第53話 技術とレベル

「俺様が相手をする」


 思わず俺様は言葉に思っている言葉を発していた。

 七つの大罪の美少女達と冥王と玄武は不思議そうにこちらを見ていた。


 

 そして1人また1人とそれぞれの敵を倒し始める。

 皆がそんな、中ボスに俺様がやられる訳がないと信じてくれているみたいであった。



 透明な腕を展開させると、9本の魔剣と1本の竜魔人の剣がネニョールの体を捕えた。

 ネニョールは紫色の皮膚をしており、腕が4本ある。

 不気味な所は瞳を包帯でぐるぐる巻きにしているところだ。

 奴にはこちらの事が見えていないはずだ。



 だが10本の魔剣と竜魔人の剣は弾かれていく、気配そのもの、動く物音、空気の波動。

 そういったものを皮膚で感じているいるようだ。



 これはレベルだからと言って油断はできないと悟る。



 俺様は色々なモンスターと敵と戦っていく中で、色々な事を学んでいった。

 この世界には沢山の力があり、その片鱗に触れているのはまだ二つくらいだ。

 まずはレベル。これは威力などに影響が及ぶ。

 そして技術、これはレベルとは関係がなく応用できる。



 今のネニョールという中ボスモンスターがレベル2000でレベル13000の俺様に相対している理由だ。奴は技術が半端ではないという事だろう。



「これは楽しめそうだぜ」



 魔力操作の腕輪が装備されていることを認識する。

 それは透明な腕輪で、よく装備しているか忘れてしまう事がある。

 それが装備されていると認識して、次にやった行為は瞬足神の弓を背中から取り出す事であった。



 現在俺様が同時に出現させて置ける限界と安全地帯は透明な両腕10本だ。

 5本の透明な腕を魔剣と竜魔人の剣に当てる。

 次に5本の腕でもって瞬足神の弓を握りしめる。



 力のバランスを取らなければ、相手を射抜く前に自分の弓が崩壊する。

 力だけではいけない、そこには技術という力が必要とされているのだから。



 ネニョールはこちらを見て、かっかっかと不気味な笑い方をしている。

 奴はこちらの事は見えていないはずなのに、まるで俺様の鼓動を聞いているかのようにゆっくりとゆっくりと呼吸をしながら近づいてくる。



 俺様はそのような事など気にする事はしない、ひたすら弓を構える。

 絶妙な技術の差、息を止め、弓を引っ張る透明の手を解き放つ。

 矢はまるで光の残像を残すように真っ直ぐに突き進んだ。

 狙いはまっすぐに的に的中した。

 そこはネニョールの額であった。



 ネニョールの額は爆弾のように爆発すると、ゆっくりと後ろにネニョールはぶっ倒れる。

 周りを観察すると沢山のモンスターの死体が転がっていた。

 臭いはしなかった。ネニョールの死体の後ろには巨大な槍が突き刺さっていた。


 

 俺様はゆっくりとゆっくりと突き進む。

 そして槍を引っこ抜いた。次の瞬間に槍が消滅すると。

 地響きを建てて海その物が消滅していく、残ったのは巨大な広間と階段のみであった。

 モンスターの死体は悲しく転がっていた。

 蒼龍の背中で引っ張っていた海水のオーブと台座は消滅していた。


 モンスターだけでも500体以上はいただろう。

 その死体が無数に転がっている光景は、まるで墓場を連想させてしまう。


 仲間達はこちらを見るとそれぞれの反応をしてくれて、俺様は階段に向かって一歩また一歩と突き進んだ。



 あの海そのものが幻惑または現象を引き起こしたのだろう。それだけとんでもない不滅のダンジョンなのだろう、沢山のモンスターが封印されているのだから。



 階段を下りながら、仲間達はだんまりを決め込んでいた。

 俺様は僕に僕は俺様にそして今は僕になっている。

 これは多重人格とかではなくて、考え方の違いというものであった。

 多少の記憶の差はあれど、このモードチェンジのおかげで色々と助かっているのも現状だ。



【さっきのネニョールはいなかったはずなのだが、一体どういう事なのだろうか? わすの記憶違いだろうか? レベルに影響されず技術でこちらに攻撃してくる。そのようなモンスターが不滅のダンジョンにいたのだろうか?】


 

 蒼龍の問いかけに答えたのは玄武だった。



「それはわしも思っておった。わしと蒼龍と白虎と朱雀でこのダンジョンを攻略したときは、あのような技術専門の奴はいなかったはずじゃ」



 その場がダンマリになる。



「これってあたし達とそっくりじゃない? いじられた。または作られた。という事は謎多き気まぐれ魔王の存在が危ぶまれるわね、まったく、めんどくさい事しますわね、嬉しくないんだからね」



 ここでもツンデレかと僕は思いながら。

 その意見には賛同だった。



「今回ばかりはサリィーの言いたい事は的中していると思う」

「何よ今回ばかりって、いつも馬鹿みたいじゃないのさ」

「そういう訳ではないさ、今回だけ的中している確率が高いのじゃないかって事」

「だからそれじゃあ、いつもぎゃーぎゃー騒いでいるバカじゃないのさ」

「そんな事はない、サリィーはいつもにこにこして的中しない事を恥ずかしげもなく呟くのさ」

「は、はずかしいいいいい」



 サリィーが真っ赤になってゴーナ姉さんの後ろに隠れている。



「あらあら、リュウケンさんはあまり言いすぎてはいけませんよ、さて、サリィーの言う事も一理あるので、気を付けて進みましょう、さて次の場所はどのような所でして?」



【そうだったな、わすの記憶だとまっすぐに突っ切るだけ、壁にはオーブがあり、それを引っこ抜けば完了、後ろからは数えきれないレベル2000級のモンスターがやってくるから気を付けてのう】


「よし、みんな準備をするんだ」



 僕は咄嗟に叫び、僕は俺様に俺様は僕に、今は俺様になった。

 俺様の背中には陣取るようにベリーがおり、がっちりとおんぶしている。

 蒼龍の背中にはボンバー魔王がいる。

 ちなみに色々とモンスターを倒していたら、蒼龍もボンバー魔王も力を取り戻してきているようだ。



 しかしボンバー魔王の記憶は戻らないようだ。

 ボンバー魔王が吸収の魔王の記憶を取り戻したらどうなるのか、少しめんどくさい事になる。



 蒼龍がボンバー魔王を背負って走るので問題ないとして、階段の一番下に到達しようとしたまさにその時。


 階段がばたんと折りたたまれていき、次から次へと天井へと階段が吸い込まれていく。

 後ろに控えるレベル2000のはず?


「蒼龍さん、これはどういう事ですか? 鑑定眼鏡をしたら、レベル5000ですけどおおおおお」

【うそおおおおおお】



 かくして沢山のレベル5000モンスターと追いかけっこをする事に。

 目指すは一本道の果てにあるオーブを壁から抜く事だった。


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