第14話 手紙と会話

シグマを探した日曜日の朝。

俺は過呼吸により意識を失っていた。


「はっっつ!!」


意識が戻った時には、お昼近くの時間帯で、

公園には多くの人がいた。

全員俺を見ながらヒソヒソ話をしている。


「なんだよ。見せもんじゃないぞ。」

ゆっくりと立ち上がる。

「さっむ!!!」

パンツ以外の服をつけていないことに気がつく。


「え!?まさか!」

ホームレスの野郎に違いない。

ちょっと昨日ホームレスとの思い出にも浸っていただけに、倍腹がたった。


「ん?そもそも俺は、なんでここに…あ!!シグマは!?!?」


気を失う前の記憶が蘇った!!

あいつを止めなきゃ!!

何をするつもりか、まったくわからないが、

あいつを見つけなければならない!!


「はぁはぁはぁ…!ちくしょう。。」


シグマを探して、また町を走り始めたが、

周囲の視線が冷たい。なにしろパンツ一丁だ。

若くして性癖に目覚めた男。

これが周囲の抱く、俺への印象だろう。

ハズレではないかもしれないが、羞恥プレイは俺の趣味じゃない。

…いや、待てよ。

自分の恥物である空気嫁と、また自分と同じ学校に通いたいと思っている俺は、

羞恥プレヤーでないと言い切れるのだろうか。。


とりあえず、これだけは言い切れる。

いつも通りのシグマとの日常に戻れるなら、俺は羞恥プレイヤーにでも、

SMプレイヤーにでもなってやる。


「はぁはぁ…一回家に帰るか。」

全身汗だらけ、パンツ一丁、真昼間。

一回帰って体制を整えよう。


ガチャガチャ

バタン!


自分の部屋に入ると、一気に疲れが押し寄せた。

久々に帰ってきた気分だ。

泥のように座椅子にもたれかかると、

コタツの上に見慣れない紙があることに気がついた。


(スズキーノへ。私はもうすぐ帰るから、

 安心してゆっくり休んで。 シグマより)


「……ぐぅー…グゥーzzZ」


置き手紙を読んだ俺は、暗示にでもかかったかのように、突然深い眠りに落ちた。


ピピピピピピピピピピピ!!!


「…くん?す…くん?鈴木くんってばー!!」

「ん?あ…?」

「鈴木くん!アラーム鳴ってるよ?」


ピピピピピピピピピピピ!!!


「あ…あぁ!ごめんごめん!」

寝ぼけながら、アラームを止める。

「も~!私も起きちゃったよ!責任とってよね!」

ん?シグマの声じゃない?誰だ?

…そうか、天沢さんだ!!

「アッハハ!熟睡し過ぎちゃってさ!責任ってどうやってとるの?」

「う~ん。じゃあ、一緒に登校しよー!」

「え。。そんなことでいいの?」

「じゃあ!決まりね!!」

「う、うん。」


朝を好きな人に起こされた。。

そして、好きな人に一緒に登校しようと誘われた。


今日はテレビで、星座占いを見る必要はない。

絶対一位だ!!

ラッキーアイテムは目覚ましだ!


急いでシャワーを浴びて、制服に着替え始める。

そして、家を出る前にシグマの置き手紙を、もう一度読む。


この置き手紙は、ろくに休まずシグマを探す俺を、寝かせるために書いただけかもしれない。

だけど、何度読んでも不思議と安心できた。

なぜか、シグマは戻ってくると確信できた。


「シグマ。待ってるからな。」

置き手紙に返事をする。


「鈴木くん!おはよー!」

俺の準備が整ってから、少しして天沢さんが外に出てきた。


「おはよー!天沢さん!」

爽やかな挨拶を交わし、学校に向けて歩きだす。


「天沢さん。今日は走らないの?」

「アッハハ!今日は走んないよ!鈴木くんもいるしね!」

「なんで、いつも走って登校するの??」

「ダイエット!!」

少しドヤ顔とガッツポーズをして話す。


ただでさえ華奢な身体を、さらに絞る必要はないと思うけどな。。

でも、ある意味…

「麺の湯切りみたいだね。」

「う、うーん…?」


しまった!!

意味が伝わってない!!

麺の湯切りとは、一見パフォーマンスにも見えるが、実はスープの濁りと薄まるのを防ぎ、麺のぬめりを取る重要な役目がある熟練の技!

俺が言いたかったのは、一見天沢さんには無意味に見えるランニングも、実は天沢さんの完璧な美しさの一片を担っている重要な習慣だと言いたかった。。


「…」

「…」


会話って難しい!!

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