コーヒーと君を待っている。

いつからだろうか。

もう20年以上、ほぼ毎日コーヒーを2杯から3杯、ミルクも砂糖もいれないで飲んでいる。

短期間だが、自分でも小さなカフェをやって、

コーヒーを淹れていた。

最初は、うす過ぎたり、濃過ぎたり、

なかなか美味く淹れられなかった。

それでも、楽しくやっているうちに美味しくなった。


奈良の外れに、コーヒー豆を焙煎して売ってくれる豆屋がある。


話し好きの、面白い店主のおじさんで



「昔はコーヒー飲み過ぎたら、胃がんになる言うたけど、アレはウソや。ワシは70年、朝から晩までコーヒー飲んでるけど、元気でピンピンしとる」



確かに、豆屋のおじさんを見る限り元気だ。



本当に、カラダに良いかどうかは別にして、

コーヒーの香りは、人をリラックスさせてくれる。


交通事故で、はじめて入院した時のこと

病室というのは、本当に何の楽しみもない空間だ。



特に夜がとにかく長い。



救急車のサイレンが近づいてくると、

廊下をダダダダダダダーっと走る音で騒がしくなる。 キーッと部屋のドアを開ける音やらで全く眠れない。


そんな辛い入院生活で、唯一の楽しみがあった。


毎朝、妻が自転車で駅前まで行って

ミスドのコーヒーを買ってきてくれる。



消毒液の匂いしかしない病室が、

一瞬でコーヒーの香りに包まれる。



心もカラダも癒された。



入院中は、いつもベッドの上で夜明けを待っていた。



幸せの香りを運んできてくれる、



君を待っている。

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