執事な俺とメイドな彼女
とろけたチーズ
これがいつもの距離なのです(芽衣)
第1話 執事:西辻栄吾
突然だが、これを読んでいる皆は“執事”という職業についてどのような意見をお持ちだろうか。
曰く、執事とお嬢様との禁断の恋とか憧れる。
曰く、毎日美少女の隣にいれるとか役得じゃん。
曰く、一度でいいから燕尾服着てみたいわ。
その他多くの意見があることだろう。勿論その意見が間違っているとは言わない。そう思うのは自由だ。だが今は、敢えてこう言わせてもらおう。
どうやらお前らの頭の中はお花畑らしいな。平和で結構だ、と。
いや、失礼。言葉が過ぎたかもしれない。そもそも自己紹介がまだだったな。
俺の名前は
そのお嬢様というのが
改めて、実際に執事として働いている俺から言わせてもらおう。
執事とお嬢様との禁断の恋? バレたら即クビだ。そんな危険を冒すメリットがない。
毎日美少女の隣? あぁ、確かに美少女だよ、性格以外はな。
燕尾服? 他の奴がどう思っているか知らないが、ぶっちゃけアレ動きづらいだけだ。
そもそも何で俺が執事をやってるか。それは軽く五年前まで遡る。当時まだ十二歳だった俺の家(代々執事として金を稼いできた)に、如月家の当主である幸成様から電話がかかってきた。曰く、娘と同年代の俺に執事として勤めてもらいたい。信じられるか?まだ十二歳だぞ。それでも俺の両親は俺の意見を無視して快く俺を送り出した。何せ地域で一、二を争う名家だ。それ相応の報酬が待っている。別に俺だって平均よりかなり多いお小遣いが貰えるんだから断る理由なんかない。こうして俺は真白お嬢様の専属執事になった。
しかし、ホイホイ承諾していったのが間違いの始まりだったと、今なら自信を持ってそう言える。
「ねぇ、栄吾」
「……何でしょう、お嬢様」
「明日提出の課題やっておいて」
「お言葉ですが──」
「やって」
「…承知しました」
こんな命令、まだ可愛い気のある方だ。
ついこの前なんて、こんな理不尽なことがあったんだから。
「ねぇ、栄吾」
「……何でしょう、お嬢様」
「背中、洗って」
「………………」
「冗談よ。気持ち悪い、お父様に言いつけるわよ」
「まだ何も言ってませんけど」
「煩いわね」
「申し訳ございません」
どうだ?これでも執事に憧れるか?
これで外見は美少女なんだから余計にタチが悪い。何かあったら悪者扱いされるのは必ずと言っていいほど俺なんだから。
だがまぁ、そんなお嬢様であっても苦手な人物は存在するる。この如月家の商売敵、隣町で速水通運を経営している速水家の嫡男──
学校、しかも同じクラスで唯一お嬢様の言いなりにならないのがこの蒼真様なんだから、お嬢様からしたら目の上のたんこぶみたいなものなんだろう。
そしてそして、更に不味いことに、俺は蒼真様の専属メイドである
ライバル同士の家の後継者。その従者同士が恋仲にあると周囲に知られれば、俺たちはクビになるどころか、最悪この地域での立場まで失いかねない。俺と芽衣の関係は、誰にも知られる訳にはいかないんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます