第50話 不滅のダンジョン攻略開始
「これはなつかしき、海の底に海水のオーブがある。それを取ってくるのだが、普通の人間だとすぐに窒息死する。わしは人間の姿では長くは潜れない、じゃがタートルマウンテンになれば可能かもしれないが、蒼龍はどうじゃ?」
「わすは無理だな、誰かいないかのう、あの時は白虎が潜ったからなぁ、あいつはなぜか長く潜れたんじゃ」
その時1人の七つの大罪のメンバーの嫉妬が手を上げた。
レイディーはびくびくしながら、恐怖の声を上げそうになりながらも手をあげるのだ。
「うちが行きます」
「そ、そうか、お主魚人族だったな【嫉妬】のレイディーよ」
「はい、でもすごく怖いです、モンスターがいたらすぐに死ぬかも、だからリュウケンにも一緒に来て欲しいです」
「じゃがのうあやつは人間で」
「うちは近くにいる人を水中でも呼吸が出来るようにすることが出来ます」
いつもなら怯えながら話をしているレイディーだが、今のレイディーは歯を食いしばって、一言一言ゆっくりと発言している。これがレイディーなりの強くあろうとする気持ちならば、それに答えてあげないのは違う事だと僕は自分を奮い立たせた。
「それなら僕も行こう」
その場の全員が頷いた。
それしか方法がないのだから。
魚人の姿から変化していくとそこには人魚そのものが居た。
水色の人魚は手を握りしめてくれた。
その手はぺたぺたとしていてとても気持ちがよかった。
次の瞬間、僕とレイディーは深い海の底へと泳ぎ出した。
レイディーの背中に跨って、まるでバイクに乗るように乗っている。
「絶対に離れないでください」
「もちろんだ」
海の中で話をする事に少し違和感を覚えつつも。
目と鼻と口から水が入ってきても。
全然平気だった。
まるで透明なシールドを張っているかのようにに口から沢山の水が入っても、ちゃんと口から出て行くし、海の中に含まれる微量な酸素が生きる為の呼吸となってくる。
目の前には沢山の魚が泳いでいる。
どれも見た事がない魚ばかりであった。
獰猛なモンスターのような魚もいるにはいるが、海の中で最速スピードと呼ばれる人魚には勝てないようだ。
この広い海の中から海水のオーブを探すのは至難の技だと思う。
それは何も無かったらの話だ。
目の前には通路のような物が出来ている。
まるで神々にお供えをするような道だった。
「あそこに行ってみよう」
「了解」
レイディーは泳ぎ続ける。。
海面に向かって泡が吹き荒れているだろうが。
きっと仲間達なら僕達の無事を信じてくれるだろうと思っている。
波の波動が顔面に押し寄せる。
どんどんと胸が苦しくなっていく。
これは一体どのような原理なのだろうか?
昔に村で見た海の本に書かれてあった事。
それは水圧であり、ある程度の海底に達すると人間の肺や内臓では制御しきれない領域に達すると言われている。
つまりこれ以上潜ると僕は死ぬのだろう。
レイディーは平気そうだ。
恐らく魚人族または人魚族は深い海底でも生活が出来るような体の構造なのだろう。
物は試しとスキル【肉体強化】を使用する事にした。
すると不思議な事に圧迫感が無くなってくる。
「レイディー15分に到達したら僕は死ぬ」
「はひいいいいいい? それはどういう事なんですか?」
「人間の体は海底深くに潜れるようになっていない、今肉体強化を使った。それは15分までだ。それを超えたら僕は死ぬ。だから15分以内に見つけるぞ」
「了解しました」
僕達は必至に探した。
通路は永遠に続いていた。
ゴールがないのは非常にきつい話だった。
そして何より、通路に巨大な岩が立ちふさがった。
一体なぜそのような巨大な岩が目の前にあるのだろうか?
絶望が頭をよぎった。
だが諦めていないのはレイディーだった。
彼女は杖を構えた。
その杖が普通ではない事に今頃僕は気付いた。
「これは【海の誘惑】と言う杖なのです。海には沢山の誘惑があります。その誘惑の数を上げている暇はないので省きます、【水亀鉄砲】を使用させていただきます。水が亀のように発射するという意味らしいです。リュウケンはうちが守ります」
レイディーが断言すると。目の前の岩に向かって大きな水の亀のような塊が飛んでいく。
それが岩に激突すると沢山の瓦礫を散らして、吹き飛んだ。
まるでモンスターが岩を破壊したようなこの状況に僕は目を瞬かせた。
それで終わりではない事は知っているけど。
それでもレイディーがここまで逞しい姿を見せてくれた事が僕にとってとても嬉しい事だった。
するとふわふわとい浮いている物がある。
それがオーブで、慌ててレイディーはその近くまで僕を運ぶ。
僕は海水のオーブを手に入れる。
これはレイディーと頑張って得たものだと思った。
残り2分となった。
「時間がない、早く上がってくれ」
「分かりました」
レイディーは凄い加速力をもって、人魚の力を使い続けた。
地上に出る前でに1分とかからなかった。
地上に出た瞬間、後ろから数えきれない海のモンスターがこちらへ真っ直ぐにやって来る。
海岸までまだまだある。
「急げ、後ろかくるぞ」
「大丈夫です。はぁ、いっきますよー」
人魚は海面を泳ぎ続ける。
人間なら泳ぎ方によって呼吸が決まるだろうけど、レイディーにはそんな事は関係ないのだ。
ひたすら必至で泳ぐのみ、呼吸は海の中に含まれる酸素でなんとかなる。
後ろからやってくるモンスターが狭まってくる。
僕が出来る事としたら。
透明な手くらいだろう、
僕は両腕を失っているのだから
先程から自然に使っている透明の手。
きっと仲間達も違和感がないから突っ込まないし、
認識もしてこなかった。
だが今こそ魂の手こと透明な手を操作する必要がある。
現在透明な手でレイディを抱きしめている。
それが無くなれば手は離れ、僕は死ぬだろう。
海の中では戦えないのだから。
海岸まであともう少し、僕はある賭けに出る事にする。
透明な手を放す。
空へと吹き飛ぶ僕、海面が見える。レイディーがこちらに気付かずまっすぐに泳ぐ。
そのスピードは僕がいなくなったおかげでさらに早まる。
僕は海面に着地する前に、透明な腕を大量に伸ばしまくる。
海岸に手がつくと、そこに引っ張る。
だがモンスターが噛みつく。
それを別な腕で払い、
それでも必至に海岸に向かう。
風は強い、
なぜこんな所に風があるのか、疑問に思いつつも。
僕は全身を噛まれながら、海岸に血まみれになりながらも立ち続けている。
レイディーはこちらを見ると悲鳴をあげ。
僕に抱き着く、
それを退けながらベリーが走ってやってくる。
その場の全員が騒然となった。
それでも意識を失う事だけはしなかった。
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