らいわ勝どき組・代表、山中次郎入閣(文部科学省・初)

「みなさん、どれだけ耐えたら気が済むんですか?もう我慢し尽くしたでしょう。今立ち上がらないと、これ以上もっと生活が壊されてしまいます。私達の政策は、労働者の最低賃金は1500円以上にすること、消費税は廃止、デフレ時には1人3万円を給付。それを実行するには、権力が必要なんです。私に権力をください!」。街中で大衆に語りかける、らいわ勝どき組・代表の山中次郎。政治家とタレントはスター性が求められる点で似ているが、元俳優の山中には人を魅了する力があふれていた。


その後、選挙で議員に選出された後、“らいわ勝どき組”を結党。高部からの要請を受け、文部科学省として入閣した。らいわ勝どき組は与党と合流することとなる。


“独裁政権を維持するには、優秀かつ国民の人気を得られる人材は不可欠”と考えた高部の行動は早かった。もっとも、政策的にかなり近いものもあった。特に「ヘリコプターマネー級の財政出動」は、高部にとっても山中にとっても推進すべき政策であり、スムーズに成し遂げることができたのだ。


「高部さん。私はハッキリ物申しますよ。いかんせん、他の政治家たちと違って、既得権益には縛れちゃいません。護るのは国民の命だけですから」と、山中は高部の目を見据えて言ってのけた。言葉の端々に、力強さがこもっているのは、日々街頭演説で鍛えられていることの証左である。毎日、むき出しの環境の中、大衆向けケーススタディで学び続けているようなものだ。そのガッツは既存の政治家にはないものだ。


「野党と違って、与党になれば実務能力が問われます。ただ、あなたはプロの俳優だったキャリアをお持ちだ。どんな仕事であっても“プロ”の仕事の進め方は変わりません。培ってきた能力を存分に発揮してください。あ、あと。うちは完全能力主義なので、年齢とか関係ないんで」と高部は、40代の山中世代の言語に合わせて、話しかける。


それを聞き山中は「確かに、プロの世界は同じだと私も思いますよ。その意味ではあなたの言っていることは、私の尊敬する映画監督と一緒だ。大臣を拝命した以上、目一杯働きますよ」と笑みを浮かべながら応えた。

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