記録7 勇者の事はどうにも覚えれない

フィクは仕事が一段落し、姫様の元へ向かっていると、数人の女性魔族たちと話しているクローチェを発見した。

「姫様、皆様、こんにちは」

「あら、フィクじゃない!」

「フィクー!ね、フィクも一緒にお喋りしよー!」

クローチェがフィクの手を取り、椅子に座らせる。

「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」

フィクは椅子に座ると、テーブルにばらまかれた勇者の写真が目にはいる。

「勇者の・・・写真、ですか?」

「そう、今、姫様に勇者リゼシオンのカッコいい所を説明してたんです!」

「そうそう、勇者リーゼントカット!」

「違いますって姫様!リゼシオン!」

「あぁ、そうだった~てへっ」

フィクは首を傾げる

「リゼ、シオン?」

「どうされたんです?フィク」

一人の魔族が聞く。

「あの、勇者の名前・・・リザシオン・・・でしたよね?」

数秒の沈黙

「あ・・・あぁ・・・そう、だった、ね?」

女性魔族たち、目が泳ぐ。

「あー、勇者リセット・・・」

「姫様、勇者リザシオンですよ・・・」

微妙な空気が流れる・・・

「おー!姫様、それと皆、何してんのー?」

クローチェたちの所へやって来たのはちびっ子化け猫だ。

「あ、化け猫ちゃん。今、勇者リゾットの話しをしていたの」

「姫様、勇者リザシオン・・・」

「あー!あの金髪の格闘家か!」

化け猫の言葉に首を傾げるクローチェたち。勇者リザシオンは、栗色の髪だ。

「化け猫さん、それって、この人の事?」

一人の女性魔族が一枚の写真を化け猫に見せる。勇者と一緒に映っている金髪に緑色の瞳の青年。

「あー、そうそうコイツ!」

「これ、勇者じゃなくて、勇者の仲間ですよ?」

再び数秒の沈黙

「ま、マジかぁ。てっきりコイツかと・・・え、もしかして隣にいる、この地味な奴が勇者?」

「そうだけど、地味って!勇者リゼシオンカッコいいじゃない!!」

「ちょっと、あんた、名前・・・リザシオンだってば」

「あ・・・」

化け猫は笑う。

「なんだ、お前、勇者の名前ちゃんと覚えてないのかよー」

「そっちにいたっては顔すら覚えてないじゃない!」

「まぁ、いいんじゃない?勇者は私たちの敵だし!顔は覚えた方がいいけど、名前は覚えてなくても問題ないでしょう?」

クローチェはクスクスと笑う。皆も、クローチェに連れて笑った。


「はっくしゅっ!」

リザシオンはくしゃみをする。

「おい、大丈夫か?風邪か?」

「ん・・・たぶん大丈夫」

「ククク・・・誰かリザシオンの事、噂してんじゃない?」

魔法使いがクスクス笑う。

「あー!魔王とかな!」

金髪の格闘家が豪快に笑う。

「魔王・・・か」

リザシオンはボソリと呟く。

魔王の娘、クローチェは今、どうしているのだろうか・・・

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