12話 格闘家?エルティナ②

 後で謝って、あと感謝も伝えなければならないな。と僕は猛省する。

 でも、今はそれどころではない。エルティナとアキネスは魔動機兵と対峙してしまっている、もしも本当に無敵なのであれば……。そもそも勝ち目はない戦いをしているという事になる。


「とりあえず攻撃は当たるんだな、これもエルの炎魔法を当てれば吹き飛ぶっぽいが」


「当たることには当たるんだけどね、すぐ再生しちゃうからただ魔力や体力の無駄になっちゃうんだよね」


 魔動機兵は確かにエルティナの攻撃で片腕が消失していた。ところが、根元の部分から液体が流れ込むかのように腕を形作り、そして再生してしまう。


「予想以上に厄介な敵だな。それに、さっきの速さじゃ命からがら逃げだすのが関の山って感じだ。なんとかしてこいつの行動は足止めしておきたい」


 魔動機兵はアキネスのいた場所に腕を振り下ろす。しかし彼はそれをするりと避けてエルティナに目線を送った。


「一か八かの手段だけれども、前に魔動機兵と戦った時よりももう一段階上の炎魔法を習得してるんだけど、それを浴びせてみる?」


 今度は振り下ろした腕をブオンとエルティナの方へ振る。

 エルティナはそれを跳躍で避けると、魔動機兵の腕の上に乗った。


「高出力なのは良いがエルの体の負担は大丈夫なのか?」


「使ってみないと分からないし、そもそも足止めするなら一撃強いのを放っておくのが一番だからね。という訳で離れた方が良いよ」


 アキネスはエルティナの後方へと移動し、そしてこう伝えた。


「仕方ねえ、サポートはするから本気で、ぶっ放してやれよ!」


「言われなくても当然やるよ!」


 エルティナを引き離そうと魔動機兵はエルティナが乗っている腕を振り上げようとした。しかし、そのタイミングでエルティナは跳躍をしたため、かなりの高さの跳躍になる。

 そして、照準を定めて魔法を放つというその時……。エルティナの顔には笑みが浮かんでいるような気がした。


「いけぇー!トライデント・ボルケーノ!」


 辺り一帯が一瞬強い光に包まれる。それは、魔動機兵の胴体部分を溶岩のような炎と破壊力で吹き飛ばし……。


 反動で吹き飛んだエルティナはアキネスの腕に抱きかかえられた。


「……ない」


「どうした?もう一度落ち着いて言ってみな」


「効いてない、あいつの中心にあるには魔法が通じてない!」


 アキネスははっと魔動機兵の方を向いてみる。

 確かに、今までに見たことがないほどの攻撃が魔動機兵には当たっていたはずだった。


 一瞬だけ見えたのは破壊も損傷も全くない、魔動機兵の赤いコア、だろうか。

 それは急速に魔動機兵の身体を再び形作るように液体を生成しているようにも見えた。

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