記録21 検証ついでにパジャマパーティー

クローチェが検証を3人の魔族に持ちかけてから数日後の夜の事だ。


綺麗に掃除された魔王城の1室。そこにクローチェはいた。

「では・・・これより、魔族達により良い睡眠を提供する為の『永眠できそうなほど、安眠ができる寝具セット&睡眠の環境作り』の検証・・・ついでにパジャマパーティーを開始します!!」

パチパチと拍手をクローチェに送る中で1人、クローチェ専属メイドのフィクだけ拍手をしつつ、ボソリと「パジャマパーティーがついでじゃなくて、検証がついでに、ですよね・・・そう、つまり検証の方がオマケ・・・」

視力も聴力も良いクローチェは、フィクの呟きを聞き逃しはしなかった。

「フィク~!確かに、パジャマパーティーとかも憧れてたから、やりたかったのはあるけど!検証もちゃんとやりたいのは本当だから!!今回、魔王城大規模工事の影響で睡眠がしっかりできてない魔族達はもちろん助けたいし、それ以外の魔族達にもより良い睡眠を提供したいもん!!」

そう言ってクローチェは自分の本気度を伝える為に、フィクの肩をめっちゃ揺らす。

「す、すみません、姫様。い、言い過ぎました。も、申し訳ないって・・・ちょ、そんなに肩を揺らさないで下さい!ひ、姫様、ちょっと気持ち悪くなりますー!」

「はっ!ごめんなさい!!フィク!」


そんなこんなで、検証兼パジャマパーティーの開始である。


「まずは、着るものから!てなわけで、パジャマからいくよ~!」

クローチェとルナーリアがよいしょ~っと運んできたトランクの中からは、色んな寝間着が姿を現す。

モコモコのパジャマにシンプルなパジャマ、それと・・・ベビードール。

クローチェは意気揚々と、鬼の魔族、リッカを呼ぶ。

「は~い、羽毛、羊毛、シルクとか・・・とにかく温か~いパジャマ!!背中に悪魔の羽をデザインしたのがポイント!冷え性だって聞いた、リッカにどうぞ!あ、足元も暖めた方が良いって聞いたから、セットで靴下も用意したの!」

「まぁ・・・!確かに、とても暖かそうですわね!!」

リッカはルンルンと嬉しそうにパジャマを受けとる。

「はいはい~パジャマ~じゃんじゃん行くよ~!スピリィにはこっちのゆったりしたパジャマ~!あと、要望を聞いて作った、抱き枕もどうぞ~!」

羊の魔族のスピリィもまた、嬉しそうに受けとる。

「わぁ~!ひつじ型の可愛い抱き枕~!嬉しいです~!横向いて寝る時、普通の枕だと、何だか寝にくくて~」

続いてクローチェはカラスの魔族、クルレを呼ぶ。

「はいはーい!クルレにはコレ!!乾燥肌とかでお悩みって聞いたから、肌に優しい素材で作ったパジャマだよ~!」

「わぁ・・・本当に肌触りが良いですわね。生地に肌が引っかからなくて、寝るのが快適になりそうですわ!」


そして残りの2人には・・・

「じゃ~ん!ベビードール!!」

レースとシフォンとかが使われ、作られたぺらっとひらひら~としたソレ。

フィクとルナーリアは顔が青白くなる。

「・・・そ、それ、着なくてはダメ・・・ですか・・・?と言うか、ベビードール、私、作った記憶が、な、無いのですが・・・」

ルナーリアが恐る恐る聞く。

「ダメって言うか~2人には、このベビードールしか用意してないから・・・」

そこですかさず、フィクが口を挟む。

「ご安心ください。私、いつも使っている寝間着を持参してますので、そちらを着ます。なので・・・そのベビードールはご遠慮させて頂きます」

「え!?わ、私も、今から、パジャマ持って着ます・・・!!」

ルナーリアが駆け出し、部屋の扉を開けようとしたその時だ。

「はいは~い、何処にいくのかなぁ?2人には私と姫様が考えて作った、そのベビードールを着て貰うわよ~」

扉の前に立ちふさがるのは、ルナーリアの姉、リナリアだ。

「安心してよ~2人とも~私も、ベビードール着るから!お揃いだよー!」

ニコニコ笑顔のクローチェが2人にベビードールを手渡しする。前にも後ろにも、にっこり笑顔の2人に挟まれたフィクとルナーリアには、逃げ場はなかった。



「見てみてー!可愛い?可愛い?こんな可愛いナイトドレスがあるとか、人間達ってすごいよね~」

クローチェがその場でピョコピョコと跳び跳ねる度に、リボンやレースにシフォンがふわふわと揺れる。

そしてクローチェの後ろに・・・

クローチェとお揃いの黒をメインカラーにし、星や月、ウサギとリボンをあしらったベビードールを着て、恥ずかしいのか、顔を手で覆っているフィクとルナーリアがいた。


「・・・こういったのは着なれてないから、とてつもなく恥ずかしいです・・・」

フィクは顔が真っ赤。対するルナーリアは、顔面蒼白だ。

「・・・な、なんだか、こういうヒラヒラで・・・布面積が少ないのは・・・こ、心もとないです・・・お、落ち着かない」

「2人とも、素敵ですわ!似合ってますよ~!」

「えぇ、ルナーリアさんがスタイルが良いのは知っていましたが、フィクさんも素晴らしい体型だったのですのね・・・」

クルレは思わずまじまじとフィクを見てしまう。

「フィクもルナーリアも、ゆるふわな三つ編み可愛いよ~」

リッカ達も2人の事を褒める。


「よぉ~し!パジャマパーティーの正装である、パジャマに全員着替えたわけだし!次は~ベッドだよ!」

クローチェは地面から魔方陣を出現させ、ベッドを召喚する。


棺のベッドに、乙女が夢見るひろ~い天蓋つきベッド。そして・・・部屋にギリギリの高さ、大きさのわさわさ~っと葉っぱが揺れる木だ。

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