閑話 ある姉妹との出会い2

 あの日以来、私たち姉妹へのイジメはなくなった。


 なんて、言えたら良かったのだけど、相変わらずの扱いで、辟易していた。


 それでも、あの日出会った三人と、私達はお友達になれたし、週末にはまた遊ぶ約束をする事が出来た。


 私はゆーちゃんとみーちゃんが同級生だと教えてもらい、愛梨はみなちゃんと同級生で、お互いに仲良くなった。


 あの日、私達は笑顔で帰って、お母さんも私達が元気になっている事に気がついたのか、その日あった話を聞いてくれた。

 とっても素敵なお友達が出来たんだと言うと、とても喜んでくれて、週末にはまたお小遣いをくれると約束してくれた。


 ゆーちゃんとみーちゃんは、言い方は違ったけど、やっぱり妹は私が守らないといけないと言った。

 気の弱い私には、それはとても難しい事だけれど、先ずはイジメに負けないように強くなろうと決めた。

 妹を泣かせるやつは…やつは…うーん、私にはあの二人のようには出来ないけど、庇ってあげるくらいはしたいなぁ。


 私をイジメてくる子達は、相変わらずだったけど、それ迄の私だったら泣きそうな顔をしていたのが、なるべく何でもないような顔をしていたら、凄く腹が立ったような顔をしていた。

 えへへ、ざまぁ!


 楽しくはないけど、一週間の学校生活を耐えて、週末がやって来た。


 愛梨は朝からソワソワしていて、私もそんなつもりは無かったけど、お母さんには同じように見えたみたいで、クスクスと笑いながらお小遣いをくれた。


 愛梨と一緒に、あの公園に向かった。


「「いってきまーす!」」


「気をつけてね!」


 お母さんに送り出され、約束の時間よりもずっと前に公園に辿り着いた。


 今日は、皆で駄菓子屋に行く予定だから、公園で待ち合わせなのだ。


 公園には、愛梨くらいの女の子達が何人か遊んでいて、私達はベンチに座って皆を待っていようと思ったけど、どうやら先約がいたみたいだ。


 私と同じくらいの男の子が、ゲームをしているようだった。


「それなぁに?」


「あ、愛梨!」


 いつの間にか私の手を離した愛梨が、目的のベンチに座っている男の子に近づき、話しかけていた。


 どんな人なのか分からないし、普段イジメられているから、何かされやしないかと慌てて愛梨を追いかけた。


「え?これ?ゲームだよ?」


 男の子は愛梨に答える。

 その表情が、なんだかとても優しくて、私は直ぐに警戒を解いた。


「妹が突然ごめんなさい!」


「フフッ、謝ることじゃないよ。君達もやってみる?」


「やるぅ〜!」


「ちょっ、愛梨!」


 私の家には余裕がないから、ゲームなんてやった事がない。

 愛梨だってそうだけど、欲しいなんて言ったこともないし、興味ないのかなって思ってたけど、やっぱりそんな事はなかったんだね。


 私だってゲームしたいよ。


 ベンチに座っている男の子の隣に愛梨が座って、その隣に私が座った。


「むぅう〜…ムズい。」


「アハハッ、初めて?慣れれば出来るよ。」


 アクションゲームなんだけど、横から見ていると、私も出来そうにないなと思った。


「君達名前は?」


「愛梨〜!」


「あ、私は瑠璃。」


「愛梨ちゃんに瑠璃ちゃんね。僕はコウ。佐山さやまコウだよ。この公園にはよく来るんだ。よろしくね?」


 ニッコリと笑うコウ君は、とても優しい雰囲気で、女の子かと思うような綺麗な顔をしていて、左目の下にある泣きボクロがとても印象的な、そんな、なんて言うか…その…


「ねぇちゃ、顔赤いよ?」


「へぇえ!?あ、暑いからね!」


 つまりこれが、私の初恋だったわけで。


 愛梨がゲームを手放した後、今度は私の番になった。


「難しそうだよね。反射神経とかいりそう。」


「あぁ、じゃあこれにしようか?」


 コウ君がソフトを入れ替えてくれて渡されたゲームは、RPGだった。


 やるのは初めてだったけど、コウ君が親切に教えてくれる。


「そう、それでね、武器は装備しないとダメなんだよ?持ってるだけじゃ意味がないんだ。」


「あ、うん…」


 コウ君の顔が近い。

 愛梨も一緒に覗き込んでいるけど、小さな画面を三人で見るには、自然と顔が近くなる。


 一人でアワアワしていると、公園の入口から声がかかった。


「あーいりー!」


「あ!みなちゃん!」


 皆が公園についたみたいで、みなちゃんが愛梨を呼んだ。愛梨は嬉しそうにみなちゃんの方にかけて行く。


「あ、お友達かな?僕はそろそろ帰るね?」


「う、うん。その…コウ君、またこの公園に来る?」


「うん。言っただろ?良く来るんだ。瑠璃ちゃん、またね?」


「うん。また…ね?」


 皆とは反対の出口から出て行くコウ君の後ろ姿を、私は何時までも見つめていた。

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