな。

 なら大丈夫か。


 ちなみに登校中に持ってたバッグはいつの間にかどっか行ってるし、倒した魔物の素材もファンタジー世界なんだからどうせ売れるだろうけど、今の俺たちには持ってくることは難しいので置いてきている。


 だからスキルカード以外何も持っていない。

 要するに手ブラだ。


 ―――――――――


 途中で休憩を挟みながら行ったから、2時間程で見えてきた。


 やっぱ遠かったな。あの野郎。


 王都の出入りを管理している衛士さんの隊長らしき人が、セレスのことを知っていたので、特に検問などはなく入国出来た。

 その代わりか、セレスがすごい注意されてたけど。


 この王都、結構発展してんな……。

 スマホみたいなものは無いし高層ビルみたいなのもあんまりないけど。


 一つ例を挙げよう。

 魔道具的なもので、その魔道具がある場所から、別のその魔道具がある場所へ転移出来るらしい。


 いわば転移するタクシーみたいな、エレベーターみたいな。


 その転移する魔道具で王城の近くに行った。

 なんでも歩くと4時間以上はかかるらしい。

 ……遠いな。


 ちなみにそれは『転移碑』と言うらしい。


 でも、移動費無料ってすごいな。


 転移碑で来たからすぐに王城に着いた。


 ……王城がデカすぎる。

 縦にはマンション20何階くらいの高さだが、面積で言えば東京ドーム何個分あることだろう。


 少なくとも20個分の敷地は絶対あると確信する。


 セレスがいるからまたもや検問みたいなのも無く敷地に入れた。


 え、ここら辺こんな警備で大丈夫なわけ?

 セレスが偽物だったらどうするの?


 と思ってセレスに聞くと。

「スキルカードとそれを今所持している人が同一かどうか判定する魔道具がありますし、そのスキルカードには貴族以上の位の人は家紋を付けますから偽物という心配はないんですよ」

 と、返ってきた。


「え、じゃあその家紋を取られたりとか複製されたら?」


「それは一度付けたらもう二度と取れないものですし、特殊なものを使っているので複製も出来ませんよ」


「スキルカードって色々出来るんだな……」


「はい、例えば罪を犯してしまった人はそれぞれ罪に応じて数や濃さ、大きさなどが違うバツ印を付けられます」


 一目でどんな前科あるか分かるってか。

 便利だなぁ。


 そんなことを話してる間に王城の門に着いた。

 敷地の門はでかかったが、こっちは豪華って感じだ。


 俺達のことはセレスが王城のメイド長、セレーヌさんに説明してくれた。

 セレーヌさんにとりあえず客間へと案内される。


 中もすごい。

 別に宝石とかで豪華って感じじゃないが、全てが計算されたようなすごく綺麗な仕上がりだ。


 セレスは王族の皆さんに説明しに行くらしい。

 俺たちは客間で待つみたいだ。


 ―――――――――

 30分後。


 なんか王と謁見することになった。


 正直言おう。

 超絶めんどくさい。

 俺はそんな事しなくても別にいいと思うんだがな。

 まぁ、当たり前といえば当たり前だが……。


 でも、礼服に着替えないでいいだけ良い方だろう。

 謁見って礼服ってイメージあるし。


 礼服って重そう。


「主たちがセレスを救ってくれたシンとレイだな?」

 白い髪を綺麗に整えているやり手そうな感じの王様が言ってくる。


 こういう時ははっ!でいいのかな?

 まぁいいか。

「はっ!」


「助けてくれたことに1人の父として礼を言う。

 本当にありがとう」


 いえいえ。


「それで、主たちがセレスを助けた時のことを聞いたのだがな」


「はっ!」


「そこで主たちに聞きたいことがある」


「はっ!」

 なんだろうな?


「主たちはその歳でブラックオーガを倒せるほどの実力を持ってるということだ」


「はっ!」

 って言ってもあれが一般にどれ程の強さか知らんけど。


「そこで主たちのスキルカードを見せてはくれんかの。ちなみに言っておくが、セレスから主たちの身に何が起きたのかは聞いておる」


 知ってんのか。

 スキルカードか……。

 まぁ、俺も自分がこの世界で強いのか弱いのか知りたかったし。


「はっ!」


 俺はスキルカードを起動する。


 銅色のスキルカードから俺たちのそれぞれの情報が出てくる。


 そこにはこう書いてあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る