第2話
そんな事があったのが一月の始めの話である。そして、実はこの月の終わりにはある『学校行事』という名の『イベント』がある。
「……というワケで、再来週には『
俺は生徒会担当の先生からもらったプリントを生徒会メンバーに配った。
「……」
「……」
「……」
ちなみに『球技祭』とは、普通の学校で言う『球技大会』の事を指している。この学校では春と冬の年二回行われている。
元々は『球技大会』と言っていたらしいのだが、いつかの校長先生が「普通はつまらない」と言ったから……だとかなんとか――。
「……はぁ」
盛大にため息をついたのは、上木である。
「上木、あきらめろ。学校行事の変更はよっぽどの事がなければムリだ」
そういえば、上木は体育がきらいというだけでなく、そもそもあまり運動が得意ではないらしい。
恋が言うには、毎回体育の授業がある度にテンションがだだ下がりになっている様だ。
『普段はそこまで分かりやすくないんだけど、体育の時はものっすごく分かりやすくて』
体育の授業は基本的に男女別々で行われている。ただ、体力測定とかマラソンの時は男女合同になる事もあるが……。
「……」
そして、上木と同じように暗い表情を浮かべている人がもう一人……。
「……黒井先輩?」
「えっ、どうしたの? こっ、恋ちゃん」
さすがに恋も気がついたのか、黒井に声をかけていた。しかし、黒井は「なんでもないよ。大丈夫」と笑顔で返した。
「……」
ついさっき黒井が見せた暗い表情を見た感じで行くと……とても『大丈夫』とは思えない。
でも、本人が「大丈夫」と言っている。
「そっ、そうですか……」
そうなると、恋もあまり強くは言えない。
「はぁ、中学の頃は『ムリしなくてもいいよ』とか言われて出たことすらなかったのに。コレを見ると……」
「出ないといけないな」
プリントをジーッと見つめながら上木はつぶやいた。
「……休んでいいッスか」
「いや、ダメだろ」
上木の言葉に俺はすぐに反応した。
「生徒会の仕事があるんだぞ」
この『球技祭』を仕切るのは主に体育委員だ。しかし、生徒会は生徒会で仕事がキチンと用意されている。
「えぇ、先輩たちがいれば俺、いらないッスよね?」
「いや、俺たちは俺たちでしっかりと一人一人予定が組まれている。一人でも欠けると困る」
「先生が仕切ればいいじゃないッスか」
「そこはまぁ、あれだな『生徒の自主性を重んじる』っていうヤツだ」
あくまで学校行事は『生徒たちが主役』という考えからきているのだろう。
「それってただ先生たちが楽したいってだけじゃないッスか?」
「……それは違うと思うぞ。多分」
「いや、自分で多分って言っているじゃないッスか」
「まぁ、何かあればちゃんと対処してくれるから、それ以外は生徒たちで……って事なんだろ」
よっぽどの何か問題が起きれば先生たちが出てくるが、出来る限り生徒が準備などをさせたいというワケだ。
「じゃあ、生徒会の仕事を頑張るんで種目に出なくてもいいッスか?」
「クラスの出場が確認されないとそのクラスは失格になるぞ」
「えぇ……」
「だからあきらめろって言っているだろ?」
俺が出たくない上木の相手をしている間。
「…………」
恋は、そんな俺たちの様子を無言で見ている。
まぁ、恋としては俺が出て欲しいと言っている気持ちは分かるけど、上木の気持ちも分かる……といったところだろうか。
恋にも苦手な事は一つや二つある。
それこそ昔、恋自身も『逃げたい』という気持ちを持ちながらも努力で乗り越えた経験があるから――。
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