俺は勇者よりも強い男

大根入道

第一章 最強の?

第1話 プロローグ

「そうだな、お前には四割の力で相手をしてやろう」


 俺はそう言って魔族の戦士にビシッと指を突き付けた。

 

「ゴミのような人間の分際でよくぞ言った!! この魔王軍六将軍が一人、クリアアトム様が貴様を地獄に送ってやる!!」


 フッ。

 

「お前に人間の真の力というものを見せてやるよ」


 戦刃竜気、解放。

 

「おおおおおお」

「な、何だその力は!!」


「これが、人間の、覚悟の力だ!!」


 俺と拳と、クリアアトムの拳が激突する。

 踏みしめる地面は砕け、拳の一撃が衝撃波を生み出す。

 

「喰らえ、俺の必殺の拳」

「この下等生物如きがっ」


 俺の渾身の一撃がクリアトムを貫いた。

 

「ありえ、ない」

 

 そして、息絶えた魔族の将軍が後ろへと倒れる。

 

「ふっ、今日も楽勝だったぜ」


 * * *

 

 俺の名はロイ。

 

 俺は村で一番強かった。

 もし俺が全力で暴れれば故郷の村は消し飛んでしまう。

 

 それを恐れた幼い俺は、山奥の妖精に『俺の力を封じてくれ』と頼んだ。

 妖精は俺の頼みを快く聞いてくれた。

 

 そして、俺の力は妖精の魔法によって封じられた。

 

「という事があったんだよ」

「へ~そうなんだ」


 俺の話を聞くエルフの少女エディス。

 お隣に引っ越してきた画家の娘で美少女。

 

 気の無い素振りだが、いつも俺の話を聞いてくれる健気な子だ。

 

「だから俺の無敵の力は、今は封印されているんだよ。俺がこの力を真に制御できるようになる日まで、な」

「じゃあさ、その力で私を守ってよ」


 抱き突いて来たエディスは震えていて。

 その金色の瞳の奥には恐怖の色があって。


「いいぜ。俺がお前を絶対に守ってやる」


 だから彼女に俺は力強くそう答えた。


 ……。

 ……。


 そして。 

 彼女と約束してから二年が経った。

 

 エディスは神殿の司祭によって勇者に選ばれてしまい。

 豪華な馬車に乗せられた彼女は、王都へ連れて行かれてしまった。

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