第11話 テイルズ オブ ほにゃらら

「心肺停止!心臓マッサージを行います!」

「おい!爺!死ぬな〜!」


 レース終了後、ショックから動きを止めたマグロ爺は、心肺停止の状態になり場内に救急車が来る事態に。そして勢いからか、付き添いで俺達も救急車に乗ってしまったのだ。


「患者はマグロの老人一名…はい、搬送先はネズミ総合病院…分かりました」


 マグロ爺は、我らがホーム”ネズミ総合病院”に搬送される事が決まり先を急ぐ。


 間も無くしてネズミ総合病院に到着すると、懐かしのネズミのナース達が待ち構えていたが、俺達を見るや否や失礼な事を言ってきた。


「うわ!またアンタ達…殺っちゃったの?!」

「違ぇわ!ボケ!さっさと呼び戻して来い!!」


 そうしてマグロ爺は手術室へと運ばれて行った。


 数時間後…


 長椅子に俺達は魂が抜け切った状態で腰掛けていると手術室の赤いランプが消え、ネズミ医師が出て来た。魂を引き戻しネズミ医師を問いただす。


「爺は無事なのか!?」

「もう少し遅れていたらお陀仏でした。大丈夫です。今はちゃんとビチビチ動いていますよ。それよりやってしまった事はもう仕様が無い。ちゃんと罪を償って下さいね」

「だから違うって」


 1週間程でマグロ爺は退院出来るそうだ。一先ずは安心。もう何もすることのない俺達は病院を後にした。日が落ち始め、夕日の中をトボトボと歩く。俺達の退院時とは違い真っ直ぐ家に帰る事にした。いや、帰るしかなかった。なぜなら俺達は”2万円”しか持っていないのだから。天国から地獄を味わう夕暮れ。


「なぁ…カワ谷…何で2万残したん?」

「…帰りの電車賃と本日の祝杯費」

「…元気ダシマショウ」

「貧乏金なし」


 誰も誰かを責めはしない。だって元金からすればたったマイナス1万2000円ではないか。今日の出来事だって、日常ではあまり味わうことの出来ないエンターテインメントだったと思える…思うしかない。

 と言いつつもお金はどうしよう。2万じゃあんまりじゃないか。もう一度同じくだりをするか?いやいや、そんな気力も無いし、奇跡は二度も起こらない。それに元より神に弄ばれていただけではないのか。何よりあんなもう思いはしたくはない。真面目に働いて稼ぐしかないか…

 

 無気力の中、道を歩くその時だった。


”…我の元に…我の元に来るのだ…”


 突然、頭の中にその声は響いた。辺りを見渡しても俺に話しかけてきている様な動物はいない。しかしながらどこかで聞いた事があるような…

 気のせいかと思い再び歩き出そうとしたがあるものが目に入りそれに惹きつけられた。


”ト○ジャーファクトリー”


 前回はこの道を通っていなかったから知る由もなかった。


「ト○ジャーファクトリー…なぁ、寄って行こうぜ」

「はぁ?…まぁいいか」

「特ニスル事ナイデスシネ」

「宝探しと行くか」


 自動ドアを跨ぐと多種多様の製品が所狭しと並ぶ。衣服、家電、嗜好品、日用品、ゲーム、おもちゃと何でもあり、ここで何でも揃える事が出来るんじゃないか。

 しかしながら、先程頭の中で響いた謎の声は一体何だったのだろうか。煮え切れない気持ちで店内をぐるぐると回っているとまたもや謎の声が響く。


”…こっちだ…こっちに来い…”


 俺は謎の声に導かれ先を進んで行く。そして製品がそれまでより雑多に置かれ埃もかぶっている様な場所に辿り着いた。

 そして最終地点にて、窓から差し込む僅かな光に照らされている”それ”があった。


「…ギターだ…」


 今、俺の中ではテイルズオブ○スティニーのOP"DE○N"の”○であるように”が頭を駆け巡っている。見てくれは正しくギ○ゾンのレ○ポールカスタム、通称”ブラックビューティー”。次に俺はブランドを確認する為ヘッドをチラッと見た。


「…フォ○ジェニック…」


 初心者向け、アンプセットで1万円以下でも購入可能な代物だ。前足に取って眺めていると少し違和感がある。それはピックアップにあった。


「…E○G,81,85?」


 E○Gはピックアップブランドで、一つ1万円前後する。これが何故これに乗っているのだろう。俺は不思議に思った


「なんか掘り出しもん、見つけたか?…なんだそのギター?」

「カナリボロボロデスネ」

「なんてこった」


 外野からのガヤにも気が付かず、何故だか俺はこのギターに釘付けになっているその時また謎の声がした


”…力が欲しいか…”


「はっ!?…まさかギター…お前が話しているのか!?」


”…力が欲しいか…”


 突然の事に驚きが隠せない。それに聞き覚えのある声…そうか!これは俺がネズミ総合病院で目覚める前に聞いた声だ!*4話より

 

 以後もその声は俺に話しかける。


”…汝、力を求めるか…”


「…欲しい!この世界を混沌に落としめる曲を作る力が欲しい!」


”…その願い叶えよう!我は”爆炎を司るギター”なり!”


 それを最後に我に還った俺は急ぎ値札を確認する!


「3,000円!!」

 

……


「ありがとうございました〜」


 俺は爆炎のギターを手に入れた。


 ちなみに

カワ谷は”豪雷を司るマイク(2,000円)  

カワ島は”大地を司るスネア(4,000円)

カワ木は”水激を司るクリップチューナー(500円)を購入した。


 他、色々買って合計”15,000円”也。

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