第29話 国王と面会

 僕達が最初に向かったのはミリーシャ王国の冒険者ギルドでもなければ、国王様と面会しに行く訳でもない、七つの大罪達を満足させなければ、僕は主として失格だ。



 なのでドーナツを食いに行きました。



 ドーナツのお店は【デリシャスドーナツ店】という所に入った。

 人が結構沢山いるが、並ぶ事は無かった。

 なぜなら店員さんがベテランのようで、次から次へと注文を取り、即座にドーナツを箱のようなものにいれて渡してくれるからだ。


 後はそれを店内で食べるもよし、持ち帰るもよしという事で。


 現在僕達は2個のテーブルを占拠して、

 ドーナツ試食会と言わんばかりに、

 ドーナツをがつがつ食っていた。


「うまーですわ、なによリュウケン、あなたには上げないんだからね」

「いえ、僕の分はありますので」


 憤怒のサリィーは頬っぺたを膨らませながら、がつがつ食っている。

 女性として問題があるぞとツッコミたいが、集団リンチのターゲットになりそうなので止めておいた。


 暴食のネメと傲慢のルシュフと嫉妬のレイディーと強欲のゴーナと色欲のサキュラは無言で食いまくっている。よく聞くのが美味しすぎる食べ物だと無言になるという迷信があるが、


 どうやらあの迷信は本当のようで、

 彼女達は多種多様なドーナツを口に運んで、

 女の子らしい幸せそうな笑顔を浮かべている。


 一方で僕のお腹に陣取るのは怠惰のベリーだ。彼女は小人族らしくもさもさと口を動かして食べている。牛乳を飲んで、にかーと笑っている。


 まるで幼女をお世話している感じがした。


 いつもなら他の女性陣はベリーだけずるいというのだが、

 今回ばかりはそんな事を言っている暇がないとばかりに、


 こちらの事を意識から除外していた。


 以外なのは冥王と玄武が無言で食べている事、

 冥王はドーナツをブラックホールのような口に吸い込んで食べまくっている。


 玄武は老人なのだが、喉に詰まらせながら、食っているので、死ぬのではないかと気が気ではない、


 ドーナツタイムは1時間で終了した。

 次に僕達が向かう先は国王の謁見であった。

 今の時間帯は国王が暇か暇じゃないか問題ではない、

 これはランク外緊急クエスト、国王とて無視は出来ない。


 そう思って皆で歩いていたのだが。


「それにしてもあのドーナツは旨いなぁ、あんなものを食ったのは初めてだ」

「そうじゃのう冥王殿もあの美味はすごかったか」

「爺さん、喉に詰まらせて何度か昇天しかけたよなぁ」

「ふ、そう簡単には死にはせんぞ冥王殿」


 冥王ブランディ―と玄武がにこにこ和みながら話していると。


「まったく何で怠惰のベリーだけリュウケンの膝に乗ってまるで子供のように扱われているのよ、年齢はあたし達と同じです事よ?」

「憤怒のサリィーこれはベル様の特権、ベル様が小人に生まれたから可能、なら憤怒のサリィー小さくなる? 出来るの? その貧乳がもっと小さくなるわよ」

「きいいいい、ベリーお仕置きが必要ですわねぇ」

「それはあなたのことね」


 サリィーとベリーが白熱している間。

 ルシュフとレイディーとゴーナ姉さんとサキュラは精神的に別世界だった。


「それにしてもあのドーナツすごく美味でしたわ、いつかドーナツを一日中食べていたいですわ」

「はわわ、あれはすごーくすごーくおいしいのです。王子様もがっついていたのね」

「あのような魅力は人生で初めてなのよ、あのかりっとしてさくさくはおいらとしてたまらなくてすごく包み込みたいのです」

「あたしも感激したよゴーナ姉さんが幸せになるのも分かるよ、うん、最高なるわっかだねぇありゃ」



 皆がそれぞれの感想を述べながら、

 僕達は国王の城に到達していた。

 城下町はとてつもなく広く、ミリーシャ王国が繁栄している事を伺わせる物があり、


 スラム街や乞食が1人もいない所は、この国の素晴らしい所だろう、

 誰も飢えさせず、誰も苦しませず、家のない者を1人も作らせない政治を行っているのだろうから、


 城下町を抜けると、目の前に巨大な門が出現する。

 それこそが城だ。

 城は何階建てまであるか分からないほど複雑で立体的だった。


 櫓は10個以上はあり、

 そこから沢山の兵士が見張を務めている。


 兵士はこちらを見ると頭を下げる。


「リュウケン様ご一行ですね」

「そうです」

「紹介状は国王様に届いております。緊急でお会いになるそうです。こちらへ付いてきてください」


 ここまで対応が早いと僕としては感激を覚えている。

 元々僕はどこにでもあるような村の村人であった。

 それが仲間だと思ったあいつらに騙されて、

 全ては最悪な方向に向かった。

 しかし僕は力を手に入れた。


 紹介状だって先程の門兵に預けたのをどうやらちゃんと国王に渡るようにしてくれたのだ。


 兵士の案内の元、

 城の中を歩く、

 赤い絨毯が敷かれており、

 沢山の鎧が飾られている。

 高価そうな剣が壁に賭けられ、


 斧や槍もかけられている。


 廊下は入り乱れており、

 素人が入ったら迷いこむだろうと思う。


 階段を2,3階登り、なぜか階段を何回か下る事もある。


「すみませんね、国王は命を狙われる事があるので、城の中は複雑になっているのです」

「なるほど、すごい設備ですね」


「国王様は慈悲の深い方で、沢山の人々に人望があります。その分、別な国にしては邪魔な的でして、よく暗殺者がやってきます。その度に城に迷い込み、あの鎧のゴーレムに捕まるのです。国王様はとても優しい方で、捕まった暗殺者に沢山のドーナツを持たせて帰らせます。すると暗殺者はドーナツに感動するそうです」


「確かにあのドーナツなら暗殺者もいちころですね」


「食べたのですか?」


 兵士がこちらを訪ねてくる。


「はい皆旨過ぎて我を忘れていました」


「あれは引きこもり勇者が造ってくれたものです。引きこもり勇者はこの世界に来て早数年が経ちます。異世界の食べ物だそうで」


「そうだ。引きこもり勇者にも会いたいのですが」


「それは問題ありませんよ」


 そしてようやくたどり着く場所、

 先程の鎧たちがゴーレムだという事に驚きを隠せず、


 後は大きな門のところに2体の鎧のゴーレムが立っている。

 見たからにはただ立っている飾りなのだが、

 門が開かれると、

 そこには輝かしい緑が溢れていた。


 観葉植物なのだろう、

 国王の間には沢山の植物があり、


 1人のおっさんが玉座のような所に座っている。

 隣には妃なのだろうおばさんのようだけどとてつもなく優しそうな笑顔を浮かべている。


 国王の隣には長身の男性が立っている。顔はもはやイケメンだし、

 妃の隣には女性が2人立っている。こちらも美女そのものだ。小顔だった。


 どうやら男性が長男で、美女2名が長女と次女らしい。


 まさか家族オンリーで対応してくれる事に僕は感激を覚えていた。


「ここまで来ていただきありがとうございます。リュウケン殿、事情を説明させてください」


 国王が敬語を使ってきたので、驚愕しつつも、


 僕達全員は国王の前で膝を付く、

 そして国王の話が始まった。

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