22話 アキ、新能力!?②

「もう出て行ってくれ」


 折角魔法のノウハウを教えてもらいたかったのに最初の約束の一時間すら教えてもらえなかったのは流石に酷いのではないだろうか?

 なんて、言えるはずもなかった。

 フリットはダルそうに頬杖をついてしまっていて、これ以上は何も言うな、という無言の圧力が重く強く部屋中に広がっているみたいだったからだ。


「ありがとうございました」


 一応教えてもらったので感謝はしておくけれど、納得はいかない。

 部屋の外に出ると、店の中でアキネスは刀を見ているようだった。


「お、もう終わったのか?一時間の約束だったはずだが……?」


「もう何も教えたくない、出て行ってくれって感じでしたよ」


「おかしいな、アイツは人が苦労しているところを上から見ているようなのが大好きな人間なはずなんだぞ?なのに追い出されるなんて……」


 そこでアキネスはハッと気がついたように僕の方を向いた。


「まさか、アキって創造の魔法の才能がありすぎるんじゃないか!?」


「加工、合成、創造の三つの事をさせられましたけど、割と楽しかったので」


 アキネスは合点がいったように頷いてフリットのいる工房の方へ入っていく。


「……アキに…が……。ありがとよ」


 前半はドアが閉まる音にかき消され、何を言ったのかが分からなかったが後半はアキネスが感謝の言葉を述べているところが意外だったので聞こえてきた。


「さて、どうやらここでやることはもう無いようだからさっさと出ていくことにしよう、ということで、アキは本を読むのは好きか?」


 なにがということでなのかは分からないが本を読むのは好きだったので頷いた。


「じゃあ、図書館にでも行くとするかな。なにしろ、静かなほうが落ち着く性分なもんで」


 なんだろう、アキネスは心なしか少し嬉しそうな顔をしているような気がした。

 何が嬉しいのかはよく分からないが、きっとフリットが関係しているんだろうな、くらいに考えておくことにしよう。

 自分の創造の魔法が……みたいに考えるとおこがましいからね。


 そうして二十分ほど歩いているとシンプルながら洗練されたデザインの博物館のような、そんな建物にたどり着いた。

 建物の入り口部分はアーチ状になっていて天井はガラス張りになっているようだが、本当にこれが図書館なのだろうか?


「エリーザ記念図書館。この国でもトップクラスの規模の大きさの図書館なんだ」


 アキネスが言うには図書館らしい。まあ、どのみち美しい街の中でも特に美しい建物であることに変わりはないし、中はどうなっているのだろうかと興味が湧いてきたしで入ってみることにした。


 ロビーの部分にはいくつものイスと机が並べられていて、借りた本を読めるスペースになっていたり、受付に司書がいたりする。

 そして、見た目よりも予想外に奥行きがあり、そこには本棚に所狭しと本が並べられていることも分かった。

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