第2話

落ちる 沈む 海の底へ

息苦しくなる もう、何も聞こえない

はずだった。

青黒い光の粒がシュトュルを包む

(ふふふ…!あ~ぁ、もったいない。もったいない!綺麗な銀髪に美しい若草色の瞳。さらに美しい婚約者。

ねぇ、全部、捨てちゃうならあたしに頂戴?)

女性の声が聞こえる、いや、頭の中で響く。

(誰…貴方?)

シュトュルは心の中で呟く。

(あたし?あたしはレヴィアタンよ。ねぇ、そんな事より、さっさと答えてよ。あたしに頂戴!ねぇ?)

レヴィアタンと答えた女性は、少し怒り気味で聞いてくる。

(別にいいわよ…全部、全部あげる。貴方に…)シュトュルは投げやりな気持ちで答えた。女性は喜ぶ。

(ふふふ!じゃあ、頂くわ!)

そう言うと、シュトュルの頬は何かに引っ掛かれ、血が滲み、すぐ、なめとられる。気がつけば、シュトュルを青黒い光の粒が縛る。

ギシギシッと縄で縛られた様な痛みがはしる。

(よろしくね、可愛いお人形さん?貴方の恋が壊されるその時まで…)

シュトュルはその言葉を最後に意識が途絶えた。


はっとシュトュルは目覚めると、雲1つ無い空が目に飛び込む。

ガバッと体を起こす。シュトュルは砂浜にいた。少し、ピリピリとした痛みはあるが、それ以外は特に無い。

「私…生きてる…」

残念な様な、ほっとしたような曖昧な気持ちでシュトュルはいっぱいだった。

ふと、海の中での出来事を思い出す。今、思えばあれは夢だった様な気もしてきた。

「レヴィアタン…どこかで聞いたことがあるような…」

しかし、思い出そうになかった。

(やっと、起きたみたいね、あたしの可愛いお人形さん?)

女性の声がシュトュルの頭の中で響く。「あ、貴方…夢、じゃなかったんだ…。あ、あの、助けてくれてありがとうございます…」

(は?別に、助けたわけじゃないし。こ~んな、美しい、体、髪、瞳、さらに、美しい婚約者を捨てるなんて、憎いし、もったいないから拾っただけよ)

「は、はぁ…あ、あの、レヴィアタン、貴方、何者…なんですか?」

(へぇ?名前聞いても、思い出せないんだ?

いや、もしかして知らない?えぇ?あたし、もう、忘れ去られてるのかしら?)

「え、えっと…ごめんなさい?」

(別に、謝らなくてもいいわよ。まぁ、いいわ、じゃあ、しっかり聞いてなさいよ。

あたしは、海と、嫉妬を司る悪魔、レヴィアタンよ)

「嫉妬…」

そう、彼女の名は、嫉妬を司る海の怪物…


そして、目的を果たすまで、取りついた人から離れる事は絶対に無い悪魔。

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