――家を出るぞ、瑞月。

 唐突な兄さんの言葉を、僕は最初、すんなりと受け入れることができなかった。

 なぜ。ここには全てがある。ぬくもりも、安らぎも、それに穏やかな生活さえ。確かに兄さんには二人が視えない。が、それも時間が解決するはずだ。僕でさえ視えるようになった。最初は視えなかったが、視えるようになったのだ。兄さんも、だから、いずれは視えるようになるかもしれない。

 そうすれば、四人でまた……

 ――そうじゃない、瑞月、そういうことじゃないんだ。

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