キツネが過去の存在になってから1週間、カラスはある決心をしていた。

「よし、いい天気だ、今日、お前の元を離れるよ。なあキツネ、俺はもっと賢くなるよ、お前が大好きな人間の世界を、もっと覗いてみるよ。」

バサッバサッバササササ

カラスは一人、青空に向かって自分の身を投げ出すように飛び上がった。目指す目的は、ごみ箱。腹ごしらえをしなくては、彼の旅は始まらない。

「俺の友は、井の中の蛙だった、自分を痛めつけた存在にあこがれるなんてな、まったく滑稽だよ。井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る。あいつの場合は、空の青なんかじゃなく、きっと美しいだったんだろうな、ま、俺にはそれを語る資格もないか、ハハッ滑稽だな。」

 カラスは独り言をつぶやきながら着地点を見定める

「おいなんだあいつ、うれしそうな眼をしやがって、こっち見んじゃねえよ」 

 カラスの眼下には、高校生らしき男が、何やら嬉しそうに空を見上げていた。

 





………とまあ、カラスとキツネの話はここまでです。どうでしたか、あのカラスは今頃北海道で元気に暮らしているのでしょうか、それとも、あなたのすぐ近くで、食料を得るために奔走しているかもしれません。1つみなさん、疑問が浮かんだでしょう。『なぜカラスとキツネはあんなに短い期間で仲良くなったのか』と。

 それは残念ながら私にもわかりません。しかし、カラスの寿命は10~15年。キツネに至っては長くて10年と、とても私たちにとっては短いと感じる年数になっています。もしかしたら私たちよりも彼らの一分一秒は、濃密なものなのかもしれない。だからこそ、あそこまで仲が深まったのかもしれませんね。みなさんも、カラスのように後悔ばっかりするのはやめてくださいよ、この人生100年時代に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

視覚 菅原 こうへい @sugakou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