バスケ

 月曜。体内時計で目醒める。

 土日は自主練三昧でマジ筋肉痛だけど、心地いい痛みだ。

 髪を適当に手櫛で直しかけ、鏡を覗いてふとブラシに持ち替える。あーどうやったらもっとマシに見えるんだ?

 だって、可愛いんだよ。あのポニーテールも、ピンクのリップも、たまらなく。

 あの瞳に見つめられたら、ちゃんとしなきゃってなるだろ普通!? しかし気の利いた小細工が似合う顔じゃない。

 鏡の前をウロウロした末、結局代わり映えのしない制服に着替えてリビングへ降りる。

「いただきます」

 味噌汁を一口啜ると、向かいの新聞の陰からチラリと視線を感じる。

「相変わらずバスケに明け暮れる日々か。そろそろ恋人の一人でもできないのか?」

 味噌汁が噎せ、汁を盛大にテーブルにこぼした。

 ニヤニヤ顔の父を睨み、味噌汁をぐいぐい拭き取る。微妙な年頃の子供をおちょくるなクソ親父。


 おかげで朝練遅刻だ。

 しかも。


 7時30分に、あの角を歩いていれば。


 ふっとため息を空に吐き、視線を戻した曲がり角に——

 艶やかなポニーテールがキラリと輝いた。



「きゃーっ」


 衝動的に背後からヘッドロックをかけた私の脇で、可愛く押し潰された笑顔が弾けた。



            


Fin.

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On Monday Morning aoiaoi @aoiaoi

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