第33話 試合

 今日は3日前から楽しみにしていた試合の日。


 保護者同伴が条件ということで、11時に大翔の母が迎えに来る予定だ。


 現在時刻は10時50分。もうすぐ約束の時間ということもあって、怪我をして以来の外出に大翔は心を躍らせていた。


 この3日間も、藤咲さんとのリハビリも順調に進んでいるので、大翔には特に心配事はなかったのが、、、


 「大翔君大丈夫?ボールと不審者には気を付けてね。あ、あと病院と違って足場が悪いかもしれないから足元よく見るんだよ。」


 ―――今朝から藤咲さんがうるさい。


 「明るいうちに学校に不審者なんてそうそういないですよ。さっきから藤咲さんは心配しすぎです。俺の親ですか。」


 「それは心配にもなるよ。大翔君たまに抜けてるときあるから、一歩一歩慎重に歩くんだよ。」


 「わかってますよ。あ、今親から病院に入ったってメール来ました。」


 「あぁー。心配だよー!!!」


 うるさい藤咲さんは放っておいて、身支度を済ませ、親が来るのを待っていると、約5分後に母が到着した。


 藤咲さんから大翔の母に注意事項などを伝えた後、最後まで心配そうだった藤咲さんに別れを済ませ、車に乗り込んだ。


 試合会場の川崎東高校までは車で1時間半ほどだ。その間、大翔は先生からもらった課題をして、時間をつぶすことにした。


 

 病院を出てちょうど1時間半ほどたったころ、目的地に到着した。


 車から出ると、『まあ大丈夫でしょ』と、何が大丈夫なのかはわからないが、母は観戦に来ていたほかの保護者のもとへ行ってしまった。


 母が早速保護者としての役目を放棄したので、大翔はとりあえずみんなのもとへ行くことにした。


 アップを終えて、試合前の最終調整をしている仲間のもとへ近づいていくと、みんなすぐにこちらに気が付いて近づいてきた。


 「お!大翔が来たぞ!」


 「久しぶりだなー!」


 「来るのおせーよ!」


 「あれ、今日は彼女呼んでないの?」


 最後に少し変な言葉が聞こえた気がするが、大体は大翔のことを今まで通り元気に迎えてくれた。 


 試合まであまり時間はないはずなのだが、みんなと久しぶりに会えた嬉しさがやはり大きく、山内先生に集合を掛けられるまでみんなと楽しく話していた。


 そろそろ試合が始まるということで、ベンチに向かう仲間たちを見送った後、山内先生に軽く挨拶をし、座りながら観戦できる場所を探すことにした。


 本当はベンチから観戦したいところなのだが、今日の試合は公式戦ということで、選手登録をされていない大翔はベンチに座れないのだ。


 校舎の前の階段が座りやすそうだったので、その近くで話をしている保護者集団から少し離れたところに座ることにした。


 大翔のチームベンチのコートを挟んでほぼ目の前の階段に腰を掛けると、ちょうど選手たちがピッチに入るところだった。


 試合前に相手選手との挨拶やで円陣を組むなどのやることをやった後、ついに試合開始のホイッスルが鳴らされた。


 試合が開始されるとともに両チームの選手たちが動き出す。


 大翔は久々に見るサッカーと、変わらない仲間たちの姿を見て少し感動していた。


 病院でもテレビやスマホなのでサッカーは見ていたのだが、やはり生で見るものは画面越しとは違い迫力があり、大翔のサッカーをしたいという欲をくすぐられた。


 (本当に今日は来れてよかったな。)


 久々に試合を見られるということで、今までため込んでいた分の元気を声にして、仲間を応援することにした。


 

――前半終了のホイッスルが鳴った。

 前半戦の結果は0対1と、一点差で負けてしまっている。だが、どちらの力も互角のようなので、後半の追い返しに期待がこもる。


 まだ後半が残っているのだが、前半から飛ばしすぎたのか、大翔の喉にかなりダメージが来ていた。


 「はぁ。トイレ行きたい。」


 2月前のとても寒い時期に声を出していたとはいえ、ずっと座りっぱなしだったため、大翔の膀胱は限界を迎えていた。


 一番近くのトイレは現在地からさほど離れてはいないが、見た感じとても小さいため、松葉杖の大翔には厳しそうだった。


 周りを見渡しても他にトイレはないため、なんとなく抵抗があるのだが、校舎のトイレを使わせてもらうことにした。




 「やっぱり他行の校舎に1人で入るのは少し勇気がいるな。」


 校舎に入ってすぐのところに多目的トイレがあったので、そこを使わせてもらった。


 そして、玄関口に置いてきた靴を履いて、さっきまでいた階段へ戻ろうとする。

  

 (あー。この場所段差が小さくて靴履きずらいな。)


 だが、慣れない場所のトイレに少し時間がかかってしまったため、後半の開始時間まではまだ余裕があるはずだが、少し焦ってしまい、なかなか靴を履けずにいた。

 

 「え、大翔君?」


 「え?」


 うまく靴が履けずにいる大翔の後ろから、聞きなじみのある声に名前を呼ばれた。


 「あ、やっぱり大翔君だ。どうしてこんなところにいるの?」


 「優佳さん?」


 後ろを振りむくと、そこにいたのは美零さんの友達で、最近大翔とも仲が良くなってきた優佳さんだった。


 

【あとがき】

 本格的に学校が再開されだしたため、少しづつ投稿するのに時間がかってくると思います。すいません。


 ですが、絶対にこの話は最後まで書ききるので、時間がかかるかもしれませんが、待っていてくれると嬉しいです。 


 コメント、フォロー待ってます!作品を評価してくれると嬉しいです。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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