第15話 なおさらだわッ!!


「助けて……?」


 何を、言っているんだ。

 いったい何を言っているんだ。この教師は。


「正確には助けんかい、だっただろうか。言い方など大した問題ではないが」


 助けてと言ったから。

 昨日、私がこの教師に発言にキレて意味不明に叫んだ言葉が理由だって言うのだろうか。あんな無茶苦茶に叫んだ言葉だけが理由だと言うのか。


 そんなしょうもない理由で助けようなんて気になるのか。


「ふ、ざ」


「ふざけてなどいない」


「じゃあ、なおさらだわッ!!」


 そういうことだろう。

 言いたいことがあるならもっとしっかり言えば良い。つまりは昨日の態度に対する嫌がらせというわけか。

 なんて暇なんだよ教師様は!!


「こちとらもう良いんだっての! 高校だって! そもそもが当てつけなんだ!」


 立ち上がって胸倉を掴む。

 同じ場所を頭突きしてやらなかったことに感謝すれば良い!


「適当な事言って、大事な事なんか見やしない! 自分の好き勝手だけ生きて勝手に死んだあの人に! あたしのお母さんにッ!!」


「ぉ、ぐッ」


「それだけなんだ! あたしが高校に行くのなんてそれだけなんだ! お母さんの墓にあんたが喜んだ高校なんてこんなもんだと言うだけのためなんだ!!」


 思い出すだけでも腹が立つ。

 お母さんとの思い出は全部が全部綺麗なものばっかりで。


「それをなんだ今更!」


 汚いもの、面倒くさいもの。

 あの人は全部遠ざけた。全部、全部を遠ざけた。全部見ようともしなかった。


「助けてと言ったから!? じゃあ助けてと言わなければ助けるつもりもないくせに! その程度なくせに! 邪魔してんじゃないよ! あたしの好きにさせなさいよ!!」


「ぐお、ご」


「悔しかったらなんか言ってみなさいよ!!」


 もっと前から。


「ふご、むぉ」


「ふごなんて言われてッ! ……ふご?」


 目の前の教師の顔が。


「ふごもッ! もぐぉッ!」


 しょぼんでいた。

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