第15話 炎の魔女ディア

森の中心に大きな岩崖に人が入れるくらいの洞窟があった。

この岩は特殊な結解が張られており人間以外の生物が近づくことが出来なくなっている。

そんな安全な場所にディアが放浪人を案内した。

中に入るとそこそこ広く気温も安定しており奥の壁沿いには藁がひかれ寝るのには困らない。

ディアは迷わず焚き火跡まで歩いて行き途中で拾った枯れ木の枝と火のついた木の枝をそこに放り投げた。

火は、枝から枝にじっくりと燃え移っていき徐々に洞窟全体を照らし出す。

ディアは辺りを見渡しながら頷いた。


「よしよし。ここはまだまだ使えるな」

「この洞窟に何度も来ているのか?」

「まぁな。長い森を抜けるのに一日強ぐらいかかるからなこの森に入るとここを利用してんだ。まぁ最近は巷の奴らから森の最短ルートを教えてもらってから

一日で森を抜けられっからあまり使うことはなかったけど」


そう言うと奥に溜まっている藁をゴッソリと端にどかすと大きな銀色の鉄板をむき出しにした。

鉄版の端には取っ手がありディアが手をかけ引き上げると

中には人がやっと入れるスペースがあり小分けされた袋が綺麗に並べられていた。

ディアは、中の袋を二つ手に取ると中身を開いた。袋の中には水と乾燥した保存食が大量に入っていた。


「まだ食えそうだな。よっし飯にしようぜ」


そう言うとディアが放浪人に向かって袋の一つを放り投げた。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


