勇者、一目惚れ

勇者リザシオンは、仲間の治癒術で回復をし、安静にしていた。

「それにしても、リザシオン・・・今日のお前、変だったぞ。あんな攻撃回避できただろ?てか、なんか顔、赤くないか?熱でもあるのか」

そう言って仲間の一人がリザシオンの額に手をあてる。

「別に、熱はないと思う・・・」

リザシオンはそう言うと、ぼーっとしていた。

リザシオンは、さっきからずっとあの少女の事が忘れられなかった。

「クローチェ・・・」

自分より、小さく華奢な体、動きにくそうなフリルたっぷりなドレスを身に纏っていながら、あの俊敏な動き・・・そして、バトンの様に器用に扱う大斧。

夜空の様な漆黒の黒髪に白い肌、そして、ルビーの様な赤い瞳・・・

魔族を守ろうとする顔の表情、思い通りにいかなくて眉を潜めたときの表情、攻撃のチャンスを見つけ、笑みを浮かべたときの表情、どや顔で自分の名前を教えたときの表情、そのどれもが美しくて、忘れられない。

そして、思い出すたび、心臓が早く動く気がした。

(また、会いたい・・・今度はもっと近くで・・・って、何、考えてるんだ・・・魔族の、それも魔王の娘に・・・)

「あああ!クソッ!」

リザシオンは頭をワシワシとかきむしる。

「おい、リザシオン、突然どうしたんだよ?やっぱり、今日のお前、どうかしてるぞ」

「なんでもないっ!少し寝るっ!!」


勇者リザシオン、魔王の娘、クローチェに恋をしたのである。

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