13話 格闘家?エルティナ③

「仕方ねぇ、時間は稼げたからとっとと逃げるしかないな」


 アキネスはエルティナを抱きかかえたまま走り出した。前後の光景を無視してここだけ見たら恋人にも思える気がする。

 いや、今はそんなことを言っている場合ではない。僕はファレルの方を向き、確認をとる。


「逃げましょう、エルティナさんたちと一緒に」


 彼女はこくりと頷いて僕と行きに通ってきた道へと走り始めた。すぐにエルティナとアキネスが合流して四人で一直線に逃げようとする。

 しかし、エルティナが唐突に言った。


「脇にそれて!光線が来る!」


 その声は非常に緊迫したもので全員が両端に飛びのくと、その瞬間にはまばゆい光が横を通過していったように見えた。

 再び見てみればまるで地面を真っ二つに割るかのように地面から炎が上がっていて、魔動機兵の足元からかなり離れた僕たちの方まで続いていることが分かる。


「なんだあれは!?近距離だけでなく遠距離攻撃もできるのか?」


「ただ遠距離なだけじゃない。強力な防御魔法すら貫通してしまう攻撃力も持ってるんだ。でも、とりあえず今は逃げるしかない。幸いにもあれは連続しては撃てないからね」


 炎の壁の向こう側でエルティナとアキネスの声が聞こえる。

 こっちにはファレルが僕の手をしっかりとつないでいた。とりあえず四人全員が無事ではありそうだ。


「炎のこっちと向こう側で道までなんとか逃げ切りましょう、この炎の先で合流ができるはずです」


 向こう側からも返事が聞こえてきたので再び僕とファレルは走る。


 それはもう、がむしゃらに。追いつかれないように、必死に。

 それは炎を挟んで向かい側にいたエルティナたちも一緒で、僕たちはただ、走り切った。



「はあ、はあ……」


 そこそこの距離を全力疾走したのでかなりの疲れが来る。ファレルも息があがっていたし、アキネスも呼吸を整えていたように見える。


「なんとか街道まで戻ってこれて安心したよ。恐らく魔動機兵はここまでは追ってこないから」


 唯一疲れがなさそうだったのがエルティナ。流石リーダーは違うな……。


「ああ、俺なんでずっとエルティナを抱きかかえてたんだよ!お前も走れよ!」


 ああ、そういう事か。そりゃ疲れるはずがない。


「アキネス、ずっと離してくれなかったんだもん……」


「誤解を招くような言い方するな、流れでこうなっただけなんだから」


「別にそれは構わないんだけどさ、さっき自分の攻撃で右腕がおかしくなったんだよね」


 服の上から見るとそこまで分からないが、確かに腕が変な方に曲がっているというか……。


「反動えげつないな、骨折か、少なくとも脱臼はしてるだろう」


 そんな威力のある攻撃を喰らってなお無傷な魔動機兵のコアとは……。

 どうやら無敵というのは比喩でもなんでもなく事実なのかと、僕たちはため息をついたのだった。

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