食事をする中話題として放浪人がここまできた経緯を説明した。

ンーナス町から砂漠を越えた話や森を抜けた先にある目的地の事を

サーナについては口にしなかったが

その話を聞いたディアは口を開く


「なるほどお前もクライアバル王国に行く途中だったのかじゃあ、

あたしはたまたま助かったということか」

「そうなるな」


放浪人は乾いたカンパンのような食べ物を口に入れる。


「ついてないことばかりだけど変なラッキーってあるんだな」


今までいやな事ばかりだったのだろうかディアが肩を落としてうなだれた。


「ディアさんは何故森に?」


ログの言葉にディアは顔を上げた。


「あたしか?それはお前らと一緒でクライアバル王国に行くというより帰る途中だったんだ」

「帰ると言うと、砂漠地帯で用事でもあったのですか?」

「まぁ、ちょっとなたいしたことねえけど」


何か言いずらそうな顔をしながらゴホンとワザとらしく咳ばらいをする。


「それにしてもおまえ強いな。不意打ちとはいえオオクモトカゲ蹴り飛ばすなんて」


まあなと放浪人は少し誇らしげな顔をしながら再び食事に手を伸ばした。


「だが、お前もあれだけ怪我をしながらよくあそこまで対抗できたな」

「まぁな。あたしも不意打ちさえ食らってなければなんとかなったとおもうんだけど。情けねえ。くそ!」


怒りに手を握りしめるディアに合わせるように急に炎が強くなり火の前に温めておいた食べ物が焦げ放浪人は残念そうな顔を浮かべた。


「焦げた…」

「あっと悪い悪い」


放浪人の声で我に返りディアは手を放す。すると炎の勢いはみるみる鎮まっていく。


「それは魔法か」

「ああ。火の魔法……いや、炎だなあたしの場合は、得意なんだよ呼吸をするのと同じ位簡単にだせるぞ」


ディアは、お手玉するように炎の塊を宙に投げた。


「熱くないのか?」


放浪人の質問にディアはキョトンとしたをする。


「おまえ知らないのか?属性魔法に適性がある奴はこれくらいのことは平気だぞ」


ほらと火が灯る薪の中に恐れることなく手を差し込むと燃えている木の枝を抜き見せつけた。その手は火傷し痕跡はない。


「びっくり人間だな」


放浪人がつぶやくと


「お前が言うな」

「マスターは言えません」


ディアとログからツッコミをもらった。


「ほらお前も試してみろよ」


ディアが焚き火に手を入れるように指さした。

放浪人は少し考え意を決してログのついていない手を差し込んでみた。


「あつ……くはないな」


そういい火の中から燃えるている枝を取り出して見せた。


「熱いのは感じるが、痛いとかいう痛みはないな。いや、少し痛みはあるな」


枝を放し手を確認するもそこには火傷の後もない放浪人にディアは嬉しそう笑う。


「なんだおまえも火の魔法が使えるのか」


ディアの言葉に放浪人は首を横に振る。


「魔法はまったく使えない」


そうこの世界に来てサーナの魔法を垣間見た時。歩きながら魔法を出そうログが知る限りの魔法のやり方を試してみるも全く何も出なかった。


「あーていうことは適性だけか、もったいないな。武術の才能はあるから役に立つと思うんだがな」


残念そうな顔をうかべるディアだが何かおもいついたように手をたたく


「だったらセインエイツ学園に入学したらどうだ。おまえならきっと合格できるぞ」


聞き覚えのセインエイツという言葉!


「なんだセインエイツ知ってるのか」

「一応は在籍してるからな」


「一応?」放浪人が首をかしげる。


「ある事情で今休学中なんだ。休学といってもいつ戻れるかわからないが」


そういいながら誤魔化すように手に持っていた水を一気に飲み干した。


「まっセインエイツはクライアバル王国から少しかかるが行く価値はあると思うぜ」

「もともと行く予定だったがな」


ディアは首を傾げた。


「だったらサラーガから舗装された道をいけばよかったんじゃないか。休憩できる町も多いしあそこ道は今かなり安全地帯のはずだ」

「まあ俺にも事情がある」

「そうか、お互い事情がある同志だな」


金を返すためにクエストの多いこの道を選んだなんて言えるわけもなく。


「まっ無事入学できればいいな。陰ながら応援する」


ディアは笑いにつられ放浪人も笑い枝に燻製肉を突き刺し焚き火で温めた。

焚き火がゆらゆら揺れている。

放浪人はこの火をみているとあの日を思い出す……そうあの修行の日を懐かしさを感じる思い出。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


修行時代


神に突然言われた言葉。


「地獄にいけ」

「ええ!」


突然言われ男は困惑する。


「なぜですか!?俺なにかやっちゃいました?」

「馬鹿もん!修行だ!」


神が足元に向かって手を振り下げると床に真っ赤な映像がうつしだされた。

そこには頭部から角の生えた鬼がワラワラと徘徊し血だらけの人間が苦しんでいる姿が目に映るまさしく地獄!


「みえるか。あれが地獄よ」


悲惨な映像が目に入る度に魂が焼かれる感覚が男を襲う


「貴様は前よりかは、毛が生えたくらい強くなった。だがそれだけではダメだ!

ということでワンステップ修行のレベルを上げる」

「どうみてもワンステップではありません!」

「知ってる!だが貴様は最近修行環境に慣れてきてだらけが見える!地獄に行き、

もっと鍛えなおさんか!」


神は男の肩を力づくで掴み持ちあげた。

男は首根っこを掴まれたウサギのように小刻みに震え白目を向きながら口を開く


「それでいつまででしょうか…」

「うーむ。人は限界に近づけば近づくほど成長するだからお前を行かそうと判断した。だが!その発言は甘い!甘すぎる!とりあえず地獄を一周でも三週でも回って心も鍛えてこんかぁ!」


男は神の手により地獄に叩き落とされた!

最初に落ちたところは炎が燃えさかる灼熱地獄!


「下の火と上の火合わされば炎よぉ!諦めず!気合で乗り越えてみせい!

鍛えた貴様ならできる!できるぞ!ウハハハ」


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


まさか適性があるわけではなくこれのせいなのではと考える放浪人であった。

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