第5話 やばいまたテイムしちゃった

 ここはどちらかというとダンジョンの広場というよりかは、

 通路に近い、モンスターしかいられない空間からベルゼケルベロスが出てきたのだ。

 さすがにベルゼケルベロスも狭く感じているようだ。


 僕は奴との距離を空けながら

 奴がこちらに突撃してくるので、


 俺様は後ろへと走り出す。

 近くに広場的な場所がないかと探しながら、

 走るが、モンスター達とすれ違いになる。

 モンスター達はこちらを見て攻撃してこようとするのだが、

 その後ろから追いかけているベルゼケルベロスを見てやっぱり止めたようだ。


 俺様の隣にはサリィーがいる訳で。


「まったく暴食は基本的に食べる事しか考えてないぞ」

「そんな事分かっている。だけど広場に行ってあいつをお仕置きしないと気が済まない」

「圧倒的なレベル差を見せつけられても、リュウケンは諦めないんだね」


「もちろんだ。そう簡単に諦める事なんてできる訳がない」

「だからあたしはリュウケンに付いていく事にしたんさ、最後まで見届けさせてもらうよ」


 目の前に大きな広間が少しずつ見えてくると、 

 俺様は生唾を飲み込み、


 とんでもないスピードでこちらに向ってくるベルゼケルベロスを見ていたのだから。


 逃げて行く事から、

 

「逃げるのやーめた」


 そう呟き、

 後ろに回転、

 次に両方のメリケンサックを構え、


「水竜神の剣だと殺しちまうからなぁ」

「まったく余裕なんだから」


 広間の端っこに移動した憤怒のサリィーはこちらを見ている。

 なぜそこまでガン見して来るのか理解は出来ないが、

 俺様は俺様なりに戦うつもりだ。

 広間には元々ゴブリン達がいたのだが、

 奴らはベルゼケルベロスがやってくると逃げ散った。


 ベルゼケルベロスは大きな広間に出て、

 辺りをきょろきょろとしながら、

 一瞬だけサリィーを見て、首をかしげていた。


 俺様は真紅のメリケンサックを構えると、前に走り出す。

 敵は俺様の10倍はあるであろう巨大なベルゼケルベロス。

 さらにレベルも遥かにあちらの方が格上、

 この攻撃のレベルは関係ない、

 それを凌駕するスキルがあるのだから、

 俺様にしか使えないスキル。

 それは【前世最強】【最強武芸】

 それに【乱舞無双】があるのだから。


 前世の記憶を強く受け継ぐ事に成功したのが、この俺様であった。 

 そして本当の人間らしさ、前世から離れている人物が僕と言う人間であった。


 2つの感情を上手く利用して、

 俺様はここに立っている。


 まだ目の前に到達していないベルゼケルベロスは、

 こちらに向かって巨大な顎を振り落とす。


 3つ首のベルゼケルベロスの顎でどれが一番最初に食ったかという競争でもしているかのように、順番など関係がないとばかりのように、


 打ち落とされた首、


 次の瞬間、

 理解の出来ない衝撃がベルゼケルベロスの顔面に飛来しただろう、

 何より1つ首だけのダメージではないのだ。

 ほぼ同時に3つ首のダメージとなり、

 3つ首が後ろにのけぞり、

 そのまま天井に頭を激突させ、

 すごく痛いのかもがき苦しみながら、

 涙目になりながらもこちらをまっすぐと見つめている。


「もう、あったまきたんだからー」


 その言葉のギャップにびびりつつも、 

 なぜなら先程も聞いた声なのだ、しかしそこにはギャップがありすぎる声なのだ。

 その声は明らかに美少女のもので、

 広間の隅っこで体育座りしてこちらを見ている憤怒のサリィーさんも美女だった。

 と言う事はこいつも美女という事なのだろうか?


 それはさておき、

 本当にテイム出来るのであろうか?

 色々な考えが過る中、

 俺様は動き出した。


「さっきのは真紅のメリケンサックで乱舞無双をやらしてもらった。どうだ痛いか」

「うん、めっちゃいたいよおおお、なんだろうあんたと話していると気持ちが落ち着く」


「そうかそれはよかった。じゃあ、死ねやああ」

「そうこなくっちゃねええええ、食べてあげるんだから、骨までしゃぶるんだからねぇえええ」


「恐ろしいよ」

「恐ろしいのがベルゼケルベロスの役目なんだからぁ」


「なら食え」


 戦うつもりだった。

 こいつと沢山戦うつもりだったのだ。

 だけどこいつが人間を食べたい衝動に駆られているなら、

 俺様がその味を教えてやるのもいいかもしれない。


 俺様は左腕を差し出した。


 それをびくびくしながら見ているベルゼケルベロス。

 彼女は暴食らしく食べたいという衝動に駆られているのだろう。


 彼女はどことなくこいつを食べてはいけないと本能で察しているのかもしれない。

 そして彼女はゆっくりと口を広げて、食べるのを止めたのだ。


「ううう、そんな事されたら好きになっちゃいそう」


 そこにはベルゼケルベロスではなく、1人の美女がいた。

 体つきは少女そのものでありながら、少しだけぽっちゃりとしている。

 それでもデブとまでは行かず、肉付きがよい程度なのだ。

 栗色の髪の毛をしており、右腰と左腰には無数のナイフが装備されていた。

 衣服は探検家のような少し変わった着衣であった。


 彼女はもじもじしながら広場から端っこに移動する。

 だがそこには先約がいて、憤怒のサリィーがおりました。


 2人はまるで久しぶりに会う恋敵のように、

 ばちばちと額から電気を走らせているのが目に見えてくる。


「あらまぁ、憤怒のサリィーじゃない、最近見ないから僕は死んでいるものだと思ってたりしちゃたり、てへ」


「相変わらず暴食のネメはぶりっ子路線のぽっちゃり女子だよな、あんたのお腹の中にはどれくらいの食べ物が入るんだか」


「うふん、うるさいわ、なんであんたがここにいんの? あの方は僕の運命の方なんだからねぇ」

「それはあたしだってねぇ」


「まぁ、まってよぉ」


 俺様からいつの間にか僕に戻っていたのだ。


「え? どういう事? なんでそんなになよなよしてるの?」

「こいつはポジティブとネガティブが強すぎんの」


「きゃああああ、可愛いい、これからもよろしくです。ネメといいます」

「あ、はい、よろしくお願いします。どうやら僕はまたテイムしてしまったようだ。ボスモンスターをテイムしたけどこのままだとすごい仲間達だらけに、お、恐ろしい、僕はリュウケンだよ」


「リュウケンさま、いつか一緒に地上にあるとされるバイキングを食べましょう」

「うん、いいね」


「あんたは食べる事しかないんだな」


 憤怒のサリィーの当然のツッコミであった。


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