第15話 横の花と先の花

家から学校までの距離は約1キロ。

緊張が解れてきた時には、学校まで300mだった。


「お、おい!なんで鈴木なんかが、天沢さんと一緒に登校してんだ??」

「きっと、天沢さんが罰ゲームかなにかでやってるんだろ。」

「可哀想だ。転落人生を見ているようだ。」


男どもが好き放題言っている。


「鈴木くんってシグマさんといい、どうしてモテるんだろ〜!」

「そこまでイケメンじゃないよね!」

「ってことは、大金持ちなのかな!」

「やだー!ちょっと鈴木くんのこと、気になってきちゃった!」


女の子も俺の話題で盛り上がってる。

これは不思議と悪い気はしない。


シグマと歩いてる時は迷惑だなと思っていたのに、

天沢さんと歩いていると、天沢さんに申し訳ないなと感じてしまう。


「ごめん。天沢さん、俺先に学校行くね!」

「ん?なんでー??」

「なんとなくだよ!」


タタタタタ!!


天沢さんに対しての申し訳なさが俺を走らせた。

いつか美幸に聞かれた俺の目標が、思わぬ形で達成された。

目標を達成したのに、少し悲しくなるとはな。。


タタタタタ!!


「ん?」


タタタタタ!!


後ろから誰か迫ってくる。


タタタタタ!!


「私のほうが早いもん!!」

「ふぇっ!?天沢さん!?」

「絶対負けないんだから!!」


タタタタタ!!


天沢さんに抜かされた!

天沢さんとの競争イベントが発生した!!


タタタタタ!!


理想的なフォームで、天沢さんの華奢な背中が遠ざかってく。

相変わらずいい匂いがする。


タタタタタ!!


天沢さんの匂いにつられて、俺の速度が加速する。


タタタタタ!!

タタタタタ!!


天沢さんと肩を並べて走る。

シグマ探しで凄く走ったからか。

俺も無駄の無い理想的なランニングフォームを手に入れていた。


ずざざーーー!!

ずざざーーー!!


「ハァハァ!」

「はぁはぁはぁ!」


学校の昇降口前で、ど派手に砂煙を上げて止まる。

「ハァハァ!やるじゃん!鈴木くん!」

「はぁはぁはぁ、あと100mあったら走りきれなかったよ。。」

「ふふふっ!じゃあ、明日から楽しみ~!」

「はぁはぁ、ふぇ?」


四つん這いになっている俺は、

天沢さんと会話をするだけで精一杯だった。


少し巻かれた栗色の髪を、

風になびかせ昇降口へと去っていく。


まだまだ、天沢さんに挨拶をして、

走り去ってくという目標は、

叶いそうにないな。。


「鈴木。あんた走れたのね。」

「はぁ、美幸。普通の高校生は走れるぜ。」

「あっはは!それもそうね!

でも、私は走った後も動けるわよ?」

「…」

「ははは!ほら!」


美幸が肩を貸して、立たせてくれた。

女性らしい身体だが、バスケ部で鍛えられた

肉体美を感じた。

今日は朝練があったのか、少しシーブリーズの匂いもした。


「あのさ!鈴木もバスケ始めてみない?」

「バスケって300m全力で走れたら勝てんのか?」

「そんな平和なスポーツないわよ。」

「平和主義なもんでな。」

「あっはは!あんたらしいわね。」


美幸と会話をしながら教室へ向かう。


今日の星座占いは、さそり座の美幸が一位だった。


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