第29話 エロティカルの炸裂だー!

「さーて、始まりました。第1回ドキッ......ポロリ大会、最初の種目は体力種目いぇーい!」


「まるで第2回以降もあるみたいな口ぶりがすごいよね~」


「それもそうだけど、自分でつけたタイトルぐらいは全て言って欲しい。それじゃあ、これからやる内容は全て卑猥にしか聞こえない」


「あ、あのー、これって私のため......なんですよね?」


「もちのろんです!」


 その言葉の前に「私の」という括弧書きが入りそうにユノは元気よく言いきる。

 その気合や迫力に飲まれていったルルはもう何も言い返せずにその場で流されるまま。他の二人も半分仕方なく乗ってあげてる感じだ。


 そんなことをわかっていても、わからなくてもどちらでもいいユノは自分の欲のままに視界を進めていく。


「これからやってもらう内容は題して『ソーセージ食い競争』~!」


「なんでソーセージ?」


「もはや内容といい、若干寄せてる感じがしなくもない」


「邪推はいけません。断じて私が麗らかな女の子のモザイク編集しなくてもどうにもエロく見えてしまうというギリギリを攻めたアングルが見たいというわけではありませんから。単純にルルさんの能力を見るためと誰がちょっろ艶っぽく見えるのか気になっただけですから」


「い、今の内容で本音を一から十まで言いませんでしたか!?」


「そして、最後の方で結局ゲロったね」


「この人、同性愛が強いかもしれないね」


「ごちゃごちゃうるさいですよー! 私は美少女がふとした時に見せるエロティックな瞬間が好きなんです。わかりますか? 可愛い女の子がモザイクのかかった長いものを咥えるのと、モザイクのかからないソーセージを咥えるのを比べたら断然後者がエロいことを。それにソーセージであるからモザイク要らないんですよ? 素晴らしくないですか?」


「ちょっと、モザイクとかよくわからないけど、ユノちゃんが実はとってもえっちぃことはわかったよー」


「こんなに堂々と言えるなんてすごい......」


「物怖じしない姿勢に感心するのはいいけど、あれはただの変態だから。まあ、伊達にあの男とつるんでないわけね」


「バッきゃろー! あの目がお金になっている男と一緒にすんないやい! ただ私は! 女の子の! エロく恥じる姿が! 見たいだけなんだー!」


「そんなことを大声で叫ばれても.....」


「始まる前から趣旨変わってるよ。趣旨ー」


「いいから、始めますよ! ちょっと待ってなさい!」


 そう言ってユノはまるで予め用意してあったかのようにどこからともなく挑戦者三人よりも高い位置に吊り下げられたソーセージを用意した。

 そして、それを離れた位置に設置する。


「さて、準備が整いましたので、早速簡単なルール説明をします。ルール自体は至って簡単。両手を後ろでに拘束し、さらに両足も拘束して跳ねながら進んでもらいます。そして、15メートル離れた位置にあなた方が大好きな肉の棒に―――――もといソーセージを用意してあるのでそれを見事口のみで取ってください」


「今完全に連想させるワードを言ったよね」


「に、肉の棒......はわわわわ!?」


「落ち着いて。あれはただの食べ物。決して野郎のピ―――――じゃないから。一つルールの確認。ソーセージはどう考えても口だけでは捕えずらい食べ物だと思う。一部でも齧ればクリアにはなるの?」


「そうですね......齧るかぁ、痛そう。まあ、私は男じゃありませんし......オーケーです。まあ、そう簡単にクリアなんてできるかわかりませんけど」


「わかった。それだけ聞ければいい。それとやっぱりそっちの方向に考えてるんですね」


「失敬ですね。私は見るのが好きなんです。女の子同士なら自分もやや可」


「もはや自分の性癖を暴露することを厭わない姿勢だね。ともあれ、やるなら早く始めようよ」


「き、緊張してきました」


 ユノは三人をスタートラインに立たせると三人の両手、両足をしっかりと縛っていく。

 そして、メルトには「解かないでくださいね?」と忠告して全員を縛り終えるとユノは三人の横側へと移動した。


「それでは三人の準備が整いましたところで、始める前に意気込みでも聞いていきましょうか。それでは、まずマユラさん」


「そうだね~、目的がハッキリしている今別に頑張る必要も無いから、無難に頑張るよ」


「優勝したあかつきにはゼンさんを好きにしていいですよ」


「そっかそっか本気だそっかな~」


「その意気です。まあ、今後降りかかる災難はゼンさんなので私には関係ありません。それでは続いてメルトさん」


「私は無難に頑張る気もなかったんだけど、さっきの言葉で考え方が変わった。あの男を好きに出るなら勝つ意味もある」


「なるほど、なるほど。ゼンさんは実に幸せ者ですね。美少女二人から(命を)狙われるなんて。まあ、それもゼンさんの日頃の(悪い)行いでしょう。最後にルルさん」


「き、緊張してます。けど、頑張ります!」


「いいですね~。その初々しい感じが特にいい。やっぱり下手に手馴れてる人よりも素人ものですね......ゲフンゲフン、おっと口から余計な言葉が滑り落ちてしまいました」


