5話 エンジョイ勢、アキ⑤

 当然といえば当然のこと。強い敵を相手にこれが初めての冒険となる僕が行ったところで役にも立たないしむしろ邪魔なだけだろう。

 なら、このパーティーは諦める……というわけにはいかなかった。


「じゃあ、僕は安全なところからそれをだけでいいです。当然お金もいりません。でも、強い冒険者がどのような感じでクエストをクリアするのか見るのは大切だと思うんです!」


 と、本音と建前を織り交ぜて話していく。

 実際の本音としては「戦うところ見てるだけでもメッチャ面白そう」というのが正直なところだが、だからといって言った言葉が嘘なわけではない。


「……えー、別に見てるだけだったら何の害も無いしいいけどさ、ワタシだけじゃ決められないなー」


 エルティナは意味ありげにファレルに目配せをした。

 それを感じ取ったのか今度はファレルが話し出す。


「うーん、私個人的にも見るだけだったら何の問題もないですしむしろ新たな冒険者の育成というのも大切ですからね……。とはいえ、がなんというか……」


 落ち着いた丁寧な口調だったが、不思議な単語がぶちこまれている。

 彼とは一体何者なんだ?そもそもこのパーティーは女性二人組のパーティーじゃないのか!?別に女性二人だからなんだとは思っていなかったけれども。


「だったらアキネスに聞いてみるか!ある意味あいつが一番の難関だけどね!」


 エルティナは笑いを取り戻すとさっさとギルドの外に出て行ってしまう。

 僕とファレルはそれを追いかけるようにギルドの外へと向かっていった。


「新しい冒険者を連れてきたんだけどさー」


「却下だ」


 ギルドの外では白髪で日本でもあまり見かけることのない和服を着ている男性がいた。そして、エルティナの案を一瞬で却下した。


「何も聞かずにいきなり却下は反則でしょ、別に邪魔してきたりはしないって!」


「そんなこと誰が決めた?戦闘中にいきなり襲われたら大変なことになるかもしれないんだぞ?」


「でもさぁ、そもそも私たちを殺したいのならわざわざ危険なことしてまでしなくても寝首を掻っ切るとかあるじゃん」


「いや、クエストの失敗に見せかけて罪を着せないとかいろいろあるだろ」


おいおいおいおい、段々と話が物騒になってきてるけど僕はそんな悪人ではないから!


「はぁ、そういう事ならしばらく様子見かな」


 あれ、急にアキネスが大人しくなった。僕は特に何も言っていないはずだけど……?


「すみません、このまま無駄な議論が続くのもどうなのかと思って少々心を読ませていただきました」


 小声で話しかけてきたのは隣にいたファレル。どうやらまさかの読心術持ちらしい。


「あの、アキネスさんは少々心配性な所がありますし、私たちと打ち解けるのにも時間がかかったので……」


 そもそもは一匹狼だったという事なのらしい。

 だが、益々魅力的なパーティーであるような気がしたことは、やはりファレルには読まれていたのだろうか?

 優しい微笑みを向けられたような気がしたのだった。

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