第4話 初めての土曜日

 「ありがとうございました」


 突然できた用事を済ませ、一人足早にビルから出ていく。場所は東京のど真ん中、家までは最短でも1時間はかかるだろう。


病院を出てからもう4時間もたってる。疲れたし早く帰ろう。


 「ぐぅぅ~~」


 駅に向かっている途中おなかからかわいらしい音が鳴った。すぐに周りを確認したが、近くには人がいなかったようなので安堵した。


 そういえば、朝から忙しくてほとんど何も食べてなかったな。


 近くにあったカフェに入り、コーヒーとサンドイッチを頼んで席に着き、サンドイッチを食べながら今日の出来事を思い出す。


 (内田さんいい人でよかった。ご両親も優しかったし、事件の方も私たちは罪に問われないみたいだから、ほんとによかった。)


 昨日の夜病室に行ったとき、偶然大翔の両親と合った美零はそこで少し話をした。話をしたと言ってもひたすら美零が謝っていただけだったが。


 食事を終え、会計をしようとカバンの中の財布を探す。だが、そこで気が付いた。


 (あれ?雑誌がない)


 カバンから出したおぼえはないが、周りを見渡してみる。しかしやはり見当たらない。一度荷物を全部出し、しっかりと確認してみたがそれでも見つからない。


 確かに持ってきたはずなんだけど、どこで失くしたんだろう。警察かさっきのビルか......もしかして病院!?


 一瞬頭が真っ白になった美零は、もう一度今日の行動を振り返ってみた。


 カバンを開けたのは、警察とビルと病院くらい。でも、病院に向かう途中の電車で雑誌を見たのを覚えてる。


 急いで残りのコーヒーを飲みほし、カフェを出て、さっきまでいたビルに戻り確認する。だが、どれだけ探しても見つからない。


 (どうしよう)



 携帯のアラームで目を覚ます。7時ちょうど、体を起こそうとするが足に痛みが走り、ここが病室であることを思い出す。


 アラームの設定時間を間違えて、少し早く起きてしまったため、朝食の時間までにできる身支度をすることにした。普段なら30分もあれば終わるところだが、不自由な体のため、全てが終わったのは、8時近くだった。ちょうど支度が終わったころ、藤咲さんが朝食を持ってきてくれた。


 「おはよ~。ご飯の時間だよ。食べ盛りの男の子には少ないかもしれないけど、早くけがを治すためだから我慢してね」


 藤咲さんは朝食を置いてすぐに、ほかの患者にも配りに行くために部屋から出て行った。


 持ってきてくれた朝食は、確かに男子高校生には物足りないものだったが、わがままは言えない。それに思っていたよりも病院食は美味しかった。


 10分ほどで食べ終わってしまった大翔は、藤咲さんがトレーを回収しに来るまで、時間をつぶすことにした。


 ちなみに、しばらくの間リハビリもできないためしばらくはご飯を食べることと、二日に一回の診断があるだけで一日のほとんどが自由時間になっている。


 暇だ。朝早くから勉強する気にもなれない。今日は警察の人が事情聴取しに来るらしいがそれもお昼過ぎとのこと。天音さんも何時ごろ来るのかわからないため、とにかく暇だ。


 特にやることもなくベットの上でゴロゴロしていると、昨日天音さんが忘れていった雑誌があることを思い出した。


 昨日は見なかったけど、やはり天音さんがどんなものを読んでるのか気になる。少し悪い気がするけど、暇だから少し見てみようかな。


 引き出しの中から雑誌を取り出し、ページをめくろうすると、突然ドアをノックされた。


 「あの、天音美零です。内田さんはいますか」



【あとがき】

 少しづつ見てくれる人が多くなってきて嬉しいです!今回は予告通り美零視点があります。やっとです(笑)次回からも視点が変わることがあると思いますが、できるだけわかりやすく読めるように頑張ります。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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