「駄々洩れだよ。特に今日は」


「ちなみに、解説のユノさんマークⅡさんはどのような期待をしていますか?」


「そうですね......ずばり揺れる胸ですね(ユノ裏声)」


「だ、そうでーす」


「ついに解説の方で溢れ出した本音をしゃべりだした」


「もう私達だと収集つかないからゼン様でも呼んだ方が良いんじゃないかな?」


「集中、集中ぅ......」


「一人だけ凄い真面目」


「それでは行きますよ!」


 ユノは左手を高々と上げると指先まで一直線に伸ばした。


「レディー―――――ゴー!」


 その左手を振り下ろす。その瞬間、三人は一斉に動き出した。ここからはユノの実況ターンだ。


「さーて、始まりました。このレース。まず先陣を切ったのは圧倒的な身体能力を誇るメルト選手。その後に食らいつくのが英雄の肉体を宿したルル選手。そして、少し遅れてついていくのがマユラ選手」


「うーむ、さすがにメルト選手はもと殺し屋なだけありますね。もしくはあの若干な幼児体形......もといスリムボディに秘密があるのでしょうか。そう考えると他二人の選手は大きめな胸部が風の抵抗を受けてスピードダウンしてるでしょうね(ユノ裏声)」


「そうなるとメルトさんはこの競技のために生まれた肉体というわけですね。おーっとここで、メルト選手が早くも半分を突破して、今か今かと肉の棒頬張ろうとしているー!」


「うむ、あの必死に狙っている感じが野性味があっていいですね。ただメルト選手の場合、野性味が強すぎて動物の捕食劇に見えてしまうのが難点です。その分、他の二人はやや苦痛そうにしながらも、必死に体を動かそうとして向かっている辺り......そそります(ユノ裏声)」


「なんと! ここでアクシデント発生です! 二番目に位置していたルル選手が何もないところで転倒。なんとか起き上がろうとしていますが、その隙にマユラ選手がどんどんと距離を詰め――――――抜きましたー! マユラ選手はルル選手を後方に抜き去りましたー!」


「ルル選手は大丈夫でしょうか。前から結構な勢いで地面に突っ込みましたから。とはいえ、前方にあるクッションが何とかしてくれるでしょう。そうクッションが......あれ? ちょっとマユラ選手とルル選手が応援できなくなりましたね。あの二人を応援してるとなぜか自分の胸部と比較してしまう。大きくなくとも小さくないんですが......(マユラ裏声)」


「そんな二人のいざこざがあるうちにメルト選手がソーセージの真下までやって来ました。そして、勢いのままにソーセージに齧り――――――」


「なっ!?」


「つけなーい!」


 もうこの短時間で二面性が露呈したユノの実況を無視しながらも、メルトはさっさと終わらせようとソーセージを口に含んだ。

 しかし、それは歯で噛み千切る前にソーセージを吊り下げていた紐が一気に縮んだ。

 その行動に驚きながらも、身のこなしで反転すると再び口に捉えようとする。

 だが、それもびよーんと伸びる紐に邪魔をされた。


「な、なななんと! ソーセージを吊り下げていた紐はゴム紐でしたー!」


「何が『なんと』よ!」


「メルト選手思わぬ苦戦。その間にマユラ選手、そして体勢を立て直したルル選手が続々向かって......今マユラ選手が真下に入りました。くーっ、羨まけしからん。あの巨乳が重力に逆らったり、従ったりしながら揺れていますよ。全くその脂肪は一体どこからやってくるのか。しかし、実に見ていて『あ、これエロい』と思うのは何でしょうか。エロがクリティカルしまくりですよ。エロティカルですよ!」


 マユラとルルもぴょんぴょんし始めてユノの興奮も最高潮。

 実況にも熱が入り、もはや解説とキャラがごっちゃになっている。

 しかし、良いのだ。だって、ぶるんぶるんだもの。


「ふんっ!」


「おーっとここでメルト選手が悪鬼の如く形相でソーセージを噛み千切ったー!」


 メルトは何とも言えない周囲の圧力から、半ば無理やりソーセージに噛みついてソーセージと勝利をもぎ取った。


「体力勝負、勝者メルト選手~~~~!」


 高らかに告げるユノ。何も嬉しくないメルト。ただ疲弊しただけのマユラとルル。

 この中で本当の勝者は誰であるかもはや言うまでもなかった。

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