エピローグ
最終話
こうして、俺と恋は付き合う事になった。
後で知った話だが、どうやら恋は俺が昔は球技が苦手だった事を知っていたらしい。
「それがまさか母さんから聞かされていたとはな」
普段は俺が目を覚ました頃には仕事に行っていて、ほとんど会話をしない。だから、話すのも必要最小限くらいだ。
しかし、ここまで格好を付けていたのに……まさかこんな形で知ることになるとは思ってもいなかった。
「でっ、でも努力している姿は……その、格好よかった……よ?」
「……」
――クソッ、かわいいな。
なんて、俺が恋に悶絶している内にいつもと同じ様に生徒会室についた。扉を開けると、そこには先にいた上木と黒井の姿がある。
ただ、俺と恋が付き合っていることはこの二人……愛一郎さんと先輩二人以外には言っていない。
まぁ、恋にはファンクラブがあるから……という事もあるが、色々とうわさをされるのは、俺も恋もイヤだった。
「あら、二人ともおはよう」
「おはようございます」
「おはよう……って、なんだその表情は」
「いえ? なんでもないわよ?」
「……」
なぜか黒井はニヤニヤとしているし、上木はなんとも言えない表情をしている。
「先輩。交際している事を隠しているのなら、せめて学校内で手をつなぐのはどうかと思います」
「……あ」
家から学校の門までだったはずが、玄関で一旦離してまたつないでしまい、気がつけばここまで流れでつないでいたらしい。
「無意識ッスか」
「うふふ、先が思いやられるわね」
なぜか黒井は楽しそうだ。
「それでね。実はさっき先生が来たんだけれどね」
そう言って黒井は恋に一枚のプリントを渡した。
「実は、生徒会をこのまま続けないかって言われたんスよ」
「…………」
「それでね。恋ちゃんに今渡した紙には、前にあったアンケートの結果が書いてあるのよ」
「ん? でもそこには生徒会を続けて欲しいかどうかなんて書いてなかっただろ」
実は、生徒会は続けることが出来る。しかし、それには生徒の要望が必要だ。
今までに何回かそういった事もあり、前回の生徒会もたくさんの続けて欲しいという要望があった。
まぁ、会長を含めた三人が卒業してしまうから、なくなってしまったが。
「それが、どうやら『その他』の部分にかかれていたみたいッス」
「ええ。しかも、ほとんどの生徒から。その中には最初の仕事で邪魔してきた山本のもあったのよ」
「わざわざ見たんスか?」
「偶然目に入っただけよ」
その山本だが、一体何があったのか、今ではそこそこの好青年になっている。困っている人がいれば助け、以前の様に影から邪魔をする事もなくなっていた。
ただ、たまに昔のクセが出てしまうのか褒めてくれオーラが無意識に出てしまうらしいが。
「そうか、あいつも少しは変わったんだな」
そう言うと、黒井は「そうみたいね」と言った。その後に何か言っていた様に見えたが……そこは見なかった事にしよう。
「そういうわけで、恋ちゃん」
「えっ……と、つまり」
「後は、私たちが続けてもいいって言えば、またこのメンバーで生徒会が続けられるって事よ」
「!」
黒井の言葉に恋は目を輝かせた。その表情だけでもはや答えを言っている様なモノだ。
「あっ」
しかし、恋はすぐに我に返り俺たちの方を見た。多分「自分一人で決めるワケにはいかない」という事を考えたのだろう。
でも、俺たちも答えは決まっている。
「いいんじゃないか?」
「俺もいいッスよ。どうせ生徒会じゃなくなったら家に引きこもるだけなんで」
「もちろん良いわよ! 恋ちゃんとまた生徒会の活動が出来るなんて、とってもうれしいわ!」
そう言って、黒井は笑った。
「あっ、ありがとう」
言い方はそれぞれだったが、全員生徒会を続ける事に賛成した。そして、すぐに先生にそのことを恋は言いに言った。
すぐにその生徒会の存続が決まり、俺たちは生徒会をもうしばらく続ける事になった。
でもまさか、恋と付き合う事が出来た上に生徒会が出来るとは……正直、とってもうれしかった。
ただまぁ、まだまだ騒がしい日常とまた朝の早起きに大変な思いをするのは目に見えているが……。
「……」
なんて事を思っていると、黒井に「いや、それはこっちよ?」とでも言われてしまいそうだ。
でも、騒がしい毎日も良いかも知れない。この生徒会によって俺も少しは成長が出来たと思う。
「それじゃあ、始めましょうか」
「はい」
「あら、二人とも集中モードね」
「了解ッス」
そうして、俺たちはいつもと同じようにさっそく作業に取りかかった。その日の朝は太陽が瞬いていてとても良い天気だった。
『恋』に恋する副会長 黒い猫 @kuroineko
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