第15話 アノカタ帝国への逆襲



私は、変身ヒロイン、キザキ・アカネ二十三歳!(稀崎明音)


正義の味方として、日常をクズみたいに生きるんだと決意した『わるもん』カップルを自宅に軟禁している女の子!飼い主の責任として、きちんと彼らに名前をつけてあげたわ!!


その後変身ヒーローたちの、月いちミーティングでインターンシップの学生がやってくるって話をされて、愕然!価値観の違いを痛感したわ!

でやってきた、日常も正義もまるごとインターンシップの学生がとことん規格外の子…

胃が痛くなる十五話…。みんな!波乱含みの日常インターンシップ続編よ!




シローズちゃんがこの会社、ヤバイすね!とあたりを見回しながら言った。


何がヤバいんだろう…

「そうなの?」と言うと、彼女はあたりを気にしながら、はい…みんなすごくあの人を嫌っています!!

そう言うと仁王立ちで渡辺部長を雄々しく指さした。


「こらっ!!人を指さしちゃ…」と言った時に渡辺部長と目があった。


「おい!稀崎!インターンシップ の業務報告書は、きちんと出せよ!」


「私は、インターンシップとか言う名前じゃありませ〜ん!白水真代っていいま〜す!」


私は、シローズちゃんに飛びついて口を塞いだ。


彼女はその手を振り解いて「ダメですよ!仕事中にジャレつかないでくださいっ。あとであとで!」と言ってその瞬間にお昼休みになった。


私はトレンチさんにシローズちゃんと一緒に連れられて、ご飯に行くことになった。


テーブルに着くなり、トレンチさんはすぐに本題に入った。

「メモ!!メモ出して!!白水さん!!箇条書き!」


そう言うと、指を追って数えるようにしながら項目を話していく。




「ひとつ!社内の人間に役職名つけて電話取り継がない!

ふたつ!『渡辺部長ですね』はバツ!『渡辺ですね』か、『部長の渡辺ですね』ならマル!

みっつ!部長に話しかけるときは「今お時間よろしいですか」と確認!

よっつ!営業所内では走らない!

いつつ!電話するとき、片肘ついて電話しない!

むっつ!会社から電話がかかってきたときは、アインシュタイン食品は弊社!かけてきた会社は御社!と言う!

ななつ!個人携帯に電話転送はしない!!」


と、そこまでまくし立てて、シローズちゃんに両方の手のひらを向けて人差し指を立てながら、もっと言いたいことを探しているように目の前で漂わせるような仕草をしながら…視線を落とした。


それと…。


「座るとき、おひざ!閉じて!」


そう一気に喋ると、ぽかんとしているシローズちゃんは、おそるおそるトレンチさんに「あの…パフェ頼んでいいですか?」と訊いた。


私とトレンチさんは、二人して頭を抱えた。

きっとトレンチさんは「なぜこんな子をインターンシップ で弊社に来させているのだろう」と思っているはずだ。


「弊社は決まり事が多いんですねぇ〜びっくりぃ〜!」

「語尾伸ばさない!!部長はそれを一番嫌うんですよ!!」


「弊社って、部長帝国なんですか?きっと、ボルディモートみたいな感じで『 あ の か た 』とか言わないといけないんじゃないですか?永遠に呪われますよ!」


「ボルディモートじゃないですけど、部長の噂話を外でするのもだめです!」


シローズちゃんは、大きく深呼吸するように空気を吸い込み、ぶはぁああと、盛大にため息をついて


「部長帝国に逆襲することが、私のミッションかもしれませんね…愛する先輩たちを、これほどまでに怯えさせる部長は悪でしかない気がします…」と言った。


イノシシ モードだ…と、私はその場で一言も発することができずに、ただ座っているしかできなかった。


そして、注文もしていないのに、ランチが三つ席に並べられ、私は「まだ…」と言うと、トレンチさんが「電話で私が先に注文しておきました、話を瞬時に開始できるように!」と言う。


その言葉を無視して「弊社にパフェもくださーい!」とシローズちゃんが言った。


私は、この子はどんなおうちで育ってきたんだろう…と、考えていた。どんなお父さんとかお母さんとかに育てられたら、こんなに天真爛漫に育つんだろう…?と考えていた。


シローズちゃんが、弊社と言ったので、みんなにパフェが並べられた。「あー…。弊社ってカタマリのことなんだ…」と、呟いて、スプーンも使わずにパフェの頂上からかぶりついていた。

「御社のパフェは、めちゃくちゃ美味しいですね!」そういって、満面の笑顔。


トレンチさんは「悪い子じゃない…悪い子じゃない…」と繰り返し自分に言い聞かせていた。


シローズちゃんは「あのかた帝国万歳!」と言いながら、口の周りをクリームだらけにしてパフェを高々と掲げて笑った。


「私は、先輩方の味方です!倒しましょう!あのかた帝国を!」と不適に笑って、私たちは何を言いたいのかわからなくなってきていた…。



「インターンシップ って、歓迎会とかしないの?」

そう言ったのは、私と同期のルコさん。


「しないよ、だって一週間くらいだろ?親交を深める暇もないと思うよ」そう言ったのはヨウタさん。



シローズちゃんは、ガッチャンガッチャンと派手な音を立てながら、会議資料を特大のステープラーでまとめながら「わたし歓迎会やりたいでーす!」とステープラーから目を離さずに言った。


「うちわでやろうよー」とルコさんがモニターを眺めながら言う。

シローズちゃんが顔を上げて「ライングループあとで招待します!不肖白水真代!会場手配させていただきます!」とニヤリと笑って言葉遣いとは裏腹な低い声で「無礼講でお願いしますにゃん〜!」と言った。


後に、インターちゃん歓迎会という名前のグループLINEをみたら見慣れない『渡辺隆文』という名前の猫の写真のアイコンが…。


部長の名前だった…。


部 長 … く る の ? ね ぇ シ ロ ー ズ ち ゃ ん … ?

だれからおしえてもらったの?部長のLINE…。



シローズちゃんは、私と目があうとニヤニヤして、ふうぅうううーーーーんと、得意げに鼻息。


無言で口の形だけで(ヤリマスゼ)とつたえてきた。

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