21話 アキ、新能力!?①

「まあ、初心者にしては上出来なんじゃないか……?」


 先ほどまでかなり強気だったフリットの言動だったが何やらだいぶ落ち着いたように感じる。

 物の形を変える、単純な魔法ではあるが綺麗に形が変えられると自分でも息を呑んじゃうよね。


「はあ、次だ次。銅と錫をやるからこれを合成して青銅にしてみろ」


 すでにインゴット状にされた銅と錫を渡される。

 確か、この二つを鋳造すると青銅、すなわちブロンズになるはずだが魔法の合成でも同じようにブロンズにすることはできるのだろうか?


 銅と錫を同じ量で配合しようとすると、どうにも配合がうまくいかない。

 途中でぱきっと音がして真っ二つになってしまう。そこで、銅と錫の量を変えてみることにした。

 思い返してみればブロンズを作る時は銅が多めだったような気がする。芸能人が実際に作っていた番組では錫の多さによって色や強度が変わるんだったかな?


 次は銅に対して錫を少しづつ配合量を多くしてみた。

 最初は、くすんだ赤茶色だった合金はやがて少しづつ明るさとつやを取り戻していくかのように綺麗な黄金色に近づいていく……。

 ここだ!と僕が思ったのは少し赤みがかかった黄金色といったところで、光にあてると綺麗な反射をしていた。


「これでどうです?」


 錫は半分以上残っていたが銅は全て使い切ってしまった。これ以上はブロンズが作れないだろう。


「もう作れたのか?見せてみろ」


 フリットが僕の作ったブロンズを見てみると、なんだかがっかりしたような顔をした。


「錫の配分を少なくしてみろ」


 言われたとおりに配分を減らしていくとみるみるうちに色は赤茶色へと変化していってしまう。


「錫の配分を多くしてみろ」


 文句が多いな、と思いつつも今度は配分を増やしていく。色は黄金色を通り越して段々と白く、金から銀色へと変化していった。

 金属の色を変えるなんて経験は今まで体験したことがなかったのでコントラストが面白い。だが、そのうちにフリットに「ストップ」と言われた。


「これ以上錫を混ぜたらさっきと同じようにブロンズが壊れてしまう」


 なるほど、一定の配分を越えると魔法での変化に耐えられなくなって折れたり砕けたりしてしまうみたいだ。


「それで、ブロンズって僕には作れてたんですか?」


「はあ?ブロンズっていうのは銅と錫が混ざっていればそれでいいんだよ、色はあまり関係ないからな」


 じゃあ配分替えは何だったのかと思ったがこれで不機嫌になられてしまっては困るのでなんとか口をつむった。


「次でラストだ、木材をしてみろ。魔法を使ってな」


 フリットは無から木材の板を創り上げていったが、僕には一つの疑問があった。


「何の木材を創ればいいんですか?」


 とりあえず様々な種類の木材を創造していったのだが、彼は「もういい」と言って創造を遮ってきた。


「一時間で教えてやるといっただろう?あれは嘘だ。もう出て行ってくれ」

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