第4話 立ち向かえゴミダンジョン

 俺様はさっそく武器を使用してみたくなっていた。

 数時間の休憩を宝物庫で取り終えると、

 俺様と憤怒のサリィーはダンジョンの階段を下っている。

 さぁ夢と希望のダンジョンに行くぞと、心を決めていたのだが、


 110階層よりさらに下へと向かって行くとやはりモンスターも超人級になってくるもので、

 そこにはゴブリンの群れが沢山いた。


 雑魚のゴブリンを想像してはいけない事は分かっている。

 鑑定眼鏡を使用しなくても、そのゴブリン達の名前とレベルを見る事が出来るのだ。


 サリィーにとっては雑魚そのものであろうと、

 この俺様にとっては命の問題なのだ。


「ふむ、レベル150のダンジョンゴブリンか」


「あたしが掃除してもいいけど? やりますかな?」


「いやサリィーは何もしないでくれ、ここからは俺様が俺様を鍛える場所のようなものだと思うようになってきたんだ」


「それはいいけど、あなたに死なれると色々とめんどくさいんだけど」


「そう簡単には死なないさ、さて、この剣を試し斬りといこうかな」


 そして俺様は一歩乗り出す。

 目の前には普通のゴブリンのような奴らが数えきれない程、ダンジョンの広間にいたのだ。


 ここは111階層であり、

 どうやらゴブリンの階層のようだ。


 どこを見てもゴブリンしかいないものだから、

 それは断定出来ると思っている。


「さぁてぇ皆殺しだ」


 俺様は走り出した。


【水竜神の剣】を水平に構えると、


 次の瞬間、ゴブリンの右肩から左わき腹にかけて斜めに両断。

 ぐらりとゴブリンが崩れて血しぶきが上がる。

 ぐるりと回転し、こちらが敵だと認識したゴブリンが剣のような不思議な武器を振り落とす。


 それを左手のメリケンサックでガードする。剣そのものが粉砕されると、

 

 右手の水竜神の剣で首を両断、

 首がころころと転がりながら、

 じゅっといいながらダンジョンそのものに吸収される。


 どうやらダンジョンはモンスターの死体を食らって成長しているのかもしれない。

 

 四方にゴブリンが到達。

 水竜神の剣を水平に構える。


 そしてジャンプする。

 四方より突き刺す槍を持ったゴブリン達、

 彼らはこちらに止めをさせたとばかり思ったようだ。


 空気が重たい。

 だからといえジャンプ力が低くなる訳ではない、


 着地した時、ゴブリン4体の首がずるりと落ちる。


「はっはーこれはすごい切れ味だぞ、前世が武芸の達人で助かったよ」


 ゴブリン達が1体また1体とこちらに勝てない事を悟ると、

 後ろに逃げ始める。


 背を向けたゴブリン達をめった刺しのごとく追撃している。


 背中を両断した。首を落とし、頭蓋骨を砕く。

 前に先回りして、回転斬りで腹を両断

 次にメリケンサックで顔面を潰し、そのまま頭を掴んで投げ技にて壁に激突させる。

 ゴブリンの体はぐちゃぐちゃになる。


 走って走って笑いながら笑いながらゴブリンを200体以上殺していた。


 そしてそこに俺様は到達する。

 後ろではサリィーが腕を組んでいる。


「次の敵はリュウケンでは厳しいかもしれない、手を貸そうか?」


 現在俺様は全身がゴブリンの返り血を浴びていた。

 そこにあるダンジョンの穴みたいな所、

 それはとてつもなく大きい穴で、


 中に入る事が出来ないようになっているようだ。

 モンスター達の住処という所なのだろう。


 その隙間がひび割れするがごとく、

 めしり、めしりと嫌な音をあらわにしながら、

 中からゴブリン達の悲鳴が聞こえる。


 バキボキバキボキと何かを噛み千切り、かみ砕いている音がこちらまで響いている。


 どうやらやばい奴のようだ。


「だが助太刀はいらん」


 そう叫んでいた。

 そこから現れるモンスターを見ても。

 同じ事が言えただろうか?


 そいつは巨大な3つの首をした。巨大な犬だった。

 真っ黒い犬の名前を【ベルゼケルベロス】という物だと判明した。

 レベルは8554という驚異的なレベル。

 さらに名前には暴食とも書かれてある。


 奴はこちらを鋭い視線で睨みつける。


 今鑑定眼鏡を使って全ステータスを確認している暇はない、

 俺様は叫ぶ。


「いいかサリィー手をだすなよ、こいつのテイムしてやるぜ、可愛い子にはお仕置きが必要なんだよおおおお」


「うん、分かった。あたしのリュウケンはあたしの物だから暴食の物ではないんだからねー」



 しかしケルベロスはこちらにしか興味がなく、

 サリィーこと憤怒の存在にすら気づいていないようだ。


 もしかしたら憤怒の美少女姿の記憶がないのだろう。


 3つ首の口からはゴブリンの死体がだらりとぶら下がっており、

 それをがぶがぶと食い散らかしている。

 まるでお腹が空いていたので食べましたというように、


 憤怒が激情型なら暴食は沢山食べる事しか考えていない可能性が。


 それを決断するだけの俺様の知力はなくて、

 そしてこのダンジョンを抜け出たら、七つの大罪という物を勉強する必要があるのではないだろうかと、少しずつ考えていた。



「いざ、勝負」


 そのモンスターにしかいられない空間から出てくる沢山のモンスター達、

 そのどれもが巨大な蠅ばかりだった。

 蠅のモンスターはこちらに一直線に飛翔する。

 大きさ的には大型犬くらいの大きさだ。

 そいつらはのっそりのっそりと歩いてきているケルベロスの周囲に集っている訳ではなくて、


 ケルベロス周辺を飛翔したと思ったら、こちらにまっすぐに飛んでくる。

 その数は数100を超える程度のものだった。


 なぜ100程度と言えたのか、

 それはそれより大きな数のモンスターを倒してきたのだから、


 エッグフライヤーという名前のモンスター達はレベル80くらいだ。

 なので、それ程までに危険だとは思っていない。


 一々一体ずつ倒すのも面倒くさいので、

【乱舞無双】を発動させていた。


 マジックポイントではなく、魂の力そのもので、

 水竜神の剣を連撃がごとく暴発させる。

 無数の斬撃が、エッグフライヤー達をまるで豆腐を斬るかのように両断していく。

 村には大豆から作られる豆腐という食材があったのだが、

 その豆腐は白い四角い塊でほんわりと柔らかい食べもので、

 エッグフライヤー達を両断した時がその感触に似ていたのだ。


 すべてのエッグフライヤーが塵となって四散して行く中、

 ケルベロスはゆっくりとゆっくりとこちらにやってくる。

 目の前に到達すると、ケルベロスは大きな口を開けて、吐しゃ物を吐き出したのだ。


 危なく全身に吐しゃを食らう所だったが。


「うぇえええ、気持ち悪いよおお、ゴブリンなんか食うんじゃなかった、やっぱり人間は一度食べてみたいし、食べられてえええええ」


「無理だろばかやろう」


 俺様は苦笑を洩らし水竜神の剣を鞘にしまうと、

 右手と左手にメリケンサックが装備されているので、

 ゆっくりと身体になじませるように、右手と左手を握り絞めていた。


 さぁ始めよう。

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