第23話 数億年ぶりの巨大な動く山

「今回のクエストは数億年ぶりに動く巨大な山です。討伐に参加する人は挙手をお願いします」


 僕は迷いなく挙手する。

 周りの冒険者達は1人も挙手しなかった。


 なぜだろうか? 

 冒険者とは困っている人を助ける為に命を賭ける物なのではないのだろうか?


「なぜですか、皆さん命を賭けましょう」


 すると受付嬢が容赦なく突っ込む。


「あんたはレベル12000なの、周りの人たちはレベル50くらいなの同じにしては可哀そうよ」


「そう何ですね、なら後は任せてください、みんな行くよ」


 七つの大罪の美少女達は相変わらずご飯に夢中で、今はステーキにはまっているみたいだ。


 暴食は周りの美少女達よりも沢山食っている。

 お金は異常なほどあるので問題ないのだが、

 僕の隣には相棒のように冥王ブランディ―がにこにこしている。

 少し気持ち悪く感じるも。


「って勝手に行こうとしない、こちらで握っている情報があるわ、ランク外冒険者と言えどもそれは聞いた方がいいわよ」


「皆行くぞ」


「人の話を聞けえええええええ」


「受付嬢、ヒステリックはいけないよ、牛乳を飲むといいぞ」


「てめーが原因だよ」


「てめーという人に失礼だぞ、受付嬢、君は1人の乙女として、村では淑女はもてていた。それでは婚活に悩むぞ」


「余計なお世話よ、まったく、こっちに来なさい、先程から食べまくっている7名の女子をつれてね、冥王ブランディ―さんは聞く耳あるのに」


「オレはリュウケンの言葉しか聞いていない」


「なんですとおおおおお、リュウケンさんとブランディ―さんの仲をBLと勘違いしている腐女子たちの魔法使い達がこちらを見ているけど?」


「そのBLとはどういう物なのだ。ブラザーロックの略なのか?」


「ある意味すごい略ね」


「相棒、きっとボクロックの略だぞ」


「もはや原型がないわね、いいわ説明してあげるわ。男同士の恋愛よ」


「ふ、愚問だ。オレと相棒の仲はラブではない、それよりも堅い絆で結ばれている」


 後ろで腐女子たちがきゃああとか悲鳴をあげているが、

 気にせず。


「それがBLだと思うのですけどね、まぁいいわ、さて、説明しましょう」


「おいお前らヒステリック女子が説明するから聞け」


「誰がヒステリック女子よ」


「先程からぷんすか、月のものでも近いのでは?」


「ふざけんじゃないわよ、ぶっ殺すわよ」


「皆戦闘準備だ」


「ここであんたらに暴れられたら冒険者ギルドは崩壊するわよ」


「どうやら冗談のようだ、皆は安心しろ」


 ぜはーぜはーと受付嬢が暴走している中、

 正確には僕が可笑しいのかもしれないが、

 もしかしたら僕にはコメディアンの才能があるのだろうか?


 先程から冒険者達が爆笑している。


「では改めまして説明いたします。今回のボスは動く山です。名前はタートルマウンテンです。亀系統のモンスターであり、数億年に一度動くとされ、どうやら今日が数億年の一度のようです。冒険者レベルはランク外とさせてもらい、沢山の冒険者で相手すれば倒せるかもしれませんね、しかし今回こちらにはランク外の馬鹿が一名いるのです」


