記録38 運動会、開催しました。
犯人探しのため、魔王城に来ていた勇者達は、魔王代理から「ちょっと話があるの」と言われた。
「え、僕達も参加していいんですか?」
リザシオンがそう聞くと、魔王代理はにっこり笑って頷いた。
何でも近日中に魔王城でやる行事に参加してみないか、という話だった。
「えぇ。その方がみんな盛り上がるだろうし。それに……これを機に魔族と仲良くなれば、情報収集しやすいでしょ?」
最後は小声でそっとリザシオンの耳元で呟いた。
魔族ってみんな、戦うの好きだし運動会とかやったら楽しそうじゃない?というクローチェの一言で、魔王城で運動会の開催が決定した。
「は〜い、皆さんお待ちかね、チーム発表しますね〜」
魔王代理がマイクを持って、徹夜して考えたチームを発表する。
赤組
クローチェ、ミーチェ、ルナーリア、その他色々な魔族達。
黒組
フィク、アガット、リナリア、その他色々な魔族達。
青組
リザシオン、フォルティ、アルジェント、ココ、その他色々な魔族達。
「白組はないんだ……」
リザシオンがそう呟くと、同じ組である心が読める魔族のココが「赤、黒、青って姫様の好きな色なんだよー」と教える。それを聞いたリザシオンはいそいそとメモした。
「ちょっと、お母様!アイツがなんでいるの?アルジェお兄様が来るとか聞いてない!」
クローチェはしれっとこの場にいる従兄のアルジェントを指さしてそう言った。
「人数多い方が楽しいだろうなーって思って、ちょっと誘ってみたのよ」
魔王代理はおっとりとそう言う。
「まったく、姫である自覚はないのかクローチェ。姫たる者、ぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃないぞ」
アルジェントがそう言えば、クローチェは「アルジェお兄様、ボッコボコにするから覚悟してよね!!」と言って赤組の陣地へと行った。
ちなみに、その様子を見ていたココは大爆笑していた。
相変わらず、アルジェントは心の中では『クローチェ可愛いな』と思っているらしい。
「姫様に危害を加えたら即、腕を折りますから」
フィクは真顔でアガットにそう宣言した。
「え、腕を折られるだけの済むの?フクロウのメイドさん、めっちゃ優しいな……ミーチェなんて、氷漬けにしようとするわ、氷で作った刃物を投げてくるわ……アイツ、めっちゃ怖いんだよ」
アガットがそう言うと、後ろからリナリアが登場。
「へぇ~それは大変だねぇ。私が慰めてあげよっかー?」
「ちょっと、リナリア様……誘惑は後でお願いします」
黒組のメンバーは、何だか仲良くできてる様子……。
「え、えっと……最初の競技は、な、何でしょうか……?」
ルナーリアがオロオロしていると、ミーチェがやってきた。
「最初の競技はパン食い競走みたいね。それも、パンが入っているのと、入っていない袋があるみたい。一番にゴールにたどり着いても、パンの入っているのをゲットできてない場合は、戻らなくちゃいけないっていうルールだそうよ」
「はいは〜い!私、行きたい!!」
クローチェがぴょんぴょん飛んで主張する。
赤組からはクローチェ。さて、他の組は誰だろうか。
「黒組からは俺だぁ!」
アガットがじゃじゃーんと登場。
青組は、じゃんけんで選手を決めたらしい。リザシオンが出てきた。
パンッとピストルが鳴る。
3人は走り出した。優勢なのは黒組のアガット。クローチェとリザシオンは拮抗している。
「ササッとパンをゲットして1位になるぜ!」
アガットはバシッとパンの袋を掴む。
パンが入ってるかどうか確認をちゃんとする。
「ひぎゃあああああ!!!」
アガットは袋を放り投げた!
放り投げた袋は何とリザシオンの所に!
反射的にパシッと掴むリザシオン。
「わ、袋の中に虫……のおもちゃが入っている」
虫のおもちゃが入っている袋をズボンのポケットにとりあえずしまい、座り込んでいたアガットに手を差し伸べた。
「アガット、大丈夫か?」
「うぅ、リザシオン〜助かるぅう」
リザシオンの手を取りよろよろと立ち上がるアガット。
「それじゃ、お先にー!ちなみに、左から2番目の袋の中も虫のおもちゃが入ってたよー」
クローチェはアップルパイの入っている袋を見せびらかしながら、走り去る。
気を取り直して、クローチェに言われた通り左から2番目の袋を避けてリザシオンとアガットはパンが入っている袋を探し当てて、ゴールへと向かう。
「何だアイツ、虫が苦手なのか」
控え席から見ていたアルジェントがそう言うと、隣に座るフォルティが頷く。
「そうなんだよ。アガットってけっこう可愛い性格してるだよ」
しかし、フォルティのその言葉を聞いているのか怪しい。何故なら、アルジェントはクローチェのことばかり見ているからだ。
後ろの方で待機しているココがひたすら笑っている。アルジェントがうるさいぞ、と言わんばかりにココを睨みつけると、更にココは笑うのであった。
「わーい!1番取ったよー!」
クローチェが満面の笑みで赤組の控え席に向かう。
「と、とっても素敵でしたっ……!」
「このまま赤組が圧勝してやるわよ」
「わ〜ミーチェちゃんやる気満々!いいね!」
赤組のメンバー、やる気に満ちている。
「次って何だっけ」
リナリアがフィクに聞く。
「次は騎馬戦みたいですよ」
騎馬戦では赤組はボロ負けした。
青組のココが心が読めることを活かして、すいすい避けて逃げた。
それを見た黒組のリナリアが「ココずるーい。私も本気だしちゃお〜」と言って、誘惑、魅了をしまくって見事1位になった。
「みなさん……とても、楽しそう……ですね」
カメラを構えて運動会の様子を撮影していた魔王代理の側に秘書のリンゼンがそっと現れた。
「えぇ、みんな良い顔をしてるわ」
そう言う魔王代理も楽しそうな表情をしていた。
ふと、魔王代理は時計を見た。
「あら、もうすぐお昼ね」
お昼休憩の時間がきたようだ。
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