椎の実

 お池のある公園を上水が通っている。 幹線道路のある方—とある人気猟奇的 アニメの舞台にもなった—から緑の一帯である公園に緑の帯が入り、住宅地—これまたこちらは有名なアニメ映画の舞台になった—へと抜けていく。


 この、住宅地へと緑の帯が抜けていく辺りは、私たちにとって、木々が多く並ぶ公園への入り口であった。 幼い私は緑地を目の端にしながら自転車で駆け、ここから上水やお池のある公園を盛んに行き来していた。

 住宅地に上水が入ると言っても、上水が緑の帯で、公園は林或いは森であったし、 管理者の違う区域が混在していて、辺りは鬱蒼として薄暗かった。 それが閑静な住宅地にあってなんとなく不安を呼び、同時にどうしてか興味を唆られるのだった。


 ある秋のこと。小学校に級友がどんぐりをもってきた。なんでも公園の入り口で手に入れて、これは食べられるのだという。落ちた実でなく、虫喰いの穴のないことを確認すれば、そのまま割って食べることができる—椎の実だという。椎の実を集めてきた子はたちまち注目を浴び、私もいくつかもらって食べてみた。癖はなく淡白なナッツといった印象で食べやすく美味しかったと記憶している。ちょっとしたおやつとはこういうことなのかな、


 私も公園の入り口へ行って、その木に合てはまりそうな木を探してみた。薄暗く、日の落ちる のの早い秋である。管理者が上水とも公園とも違うようで柵と網で囲われていた。私は興味深々であったが、柵と網で区切られた薮に分け入る気にはなれず諦めた。

 代わりに、もらった椎の実を筆箱にいれ、大切に取っておいた。


 この木の実が、果たして本当に椎の実だったのか、生のまま食べて良い物だったのか、衛生状態は充分だったのか、今となっては誰も知らない。

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