第41話 不穏

 大翔のいる病院の最寄り駅に到着し、最終面会時間まで時間があまりないので、いつもより少し速く歩く。


 何度も通った道。マンションや、コンビニ、公園など、そのどれもが今では見慣れたものだ。


 だが、今日の美零の目に映るものはどれも全くの別物のように映っていた。


 それは、こんな時間に病院へ向かうのが初めてだからだろうか。振り返ってみれば、今までお見舞いに向かった中で一番遅い時間だった。


 角を曲がると、大翔のいる病院が目に映る。


 すでに日も落ちているので、空は完全に暗くなっていたが、日本でも有数の大病院ということもあって、かなり明るかった。


 最終面会時間まではあと30分もないが、早歩きをしたおかげで何とか間に合ったようだ。


 あまり時間がないので、内心では断られないか心配していた美零だったが、ほぼ毎日お見舞いに来ていることもあってか、特に何も言われずに許可が下りた。


 あまり時間がないので、すぐに大翔のいる部屋へと向かう。


 いつもは廊下や休憩所などで話をしている人たちの姿を見るが、今回は時間が遅いせいかほとんど人の影がなかった。


 こんなに人がいないと寂しいものだなと思いながら歩いていると、大翔の部屋に着いた。


 いつものようにドアをノックをし、中からの返事を待つ。


 「・・・あれ?」


 いつもならばここで大翔からの返事があるところだが、いつまでたっても中からの返事は来ない。


 「あのー、天音美零です。大翔君いますかー?」


 もしかしたらノックの音が聞こえていなかったのかもしれないと思い、もう一度ドアをノックし、声をかけてみる。


 だが、それでも中から返事が返ってくることはなかった。


 どうしたものかと思い、こちらからドアを開けてみようとしたが、鍵が掛かっていて開けることができなかった。


 (うーん。どうしよう。メールの返信が来てないのと関係があるのかな?)


 大翔の身になにかあったのかもしれないと思い、電話をかけてみることにしたが、大翔が電話に出ることはなかった。


 最初はリハビリでもしているのかと思ったが、さすがにこの時間にリハビリはしないだろう。


 それに、リハビリは午前中にしていて午後はだいたい暇をしていると前に大翔から聞いたことがある。


 (部屋の中から着信音は聞こえなかったから、居留守しているわけじゃないよね。散歩でもしてるのかな?)


 もしかしたら、病院の玄関近くにあるコンビニにでも行っているのではないかと思い、面会時間ギリギリまで部屋の前で待つことにした。



 だがその日、

 


―――翌日。

 

 目を覚まし、すぐにスマホの電源を入れる。


 (なにも、きてない、、、)


 昨日の朝にメールをしてから丸一日が立った。


 だが、いまだに大翔からの返信はない。返信どころか、既読すらついていない。


 今までにこんなことはなかったので、さすがにおかしいと思い、もう一度電話をかけてみたが、案の定応答はなかった。


 これは大翔の身になにかが起こったと考えるのが普通だろう。


 だが、それが何なのかが美零には全く分からない。


 一昨日会ったときの大翔にはなにもおかしなところはなかった。


 (から昨日までの間に大翔君になにかがあった?)


 美零の出した答えはこれだった。だが、具体的なことは何一つわからないままだった。


 (よし!)


 考えていても何も進展しないだろうと思い、早速行動することにした。


 今日の美零には午後から用事があるため、少し早いが今から大翔のいる病院に行き、ギリギリまで大翔を待つことにした。


 『今から病院に行くね。』


 大翔からの返事が来る確率は低いだろうと思いながらも、礼儀として一応メールを送ることにした。


 メールを送った後すぐに家を出て、病院に向かった。


 そして、家を出てから約一時間ほどが経った頃、病院に到着した。


 玄関をくぐる少し前にもう一度大翔からの返信が来てはいないかと確認をしてみたが、やはり大翔からの返信はなかった。


 (今日こそは絶対に大翔君に会うぞ!)


 昨日のことや大翔からの返信がないこともあり、少し緊張していたが改めて気を引き締め直し、病院に向かった。


 受付で許可をもらった後、いつもならば特に寄り道をせずに大翔の部屋に向かうところだが、今日は玄関近くのコンビニやカフェなどを一通り見てから向かうことにした。


 大翔が行きそうなところはほとんど見て回ったが、そのどこにも大翔の姿はなかった。


 「ふぅ。」


 大翔の部屋の前に着き、もう一度呼吸を整える。


 覚悟を決め、いつものようにドアをノックする。


 だが、中からの返事はない。


 もう一度ノックをしてみるが、やはり返事は帰ってこない。


 (今日もいない、、、)


 ここへ来る前にいろいろなところを見て回ったので、大翔がどこかへ行っていたという可能性は低いが、次の用事の時間まで1時間ほど待つことにした。


 だが、その日も



【あとがき】

今回は前回よりも投稿がさらに遅くなってしまい、すいませんでした。


次の投稿までにまた間隔があいてしまうかもしれませんが、待っていてくれると嬉しいです。


これからは美零視点が続いていくと思いますが、女性の言葉遣いに少し自信がないので、なにか変なところがあったら指摘していただけると嬉しいです。


コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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