24話 アキ、新能力!?④

 そそくさと走り去ってしまった少年は、確かに耳が尖っているように見えた。

 別に異世界なのだから何も不思議な事ではないのだが、つい、僕は呟いてしまった。


「もしかして、エルフ?」


「もしかしても何も、あれはエルフで間違いないだろうな」


 少し後ろにいたアキネスは少年衝突被害を免れていたようで、僕の独り言を肯定してくれた。


「異世界事情にはあまり詳しくないけどよ、エルフ見るのは初めてか?」


「実際に存在するところを見たのは初めてですね」


「ふん…」


 そんな歯切れの悪い会話が終わった頃には本を拾い終わっていたので歩き出す。

 しばらくの間は無言が続き、こちらからも何か話を振ろうかと思ったがアキネスが速攻で話題を消してきそうなのでやめておいた。

 すると、向こうから話を振られる。


「本人不在のままで話すのはどうか躊躇ためらったのだがな、やっぱり話すことにする。実はな……、ファレルもエルフなんだ」


 へぇ、ファレルがエルフねぇ……。


「え!?でもあの人耳とか——」


「バカバカ、大声を出すな。確かにレルは見た目は普通に人間だが、エルフと人間のハーフなんだよ」


「ハーフなんですか。でも、そう言われれば逆に驚きはないですね」


 むしろもったいぶって話すことだろうか?確かにエルフと人間のハーフというのはまあ珍しいのかもしれないがここは異世界だし。っていうかハーフエルフという種族もたまに聞いたりするくらいだし、理解は容易だ。


「それならいいんだ。まあ、レルはそんな事もあって差別とかそういうのが嫌いだから、あまりそういう話題は触れないでやってくれよ」


 差別か……。考えたこともなかったが、そういう見方をする人も少数ながらいるのだろう。

 でも、やっぱり差別をするなんて考えることもない。そんな事に気を遣うくらいなら楽しい事を考え出す方がよっぽど有意義である。

 その後は特に考えることもなく、アキネスと二人で家へと戻っていったのだった。

 

 家に帰ると、僕は早速借りてきた本を読み始めた。

 本の題名は「錬成士の基本的魔術」というなんとも小難しいように思えるものだったが、いざ読んでみればどうってことはない、先ほどフリットという錬成士の所でやった事のおさらいだった。


 一つ一つ確認していくように魔法を使っていく。

 小石を合成して手の平大の石にしたり、それを削って本に書いてあったオブジェのミニチュアを作ったりとか。

 感覚としては粘土を使ったアートのような感覚だろうか。


 その日は、かなり熱中していたようですぐに夜が来てしまった。

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