第28話 ミリーシャ王国到達の引きこもり勇者

 魔界の森からモンスターを消滅させてしまった事を悲しい教訓として学ぶ事となった。

 案の定玄武さんが作ったリアルなマップは消滅した。

 魔法には持続時間なる物があるのだ。


 だから体の筋肉を強化させる魔法もいつかは効果がなくなってしまうのだ。

 その為に回復系の魔法使いを仲間にしたほうがいいのだろうが、

 それは玄武が代用してくれるだろうと信じている。


 そして今僕達の目の前には巨大な城が出現していた。


「す、すごいのよ、あたしのモンスター化よりとてつもなくでかいのよ、だからって負けたと思ってないんだからね」


 憤怒のサリィーがいつものツンデレ具合で告げると、僕の後ろに隠れる姿はとても可愛いらしいものだと思っている。


「きっとここには食べた事のない食べ物が」


 暴食のネメは率直な気持ちを述べたようだ。

 口から涎がだらりと垂れている何を企んでいるのやら。


「わたくしこのような場所は初めてですのよ、お嬢様とはああ言う所で過ごすというもの、いつか、お嬢様代表として住みたいものですわ」


 傲慢のルシュフはいつの間にお嬢様代表になってしまったんだ。

 1人で自分に突っ込むのであった。


「はわわわ、うちどうしたらいいの本当の王子様があの城には居るのよね、という事はうちの王子様であるリュウケンさんは王子様じゃない? 安心してうち、王子様は王子様、その資格がなくてもうちを助けてくれた王子様なのよ」


 嫉妬のレイディーは城にいるであろう本物の王子様の存在が気になる様で、

 先程から挙動不審になり、僕に抱き着いてきたりするので、

 僕は逃げたりすると、彼女は泣きながら追いかけてくる。

 これは何かの亡霊なのかと突っ込みたい。


「ぐーぐーサイコークラスの毛布を買って、ぐーぐー」


 怠惰のベリーはいつものように僕の背中ですやすやと眠っている。 

 先程の魔界の森に入った時は、別な人に運んでもらったが、

 合流すると即座に僕の背中にやってきた。


 僕の背中は彼女にとって良きベッドなのかもしれない。


 まぁ重たくないから問題はないのだが。


「まったく、皆さん落ち着きましょう、まずは街の中を冒険いたしましょう、皆さん、離れないようにね」


 強欲のゴーナ姉さんは皆が暴走して散り散りになって行くのを、その一言で集めて見せたではないか、

 やはりリーダーは大切なのだ。きっとモンスターボックス中ではクリエイトゴミスライムのキャプテンが仲間のもモンスター達を指揮しているのだろう、


 ボスモンスターではない初めてのテイムしたモンスターはゴミスライムであった。

 それでも結構なレアらしい、ゴミスライムは言葉を発する事を覚えた。

 そして仲間のモンスターを指示する思考を覚えたのだ。


 僕はクリエイトゴミスライムを信用している。


「それにしても城の遥か右にある。巨大な山から禍々しい物を感じるよ、ちょっと偵察してきていい?」


「だめだ。サキュラ」


 僕がそう告げると、彼女は頷いた。


「うん、分かった。こちらの存在をばらす訳にはいかないのでしょう」

「その通りだ。敵がこちらに七つの大罪の援軍が来たと思わせてはならない、なぜなら大群で仕留めようとするだろう、この国と合流する前に、ここから先はモンスターに変身しないでくれ、城の中でもだ。戦争が始まったら思う存分変身して暴れてくれ」


「まったく、そんな事は言われなくても分かっているさ、さぁ皆行こう」


 僕の右には冥王ブランディ―が立っている。


 そして左には玄武が立っている。


「まったく色欲はとても自由だからなぁ、その手あの手で男を篭絡するのだから」

「冥王は篭絡されたいのか?」

「いやオレは大丈夫だよじゃあ行こうか」

「そうだな、ただ問題があるとすれば」

「そうじゃのう、この仲間達には1人もミリーシャ王国に行った事がないという所じゃのう、わしにはうっすらと遥か昔、ここに来た記憶があるが、それも遥か昔で今では変わってしまったであろうなあl」


 僕は思う、  

 玄武の遥か昔とはどのくらい昔の事を言っているのか、

 数千年とか、数億年単位なのは疑いようがなかった。


 僕達はごく普通に歩き続けていく、

 そして到着した。

 それは巨大な門、

 近づけば近づくほど、城が巨大である事がわかる。


 城壁だって灰色の頑丈な石材で積み重なっているし、

 櫓だって無数にある。


 至る所から至る所を把握しているようで、

 こちらが城の城門に近づいている事はばれているらしい、


 城下町からは人々のにぎやかな声が聞こえる。

 どうやら民達の希望はまだ消えていないらしい、


 僕は知っている村で希望を失った人の末路を、

 彼らは生きているのに、生きていないのだ。

 ただそこに彼等はいるだけなのだ。


 そして絶望になった人はなかなか復活しない。

 彼らはただ食べてただで暮らす。


 いつか来る死をまつかのようにして、


 そのような事を思い出していたが、

 すぐに現実に戻ると、

 巨大な城門がゆっくりと開いていく、

 後ろには沢山の火とがいて、巨大な棒のような物を引っ張っている。

 それで城門が開くと、

 中から男性が出てくる。


 そいつはこちらにやってくると、

 白髪頭をかきあげると、

 おっさんくらいの男性だった。

 

「こんにちわ、今、魔王軍と戦争を始めようとしているのです。巻き込まれたくなかったら、別な国または街に避難する事をお勧めしますが」


「いえ、この紹介状を見てください」


 城門の門番らしきおっさんでありながら白髪頭の男性が、

 普通に紹介状を読み上げて行くと、

 先程から疲れ果てた顔から、みるみるうちに元気になって行く、

 そして彼は紹介状をポケットにしまうと。

 叫んだ。


「城門全開にしろ、希望の光がやってきたぞ」


 その発言は城門を開く為に棒を引っ張っている男達が希望の顔になっていく、

 どうやら紹介状には無茶苦茶な希望を抱かせる物が書かれてあり、

 そのせいで僕達はすごい期待されているようなのだ。


 僕は視線を感じたので、 城門をくぐり中に入る時、

 城を眺めた。城には窓があり、そこに髪の毛がぼさぼさのお化けのようなものが見えた。

 そいつはこちらと目が合うと窓を閉めた。


 恐らくあれが引きこもり勇者なのだろう、

 僕はただひたすら歩き続けた。

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