第10話 「水平線を突く」

果てはどこにあるのか

見えるものなのか

誰が決めるのか


水平線のぼんやりに 指を差す

やがて わずかなぶれの眩惑

爪の欠片かと見紛(みまご)うものが

確かな速度をもって 迫りくる


船だ

この指を ものともせず

その舟首(おもて)を現し 白波を携えて ゆうたりと横を向く


何を見てきたのか

何を知っているのか

その堂々たる躯体に 海の果ての潮(うしお)を吸ってきたのか

見惚れるこちらに かまうことなく勇姿は過ぎる


我が舳先(へさき)が向かうは

海と空の境界線

その果ての答えは見えず

されど 光を希(こ)い願い 波を漕ぐ


進んでいるのか

流されているのか

わかりようもなく 

ただただ 果てない海原(うなばら)を漂う


汽笛が響く まるで沖を揺らすように

その浮き立つものを 逃すまいと指で突く


旅はいまだ 途中

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