「おい、相棒を馬鹿とは、この冒険者ギルドを吹き飛ばすぞおおおお」


「ぎゃあああ、落ち着てください、その闇の塊をおおおお」


「がぶ、がぶがぶ、やっぱりこの闇の塊は美味しいぞ」


「てめーなに食ってんだよ」


「皆落ち着くんだ。受付嬢の表情が怖いぞ、知ってるか、女性が切れるとモンスターになるらしい」


「相棒、それは本当なのか」


「ああ、母ちゃんが魔物になって父ちゃんをぼこぼこにした事がある」


「お、恐ろしい」


 受付嬢はごくんと生唾を飲み込んでこちらを見ている。


「ふう、落ち着いて、落ち着くのよ、では、避難警報を」


【ぎゃああああ、巨大な山がすぐそこまで】


「てかはえーわよ、ミディーさんはどこいったのよ」


「かつ丼もういっちょお願い、もうこの街は滅びるんだよ、ぎゃはははは」


 ミディーさんは壊れていました。


「ミディーさんは逝ってしまったようです」


「いやいや生きてるぞ、かつ丼食ってるぞ」


「あの目を見なさい絶望の瞳よ、つーか先程の目撃者はぎりぎりまで何してたのよ」


「お酒を飲んでいたようです」


 受付嬢の助手がやってきて告げている。


「あんの目撃者目、ではランク外のリュウケンさんにお願いいたします。ちなみに冥王さんもランク外冒険者ですから」


「では皆、受付嬢から御許しがでた。ぼっこぼこにしてやるぞ」


「まだデザートがあるからあんたら2人でなんとかしなさい、淑女は沢山のデザートを食べるのですわ」

「どうせ雑魚でしょタートルマウンテンなんか馬鹿みたい、あたしをこき使おうなんて百万年早いわよ」


 ルシュフとサリィーが発現していると、

 僕は彼女達の熱心な食いっぷりに感動した。

 ご飯を大事にするその気持ち、両親によく指導されたものだ。


「うん、分かった。みんなはご飯を食べてくれ、僕と冥王でなんとかしよう」



「なんとかなるかーーーい」


「どうした受付嬢よ、敵はそこまで迫っているのだぞ」


「あんたが馬鹿だからでしょ、タートルマウンテンはランク外、あんたらと同格なの、それを七つの大罪抜きでやるの?」


「やるぞ、なぁ相棒」


「そうさ、冥王の相棒よ」


「もう逝ってきなさい」


 受付嬢はグッドポーズをしながら、


 僕と冥王を見送りだした。


 2人は外に出る。

 ルンデウスの街のすぐ近くには、

 巨大なタートルマウンテンがゆっくりと歩いている。

 その姿ほぼ巨大な山そのもの、


「このルンデウスの街ってすげー問題が起きるよな、なんか僕達がここに来てからな気がするけど」


「オレは相棒と戦えれば満足だぜ」


「では僕もモードチェンジといこうか、ふ、俺様は燃えてきたぜええええ」


「気になっていたのだが、相棒は僕と俺様を使い分ける事により自らの気分を変更させているのか?」


「ふ、愚問だぜ、そういう物だ。いいか相棒気分は気分だ」


「意味不明だぞ相棒」


「あのめちゃくちゃ巨大モンスターをどちらが倒すか、勝負だぜ」


「ふ、それこそオレに聞いているのか? オレはランク外の冒険者、このランク外冒険者ってのかっこいいよな」

「それは俺様も感じるぜ」


 現在の俺様は軽装鎧を身に着けている。

 一方で冥王は軽装備を身に着けている。

 冥王の方が軽い素材であり、

 こちらは鎧になっているので、少し重たくなっている。


 2人の防具が似ているので、

 俺様としては少し親友が出来た気持ちになる。


 美少女だらけの仲間達に加わり唯一の1人の男子の仲間に、

 俺様は感動を覚えている。


 冥王の武器は毒毒の剣に錆色の剣だ。

 俺様と明らかに違う所は、

 彼には2本のツノがある事だ。


 俺様と冥王はルンデウスの街の門に立っていた。

 それも門の頂上にだ。

 目の前にのっそりとやってくる巨大な山のような化け物。

 それに向かって、2人はありえない跳躍をして見せる。


 俺様が着地するのと同時に神仏のメリケンサックで上空から落下し、

 攻撃力を上昇させながら、

 両手の拳をハンマーのようにして、

 叩きつける。


 爆発的な振動が響き渡ると、


 タートルマウンテンは悲鳴を上げる。


 次に冥王の毒毒の剣と錆色の剣が、上空から落下し、

 山にぶち当たる。

 山をも振動させるように、振動する。


 タートルマウンテンは、

 とてつもない衝撃で悲鳴を上げる。

 そして奴はこちらにターゲットをしぼりだした。


 タートルゴーレムが遠吠えを発する。

 その威力は桁外れであり、

 俺様と冥王は遥か遠いい場所に吹き飛ばされてしまう。


 高所から地面に落下し、

 沢山の草原を引きずりながら、

 ごろごろと転がる。


 俺様は立ち上がると、


 冥王も立ち上がる。



 2人は笑いだし、

 次の瞬間、とてつもないスピードで走り出す。

 もはや人間の領域を超えていた。。


 その時タートルマウンテンがまた遠吠えをはっする。


 ちなみに街は吹き飛ばされそうになりながらも、

 建物は建築が頑丈だったのか、

 崩壊する事はしなかった。



「うらあああああ」


「うりゃああああ」



 次はタートルマウンテンの腹から打撃を浴びせる。

 その時タートルマウンテンが遥か空に吹き飛んだ。


 冥王がジャンプし、叩きつける。

 巨大な山が地面に向かって、落下する。


 タートルマウンテンは地面に激突するのと同時に、

 とてつもない地震を巻き起こす。


 2人はぐらぐらするなか、にやりとまた笑ってみせた。




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