第7話 女

「次は4問かな」


 問題1をクリアしたハルカが次に向かうのは問題4だった。

 問題4は『市、支、反、圭、亡、古、ト、口』の中から仲間はずれを探す問題。


 クリアができそうなところから挑戦する。 

 今ハルカの手元にはこの問題で鬼に金棒、エクスカリバーと呼べる電子辞書があるからだ。


 現実のリアル脱出ゲームなら、そう言ったカンニング行為は興が醒めるのでアウトだが、今回に関しては個人戦。しかも訳も分からないまま、気付くとこの何もない部屋に閉じ込められていた。早く脱出して家に帰りたいハルカは、この理不尽な状況をいち早く打破したかった。


 幸い、ハルカの電子辞書には手書き機能があった。リアル脱出ゲームを何度か経験したことのあるハルカは、これが漢字(部首)を当てはめて、適さない漢字を探すゲームだと瞬時に見破った。つまり1文字づつ手書き機能で検索すれば、共通する部首が見つかるという事だ。


「まず、『市』は……肺、柿、姉……読めないけど、日とニンベン(イ)、サンズイ(氵)、金編もあるんだ」

 難しい漢字もヒットしたが、それは流石に出題しないだろうと思い無視した。それ以外の当てはまる漢字を書き写していく。


 3文字目に入ると大体の目星が付いた。恐らく「女編」か「木編」か「氵編」だ。ハルカはその3つに絞って、市から口までの文字が含まれる漢字を調べた。


「分かった。木編だわ」

 『柿、枝、板、桂、枯、朴、杏』……余った文字は『亡』だった。


「多分これ、女編と迷わせるやつだよね。ごめん、ズルしちゃった」

 ハルカはスマホを立ち上げ、第4問に『ぼう』と入力した。


 回答ボタンを押すと、陳腐な画面に正解の文字。

 これで問題1と4をクリア。残るは2と3の半分となった。


 ちなみに『亡』という文字は『もう』とも読めるが、問5の文字列として必要なのは、問4の答えの2文字目。『ぼう』でも『もう』でもどちらも2文字目は『う』になる。恐らく『もう』と入力しても正解だっただろう。


 



 残りは

 ――――――――――――――


【問題2】



 かや↓あ↑な↓あさ←たは



 ――――――――――――――


【問題3】



 20 + 26 = カフェ


 11 + 4 = なべ


 3 + 5 + 8 + 7 = ???



――――――――――――――


 ヒラメキが試されそうな2問だ。

 スマホの電源が勿体無いので、スリープモードに切り替え、書き写したノートに目を向けた。


「かやあなあさたは……」


 ハルカは問2から解く事にした。


「かやの下、あの上、なの下……漢字にするにしても、ローマ字にするにしてもワカンねぇな」


「いや、違う!これでしょ」

 頭に大きなイメージが浮かび上がった。


 ハルカは『あ・い・う・え・お』とひらがな50音を紙に書く。

 幼稚園児や小学校1年生の家にありそうな、右上が『あ』から始まるひらがなポスターの様な表が出来た。


 ―――――――――――――――――――

  ら や ま は な た さ か あ

  り   み ひ に ち し き い

  る ゆ む ふ ぬ つ す く う

  れ   め へ ね て せ け え

  ろ よ も ほ の と そ こ お

 ―――――――――――――――――――


「『や』の下は『ゆ』、『あ』の上は…多分『お』か『ん』、『な』の下は『に』、『さ』の左は『た』」


 それぞれ適した文字に変換して文字列を完成させる。

 ハルカが解読して現れた文字列は『かゆおにあかは』「かゆんにあかは』となった。


「かゆお『に』あか『は』?、かゆん『に』あか『は』?……」

 眉をハの字にして、指に挟んだシャープペンシルの裏を頰に刺す。


「うーん、イミワカラン!」

 ハルカは持っていたペンを投げ捨てた。

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